あなたはお腹が痛くて下痢で苦しんでいるときに医療機関で正確に 3 日前の献立を説明することができるか(なかなか難しいですよね)。
院長は見た目によらずお腹がデリケートです。一昨日・昨日のブログを読んだ方はあまりそうは感じないかも知れませんが、まあデリケートなんです。特になにかの試験(来年は漢方専門医試験を受ける予定です)の当日直前では確実にお腹がゆるくなります。高校時代は模試のたびに試験開始前にトイレに行っていたので大変でした。
そんな腹痛・下痢。これらは当院に前日予約・または当日予約外初診で受診される患者さんの 30% を占める、重要な症候です。
ではここで問題です。「下痢を引き起こす疾患」として挙げられるものはなんでしょう。この質問、実「医学生と一般の方とであまり回答の差が少ない医学的問題」です。
模範解答としては「感染症」と「(上記の院長がいつも経験している試験前の緊張や、冷たいものの摂りすぎなどによる)機能性、神経性、過敏性」で実臨床のほぼすべてを占め、残りの数パーセントを「虚血性腸炎」とか「薬物による下痢」などのマイナーなものが占めます。が、最初の 2 つで臨床で経験する下痢のほぼすべては網羅されてしまいますので、後半の回答はあまり重要ではありません。これは下痢という症状が一般の方にも極めて想像しやすく、ほぼすべてのひとが少なくとも一度は経験したことのある症状であることが大きく関連しています。どんなひとも想像しやすい、ということですね。
さて、さきほどからこのブログで出てきており、一般用語としても通用するこの "下痢" ですが、そもそも下痢とはなんでしょう?「ゆるい便」との違いはなに?
実はちゃんと定義があって(急性)下痢とは「24 時間以内に 200 g 以上の頻回の軟便あるいは水様便」となっています。「200 g って言われても・・・」と皆さま感じることでしょう。おなかが痛くて医療機関にかかったときに「今日の便量は 200 g 以上でしたか?」とか言われたら目が「??」です。実際この定義を気にする臨床医はまずいません。これはあくまで「臨床研究などを行う際に(しっかりと基準を決めないといけないので)ひとつの基準として用いられる決め事」です。
むしろ重要なのは、上に挙げた定義のなかで「24 時間以内(の急性)」に「頻回」のゆるい排便があった、ということなどの "患者さんの訴え" です。もちろん 1 回しか排便していないのに「もうひどく下痢しています」という患者さんもいますので、そこは問診でわれわれが「今日一日で排便した時刻をだいたいでよいので教えて下さい」とか言って紐解いていく必要があります。
この下痢のなかで最も頻度が多いものは感染症、特に腸管内感染症(経口摂取した食べ物などから消化管内に病原体が侵入し、増殖するもの)です。これを疑った場合、詳細に聞かなければいけないのが「症状」のほかに「何を」「どのように」「何日前に」食べたか、です。例を挙げると、
「4 時間前に自家製のオニギリやお寿司を食べたひとが嘔吐していて下痢はごく軽症、発熱なし」 ⇒ 黄色ブドウ球菌っぽい
「一昨日あまりキレイではない湧き水を飲んだひとが 37.5 ℃ の発熱とやや粘血便を伴う下痢」 ⇒ サルモネラとか赤痢っぽい
「1 日前に船釣りをしてその場でさばいたイカを食べたひとが水みたいな下痢を何回もしている」 ⇒ 腸炎ビブリオっぽい
などとある程度予想はできます。ただしこのときの問診がかなり難しい。何が難しいのかと言うと、「何日前に」の情報がなかなか正確に聴取できないからです。院長もそうですが、突然「3 日前に何を食べましたか?」とか言われてもそうそう簡単に答えられません。一般的には「嘔吐しやすい病原体は潜伏期が短い」「下痢しやすい病原体は潜伏期が長い」傾向がありますので、激しい下痢ほど原因菌の同定が難しかったりします。
ただ、下痢は基本的に「悪いモノが出ていく」疾患ですので原因が確定せずとも「脱水などの二次被害をしっかり治療すれば、多くの場合は抗菌薬不要です。整腸剤などで消化管の状態を改善します。下痢止めはまず使いません。「悪いモノが出なくなって」しまいますから。
もし下痢になったら「発熱や倦怠感が軽度でふらつきなどがなくて水分が飲めればしっかり水分を補給して整腸剤(ビオフェルミンとか)を(飲めるなら)内服」するようにしてください。ただしあまりにも体がしんどかったり、便中の出血が多いように感じられたら必ず受診するようにしましょう。
ちなみに院長は "腸活" のため毎日必ずヨーグルトと納豆などの発酵食品を欠かさないようにしています。皆さんも(腸内)細菌と仲良く日々暮らしていきましょう。
明日はこれに関連して食中毒についてのハナシを。
