なんだかんだ言って若手の医師は知識の蓄積に手技の修得、さらには人間力の向上とやることがたくさんで大変であることは間違いない。
本日まで 2 週間、初期臨床研修病院人気ランキングでいつも上位の病院から研修医の先生が当院で研修を受けてくれました。非都市部で「泌尿器科・内科・漢方内科」を標榜する当院での研修が今後の医師人生に少しでも役立つものであることを強く願います。
この研修医制度ですが、2004 年から開始となりましたので、2001 年に大学を卒業した院長は公的な "研修医" という身分になったことがありません(当時は卒業したらすぐ「◯◯ 科医」になるのが一般的でした)。現在は初期研修を 2 年、その後専攻医としての研修(といっても十分戦力として見られながら勤務します)を 3 年行うことが一般的です。
医師になってから様々な診療科で研修を受けられる、というのは "百聞は一見にしかず" ということでとても有益なことと考えますが、それぞれの研修先で学ばなければいけないことも多く、その点が大変だろうな、と推察しました。特に医学の進歩は速く、診断技術や治療法は日に日々アップデートしていきますので。
ですので当然ながら、年を経るごとに医学生や研修医たちに求められる知識量は増えていきます。教科書は分厚くなり、国家試験で問われる範囲は広がっていき、臨床の現場でも「昨年はなかった新薬や検査」が応用される。その結果、「今の医学生・研修医は昔より大変」とわれわれ中年世代は考えてしまいます。
しかし一方、「学びやすさ」も格段に改善されました。たとえば昔は媒体は当然ながらすべて紙。調べものといえば大学の図書館に行って分厚い参考書や医学雑誌をめくるしかありませんでした。PubMed を使おうにもネット速度が非常に遅く、論文を 1 篇ダウンロードするのに 5 分くらいかかる有り様でしたね、2002 年は(その当時 Apple の PC、PowerBook G4 のチタンモデルを使っていましたが、トラックパッドの下にクリックスペースがあり、スロット式の CD ドライバが PC の側面ではなく前面についていました。今 Wikipedia をみると HDD 容量が 10/20 GB。今このブログを書いている MacBook Pro の HDD が 2 TB あることを考えると隔世の感)。
学会発表といえば Power Point ファイルのデータを MO(もう見ないですね・・・)にいれてカメラ屋さんにいって本当に「スライド」にしてもらうという最後の世代がわれわれの研修医時代でした。2003 年にはほぼすべて MO とか CD-R で事足りるようになり、地方会での発表が一気に楽になった記憶があります。
一方で現在は、スマホひとつで何でも検索でき、PDF の閲覧から論文の Supplement(補遺)としてついている動画もサクサク観られます。おまけになにか知りたいことがあれば YouTube で検索すれば "現役医師が教える!中心静脈カテーテル留置のコツ" みたいな軽いものから、海外の有名外科医の手術動画もフルで観られたりします。第三助手では何をやっているか全くわからなかった開腹手術が、手術に助手として参加しなくてもすべてが視える腹腔鏡・ロボット手術となり、遠く離れた同期とも LINE や ZOOM でいつでもつながることができ、学会発表もリモートでできる時代です。
そしてここ数年の大きな変化といえば、 AI の登場。難解な英語論文を「わかりやすく日本語で要約して!」って頼めば、数秒で要約が出てくる。学生が「この国試過去問、鑑別どう考えたらいいの?」って質問すれば、スムーズに答えとともに解説してくれる。時間のない研修医が「心不全の治療アルゴリズムって今どうなってるの?」って聞いたら、最新のガイドラインをベースにチャートまで作ってくれる。ただし、まだまだ医学的には(ちょっと難しいことを聞いたりまだ結論が出ていないことを聞くと平気で出典や参考文献について嘘をつくので)ダメなところも多いものの、多くのひとが使い込むことでさらに学習し、近いうちには自分のパートナーまで到達できるようになる可能性はビンビンに伝わってきます。こうなるとさらに新たなことを学ぶことへのハードルはぐっと下がっていくことでしょう。
「学ぶべきことは増えてるけど、学ぶ手段も進化している」のは間違いないと思います。
ただし!医学、というか医療は結局 "人間" を相手にするわけで、人間というのは性別や年齢、地域ごとの気質や人種、育った環境などによって多種多様です。日々患者さんの診療をして思うことは医者は「患者さんや他のスタッフに嫌われたら終わり」ということ。これは他の業種でもそうですが、特に医療はチーム単位でないとうまくいきません。学ぶことの負荷や教材の進歩で浮いた時間はなるべく本を読んだり映画を観たり、スポーツやレクリエーションなど、人間性・芸術性を向上することに(忙しいことは重々わかっていますが)使ってほしいと思います。ネトフリやアマプラなど、余暇の過ごし方も便利になっているので。
いずれにしても、これから日本、いや世界の医療を担っていく若手の先生方へ大いなるエールを送りたいと思います。医療の世界へようこそ。素晴らしい医師人生を!
