どれだけ経験を積んでも手術前はいつも緊張します
東海大学で手術に参加しております。
主な担当はロボット支援手術。ときどき患者さんや若手医師から「ダビンチ手術はすでに助手をあわせると 400 例の経験があります」というと「じゃあもう朝飯前でしょう」と言われることがありますが、とんでもありません。
何例経験しても手術前日は必ず術式全体について「あれをこうしてこれはああして・・・」などベッドの中でブツブツ言いながら寝るのが日課になっており、必ず緊張してしまいます。前日にグッスリ眠る、というのはほとんどありません。ヒトの体は全員異なり、「個人差のカタマリ」ですのでなにが起こるかわからないからです。
麻酔は普段体内にいれないような薬を投与することですし、手術中の患者さんは数時間動けません。同じ体位を取り続けるという非生理的な環境に置かれると血栓症(血の塊が血管を詰まらせる病態)や神経圧迫による長期の疼痛などが起こり得ます。
さらにメスを入れて侵襲(体への負担)を加えることになるので創部痛、術後麻酔薬による吐き気(院長はこれまで 2 回全身麻酔を受けておりますが、術後はこれが辛かった)など、本当にいろいろなネガティブなことも起こり得ます。
一度寝る前にアタマの中で執刀開始から閉創まで一連の流れを確認しておくと、当日少し緊張がほぐれて朝目覚めることができます。
来週も手術があるのでせめてその前日はしっかり休んでベストパフォーマンスを患者さんに提供できるよう努めたいと思います。
リスクはありますが、一般的に「患者さんの病状を劇的に改善できる」可能性が最も高いのが手術ですので術後に元気な姿を見られると、「手術をやってきて良かった」と心より感じます。
最近外科系を希望する医学生が減っていると聞きました。手術は素晴らしい治療手段ですので是非とも進路決定の前に外科系、特に泌尿器科も検討診療科に加えていただきたいと思っています。
写真は東海大手術直前の一枚です。緊張しているのが表情からも見て取れると思います。