「男はつらいよ」とか言ってしまうと(映画のタイトルなのですが)女性蔑視として叩かれてしまうこともあるようですが、泌尿器科外来をやっているとやっぱり "ツラいと感じているひとは決して少なくない" と思う最近。
当院は泌尿器科を第一の標榜診療科としています。泌尿器科には結構広い守備範囲があり、「腫瘍」「結石」「排尿障害(男性・女性)」「小児・先天異常」「腎移植」など、多岐にわたります。現在院長の泌尿器科医としての業務はほぼすべて外来診療ですので主に排尿障害が多く、あとは腫瘍が続き 2 位。では 3 位は何でしょう。上には挙げておらず、最近特に増えている分野なのです。
答えは「メンズヘルス」で、その多くが LOH 症候群、一般には「男性更年期」と呼ばれる病状をもつ男性患者さんが対象です。メンズヘルスとはその名前のとおり「男性の生涯にわたる健康で豊かな生活の質維持のためのお手伝いをする」ことがゴール。治療の選択肢がまだまだ少ない領域で、当院で主に行っているのは男性ホルモン(テストステロン)の補充や、メンズヘルス向上に役立つ漢方薬処方やカウンセリングなのですが、とにかく最近は男性が生きづらくなっている時代なのか、この症状を心配されて来られる患者さんが着実に増加しております。
もともと、「男性は女性と比較してあまり医療機関に来ない」という厚生労働省のデータがあります。これはなにも日本に限ったハナシではなく、世界的に知られている現象といわれています。男性は症状があっても受診が遅れがちで結果として重症化してから治療が開始される。このことは「平均寿命が女性より短い」という統計結果の要因になっているという意見も、もしかしたら一理あるかもしれません。男性は太古のむかしから「辛いことがあっても自分のハラの中にしまい込む傾向がある」、ということをある泌尿器科の教授が言っていましたが、それはもしかすると東西を問わないのかもしれません。
そのためメンズヘルスは、「病気を治す」というよりも、
・受診のハードルを下げる
・話しにくいテーマを安全に話せる場をつくる
・生活習慣病やメンタルヘルスも含めて横断的に診る
という社会的な役割も担っています。
そんなわけで、泌尿器科は「総合的な男性学を担う診療科」といえます。近年「性差医学」という用語が少しずつ一般的になりつつあります。これはジェンダーフリーの流れと逆行するように感じる方がいるかもしれませんが、そんなことはありません。医学的・生物学的な性差というのは男性のみならず、女性が健やかに自分らしく生きるうえでもしっかりと認識すべき、非常に重要な観点です。「男性らしくしなさい」とか「女性は ◯◯ じゃないと・・・」みたいな社会的・文化的バイアスは可能な限り除いていくのが望ましいと思いますが、医学的な差異はしっかり認めないと、さまざまなことを社会に実装できません。医学は、もちろんアートの部分はありますが、あくまでサイエンスのひとつ。イデオロギー的にならないよう冷静にデータ・知見を積み上げていく必要があります。
明日はテストステロンのことを少し深堀りしてみましょう。49 歳を迎え、体力の低下・毛髪の減少・性的欲求の減退を日々感じる院長による、実感を伴った内容にしたいと思います。
