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ときどき古典を読むと現代にも通じる金言がたくさんあり、むかしもいまも人間が考えることはそれほど変わらないような気がして少し安心します。

[2025.09.13]

ちょうど今、現役医師で作家、山口未桜さんのデビュー作、『禁忌の子』を読んでおります。あまりにも面白そうだったので文庫本を待てずにハードカバー単行本を購入してしまったのですが、面白いですね。特に医師だと "より分かる" 医療現場での言い回しや雰囲気などがあり、まるで地元の地名が出てくる物語を読んでいるような "ホームタウン感" があります。だいたい医師で作家の作品はそうなのですが。現在 1/3 ほど読んだトコロですが、鮎川哲也賞で本屋大賞 4 位、というのも頷けるストーリー展開で今週末に読了するのが楽しみです。ちなみに今年の本屋大賞の「超発掘本」受賞作が『ないもの、あります』(クラフト・エヴィング商會(著))で、これは以前から院長も大好きだったのでなんとなく嬉しかったです。

さて、本のハナシついでに昨日「院長は歴史好き」というハナシをしました。本日はその流れで、最近読んだ古文(ある意味超々発掘本といえるかもしれない)について。『正徹物語』下・103 段です。高校時代の共通一次・センター試験以来、という方もいると思いますが原文紹介します。

家隆は四十以降始めて作者の名を得たり。其より前もいか程か哥を讀みしかども、名譽せらるゝ事は、四十以後成りし也。噸阿は六十已後此道に名を得たる也。か樣に昔の先達も初心から名譽はなかりし也。稽古數寄劫積りて、名望有りける也。今の時分の人、いまだ哥ならば一二首讀みてやがて定家、家隆の哥を似せんと思ひ侍る事、おかしき事也。定家も、行かずして長途に至る事なしと書きたる。板東、鎮西のかたへは、日をへてこそ至るべきに、たゞ思ひ立つ一足に至らんとするがごとしと云々。只數奇の心深くして、晝夜の修行怠らず先々なび/\と口がろに讀みつけなば、自然と求めざるに有興所へ行きつくべき也。後京極攝政殿は卅七にて薨じ給ひしが、生德の上手にておはしまして、殊勝の物共あそばしき。もし八十九十の老年までおはしましたらば、いかに猶重寶ともあそばされんずらんと申し侍りし。宮内卿は廿よりうちになくなりしかば、いつの程に稽古も修行も有るべきなれども、名譽有りしは生得の上手にて有る故也。生得堪能に至りては、初發心の時、便成正覺なれば修行を待つ所にあらず。しからざらん輩は、只不斷の修行を勵まして年月を送りなば、終に自得發明の期あるべき也。只數奇に越えたる重寶も肝要もなき也。上代にも數奇の人々は古今の大事をも許し勅撰にも入れられ侍り。誠の數奇だにあらば、などか發明の期なからむ。

・・・文意が取れましたでしょうか。大学受験の古文問題としては「やや易」レベルだと思います。現代語で意訳してみると

藤原家隆は 40 歳過ぎ、頓阿は 60 歳過ぎでようやく歌詠みとして声望を得た。先達は長い間の修練を経て初めて優れた歌人としての名声を得てきた。

ところが最近のひとは 100 か 200 くらい詠んだだけですぐに優れた先達のようになれると思っているのが滑稽である。

ひたすら風流心を深めてまずはのびのびと自然と出てくる言葉を詠んでいけば、自ずと独自の境地にたどり着けるはずだ。

一方で 37 歳で亡くなられた後京極摂政殿(九条良経)や 20 歳にならず夭折された宮内卿(後鳥羽院女房宮内卿)のように、生まれつきの名人もいて、そういった方々には修行など不要である。

しかしながら、生まれつきの名人ではない凡人はひたすら修行を怠らず励むべきで、それを積み重ねていけば真理を会得するときが来るはずで、歌詠みの道には風流心以上に大切な宝はないのである。

という感じでしょうか。

院長は自他ともに認める「秀才型」です。子供時代にやったファミコンのゲームも、初めてやったボウリングやビリヤードも、中学時代に数学の新しい単元を習うときの最初の練習問題も高校時代にやたらやらされた縄跳びのやや複雑な技も、ことごとく初めはうまく行かなかった人生でした。ひとつのことをマスターするまで時間がかかる "スジが悪いヒト" なのです。もっと言えば、手術もある程度一人前になるまでに相当時間がかかったほうだと思います。ただしその分努力で補い、なんとか臨床医として 24 年、大過なく過ごしてこられました。身につけるのに時間はかかりますが、"コツ" を掴めばそのあとは早い方、のようです(家族談)。

上記、『正徹物語』の段にある「しからざらん輩は、只不斷の修行を勵まして年月を送りなば、終に自得發明の期あるべき也(才能のない者はただひたすらに修行に励み年月を送れば最終的に自ら真理を会得するときがくるはずである)」を信じて、日々知識や技術をアップデートしていき、いつか来るかもしれない臨床医としての "悟り" みたいなものを身につける瞬間を楽しみに待ちたいと思います。

・・・これだけ医学や医療が発展している現在、果たしてそんなときが来てくれるのか少し疑問ですが自分を信じて。

 

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