ときどき "もう最近は管理の仕事が忙しくて診療はしていないなぁ" という院長先生とハナシをするときに感じてしまうこと。
昨日、医師業がブルーかホワイトか、みたいなことをこのブログで述べてみました。結論は結局「何色ともいえない、あえて言うならブ◯ック」みたいな感じで終わってしまいましたが、本心を言うとそんなことはないと思っております。なにせ 30 代とか 40 代とかになって医師を目指してくれるひとが少なからずいてくださるほど魅力あるのが医師業ですから。
ただ、最近日本では、いわゆるブルーカラーよりも、ホワイトカラーのほうが優遇されているのではないか、という意見を耳にすることがあります。要するに、「手を動かして現場で働く人」よりも、「会議室で資料を作ったり、制度を決めたりする人」のほうが評価されやすいのではないか、という感覚でしょうか。
ここでいうブルーカラーとは、工場や建設現場で働く方だけを指しているわけではありません。広い意味では、理系職、技術職、そして(昨日も述べたように)医師をはじめとする医療職も含まれると思います。もちろん医師は世間的には高収入の専門職であり、いわゆる典型的なブルーカラーとは異なります。ただ、臨床の現場に立つ医師の仕事は、決して机の上だけで完結するものではありません。診察・処置・検査・急変対応などを行い、ときには身体的にも精神的にも少なからず消耗しながら業務を行っていますので、"ブルーカラー的" な部分はそれなりにあるといえましょうから。
一方で、文系的なホワイトカラー職、たとえば企画・管理・金融・コンサル・法務・人事・広報などの仕事は、社会の仕組みを作る側、ルールを決める側、評価する側に回りやすい印象があります。このとき、どうしても「ルールを決め、評価する」立場にいるヒトというのは現場で汗をかく側よりも、相対的に上から目線になりやすいことはあるかもしれません。"シビリアンコントロール" という言葉もありますし。手を動かしてものを作る人よりも、その仕組みを設計する人のほうが出世する、これは世の真実なのかもしれません。
ひとつの例として院長が医師になりたての頃、最初の 1 年のことを振り返ってみます。当時、母校の大学病院で雇ってもらったのですが、当時の事務さんはものすごく高圧的なひとがいました。公務員のイヤなところが出ているひとがいてとにかく偉そう。一度びっくりしたのは、なにかの医療機器使用の申請に行ったとき、「先生何年目?」と聞かれ、「1 年目の研修医です」と答えたら「上の先生にちゃんとサインしてもらって。あとでなにかあって色々言われるのイヤだから」と言って書類を突っ返されたことがありました。・・・今はこんなことはないと信じております。東京科学大学病院。
あえて非常に嫌味なことを申しますが、医療機関で "おカネになる行為" を行えるのは専ら医師です(もちろん管理栄養士による指導や臨床心理士による面接、看護師による嚥下指導など、一部医師以外でも診療報酬がついているものがありますが、あくまでもその指示を出すのは医師であることがほとんどです)。であるにもかかわらず、あんまり事務方の権力というか、ポジションが強いと現場のやる気は削がれてしまいます。「どちらが上」というハナシではなく、いずれも医療機関にとって両輪ですし、仕事である以上、ひとつのゴールを目指す仲間であってほしいと思います。
特にわれわれ医師や看護師、薬剤師、介護職など、患者さんに直接向き合う人たちは、日々重い責任を背負っています。目の前の患者さんの状態は待ってくれません。熱が出た、痛みがある、血尿が出た、息が苦しい、転んだ、薬が合わない、家族が心配している。こうした相談に、その場その場で判断を下していきます。それに対して、制度や報酬を決める側、医療機関を評価する側、経営指標を眺める側は、もう少し安全な場所から全体を見ているように見えてしまうことがあります。もちろん実際には、その立場にはその立場の難しさがあるはずです。それでも現場にいると、
「医療は会議室でやっているんじゃない!診察室(ときに病棟、ときに手術室、ときに救急外来、さらにはときに病院の廊下や駐車場であることも)で行われるんだ!」みたいな某映画のようなセリフも出てこようというものです。専門職の地味な技術の積み重ねが社会を支えている、このことを是非知ってもらえたら嬉しいです(当院のクラークスタッフはその点をよく分かっているので大変ありがたいです)。
クリニックの院長をやっているといろいろな院長職や医療法人理事長職の先生に出会います。その中には、「この先生はもう現場に出ることをやめて、管理者になったんだな・・・」と感じる医師もいます。批判しているわけではありません。ただ、自分はあくまでもイチ臨床医としての立場を、(この先どんなふうになったとしても)おそらく放棄しない、いや、放棄できないんです。診療行為に従事すること、それはすなわち患者さんと話をすること。それが好きで医師になろう、と決心した経緯があるので。
なにごとも最終的にはひととひと。大切なのはコミュニケーション。これからどんなに秦野北クリニックが大きくなっても(なれるのか?)可能なかぎり現場を自分の立脚点として考えていきたいですね。
