メニュー

トクホの飲料で降圧は可能か?

[2023.07.05]

少し前からテレビや雑誌の CM で「トクホ(特定保健用食品)」という言葉を耳にします。

「トクホ緑茶」や「トクホのレモンスパークリング」はもちろん、「トクホのコーラ」まであります。

つい先日、当院で高血圧の内服治療をしている患者さんに「トクホならコーラを飲んでもいいでしょうか?」と聞かれました。

それまであまりトクホについて知らなかったのですが、いろいろと調べると

「食品及び特定の保険の目的に資する栄養成分に係る保健の用途及び 1 日当たりの摂取目安量を医学的および栄養学的に明らかにした資料」などを申請書に添付することになっているそうです。

そのうえで「トクホのコーラ」について、ホームページに掲載されているデータをみると。。。

対象は、「おもに」空腹時中性脂肪値が 120-200 mg/dl である 20-64 歳の健常成人 77 名。

対象に脂質を含む負荷食品とともに、

  1. 対照のコーラを飲んだあとの中性脂肪値が 360 mg/dl くらいで
  2. トクホコーラを飲んだあとの中性脂肪値が 335 mg/dl くらいで、(360-335)/360 x 100 = 約 7% の抑制! と記載されておりました。。。

80 篇以上の医学英語論文に著者として名前を連ねた院長からすると、つっこみどころが満載の臨床試験のように思えました。すこしだけ説明します。

そもそも空腹時中性脂肪の正常値は 150 mg/dl で、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』における高 TG (トリグリセリド=中性脂肪)血症の診断基準も「随時 TG 175 ㎎/dL以上」であることから、120-200 mg/dl という設定は被検者として適当なのか・・・?

また、2014 年に発表された比較的多数の被検者を対象にした中性脂肪値の論文では、食後 4 時間での中性脂肪値が 300 を超えるグループは 300 未満のグループと比較して有意にインスリン感受性が悪化して血糖値を上げないでおく力が弱くなる(=糖尿病になりやすいかも)という結果だったので、いくら 7% 抑制できた、といってもそもそも 335 mg/dl というのは良い値はいえないのでは・・・。 などなど。

ほかのトクホ製品をみても、摂取期間が 12 週間程度、とか対象被検者数が 50 名くらいなど、特定の食品や飲料について、栄養学的に確定的な知見を出すにはあまりにも規模が小さすぎる気がしました。

現時点での結論ですが、まだまだトクホのような食品が降圧剤や血糖降下薬などの代替品となるのはだいぶ先でしょう。

次回その患者さんには「まだまだデータが不十分ですが、飲料や食品よりも、運動・食事・生活習慣・薬物治療など、これまでに多数のデータがあることをしっかりと行ったほうがよいと思いますよ」と伝えるようにします。

生活習慣病の予防や悪化防止にはやはりジュース・コーラはあきらめたほうがよいでしょう。好きなものをやめるというのはなかなか難しいことですが。。。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME