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25 年前に読んだミステリを再読して思ったこと

[2023.08.23]

ミステリが好きです。特に島田荘司先生のファンで、島田作品はほぼ読了したと自負しております。『占星術殺人事件』、何回読んだかわかりません。一生に一度は読むべき傑作です。

そのなかで『異邦の騎士』という作品があります(初出は 1988 年)。主人公が状況を把握して実際の意味で動き始めるまでの「前置き」が非常に長い、異色のミステリですが、最近久しぶりに読み返しても全く色褪せていない面白さでした。名探偵の御手洗潔(みたらいきよし)がどのようにワトソン役の石岡と出会ったか、ということがよくわかる、御手洗シリーズのエピソードゼロとも呼ぶべき内容となっています。

そのなかで医学生時代にひっかかった表現があったのを思い出しました。

今手元に 1998 年 12 月 15 日第 19 刷講談社文庫版があるのですが、p344 に名探偵のこんなセリフがあります。「医者というのはとにかく儲かるからね、井原はこの長男が医者になって大金を稼ぐようになるのが目に見えていたこともあって、・・・」。1998 年というのは自分が医学部 4 年生の頃です。これを読んだときは、「お、これはいい学部に入ったぞ」と思ったのですが・・・。

開業医になって 4 ヶ月が経過しましたが、全く上記セリフのような状況ではなく、とにかく毎月収支は火の車です。手袋やマスクなど大量の医療関係消耗品、電子カルテ関連の PC やシステム、内視鏡やエコーなど検査機器、人件費など・・・。国の医療費抑制政策も含めてなかなか厳しい経済状況です。

臨床医業は、もともと患者さんの話を聞いたり診療すること自体が好きでないと、とてもできない仕事だと改めて感じています。今後医師になることを目指す若い方々には是非しっかり考えた上で、覚悟をもって臨床の現場に飛び込んで来ていただきたいと思います。患者さんの健康・命に関わることができる、素晴らしい仕事であるということは間違いありません!

※ 島田先生の御手洗シリーズは発表順に『占星術殺人事件』⇒ 『斜め屋敷の犯罪』⇒ 『異邦の騎士』と読むことをオススメします。あと、シリーズが異なりますが『北の夕鶴2/3の殺人』も大傑作だと思います。

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