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"お金" と "時間" と "健康"、すべて揃えるのは難しいと思いますが、まず "これだけは保っておきたい" と思うのは。

[2026.05.07]
ビル・パーキンスのベストセラー、『DIE WITH ZERO』を読んでみました。副題に「人生が豊かになりすぎる究極のルール」とありました。なかなか挑戦的な感じ。他の本がおカネの稼ぎ方や増やし方について述べているのに対して、この本では "おカネの使い切り方" をテーマとしている、視点が面白い本です。著者が提唱する「ゼロで死ぬ」という思想は、幸福の最大化を目的とした合理的な経済思想ですが、人生 100 年時代を迎えた日本の現状に照らし合わせると、いくつかの重要な反論や懸念が浮かび上がるような気がします。
 
1. 長寿化に伴う「枯渇リスク」への懸念
本書の「ゼロで死ね」という主張に対し、最も現実的な反論は「そんなにうまく死ねるか」という不確実性への懐疑です。健康寿命はともかく、時間的な寿命が延伸し続けている現在の日本において、自分がいつ亡くなるかを正確に予測することはなかなか難しい。
・老後資金への不安: 日本では少し前にあった「老後資金 2,000 万円問題」に象徴されるように、長寿化による生活資金の枯渇に対する漠然とした不安が根強く存在します
・制度の不透明さ: 終身雇用の崩壊や年金制度の先行き不透明な状況において、資産を使い切るという戦略は、将来の生活基盤を失う「長生きのリスク」を増幅させる恐れがあります
 
2. 「45 歳からの資産取り崩し」の非現実性
著者は、資産のピークを 45 歳(!、もう院長はとっくに過ぎています・・・)に設定し、そこから段階的に取り崩すことを推奨していますが、これは日本の一般的なライフサイクルとは乖離しています

・支出のピークとの重なり: 日本の 45 歳前後は、子どもの教育費や住宅ローンの支払いなど、人生で最も固定支出がかさむ時期でもあります。このタイミングで資産を減らし始めることは、経済的な破綻を招くリスクが高く、多くの日本人にとって現実的な選択肢とは言えません

・行動可能ゾーンの認識差: 著者は 45 歳を「行動可能ゾーン」の入り口として強調しますが、多忙な現役世代にとって、資産を取り崩して経験に投資する時間的余白を確保すること自体が困難、という現実があります

3. 「精神安定剤」としての貯蓄の価値
本書では、お金を持ったまま死ぬことを「人生のロス」と捉えますが、日本社会において貯蓄は単なる数字以上の意味を持っています
・安心感という報酬: 貯蓄は、日本人にとって「目に見える安心感」であり、精神安定剤の役割を、少なからず果たしているのが実情と思います。これは、戦時中くらいから少し前(リーマン・ショックくらい?)まで「貯蓄は美徳」という根強い考え方があったからかもしれません。もちろん貯蓄一辺倒ではインフレリスク・機会損失・低金利などの現在の状況を考えると、効率的ではありません。政府も NISA や iDeCo などの制度を活用し、資産を増やすことが推奨しているような気がします。しかしながら、資産残高が減ること自体がストレスになる人々にとって、無理に資産を使い切ろうとすることは、幸福度を高めるどころか、逆に日々の不安を増大させる結果になりかねないような気がします
 
4. 富裕層の「ポジショントーク」としての側面
本書の主張は、一定以上の余剰資産があることを前提としており、構造的に「富裕層のポジショントーク」になりかねないという批判があります
・生存戦略としての貯蓄: 多くの庶民にとって、貯蓄は「経験の最大化」のためではなく、病気や介護、災害といった予測不能な事態に備えるための「生存戦略」です。
・格差の無視: 資産を使い切る余裕がない層にとって、若いうちの経験への投資や早期の資産取り崩しという提言は、現実離れした理想論に聞こえる可能性があります。
 
5. 相続に対する価値観の相違
パーキンスは「死後の相続では遅すぎる」とし、子どもが26歳〜35歳の間に生前贈与することを推奨していますが、これにも慎重な意見があります
・自分自身の安全確保: 人生 100 年時代、いつまで自分に介護費用や医療費が必要になるか分からない以上、「死ぬまで資産を手放さない」ことは、子どもに迷惑をかけないための親心でもあります
・贈与のタイミング: 日本の高齢者の 1/3 は退職後も資産を増やしており、これは「いざという時の備え」を優先した結果と言えます。自分の老後を確実なものにすることこそが、家族にとっての最大の安心材料になるという考え方も根強く存在します。
これだけのベストセラーですから、上記はどの意見も、もうネットをさがせば出てくる意見だと思います。個人的に『DIE WITH ZERO』は「使い切れないほどのお金を持って死ぬ」という非効率を指摘していますが、リスク回避を重視する日本の社会構造や心理的背景においては、資産を「ゼロ」に近づけること自体が、かえって人生の質を下げてしまうじゃないか、というパラドックスを孕んでいるなぁ、という感想を持ちました
 
以前、なにかの本で「65 歳になったら  時間・おカネ・健康の 3 つが揃うことは少ない。2 つ揃ったらやりたいことをやる、というのがよい」という記述がありました。若い頃はたいてい「健康」と「時間」があり(でもおカネがない)、子育てしながら働いているときは「健康」しかない(時間もおカネもない)、子育てが終わると少しですが「おカネ」があり、「時間」ができる。このときに「健康」もあれば 3 つ揃います。以上から、若いときと、(子育てする場合は)教育が一段階ついたときが最も「やるべきとき」に向いている、ということになります。さらに、「おカネ」についてですが、自分がやりたいものについて、それが特におカネがかからないものであれば、いつでも始められるわけです。
このように考えると、やはり健康というのが重要だとあらためて実感します。なにをするにも健康さえあればその土台の上に人生を組み立てていけるので。皆様、是非健康第一で。そのうえで「やりたいこと」を続けてまいりましょう。
 
 

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