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はじまりは "ちょっとしたこと" であっても長きにわたり続く習慣になることもありますので、診察中にそんなきっかけにたどり着けると幸せですね。

[2026.02.08]

聡明で、子供の頃両親共働きであった院長を慈しみ育ててくれた富佐子おばあちゃんはよく歴史のハナシをしてくれました。そのなかでよく覚えているのが歴史上の人物、政治家を姓ではなく名で「音読みする」ことでした。

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となるわけですが、西郷隆盛は「西郷さん」でしたし、大久保利通は「おおくぼとしみち」でした。おばあちゃんのなかで「このひとは音読みする、このひとはしない」というなんとなく暗黙のルールがあったようです。大正生まれのひとで大変学業優秀であったようですから、当時学校で先生が言っていたことをそのまま踏襲していたのかもしれません。

そのなかで院長がよ〜く覚えているのが最後の徳川将軍、慶喜です。おばあちゃんはこの人物をあまり高く評していませんでしたが、必ず「ケイキさんはね・・・」と語ってくれました(よく訊かせてくれたのが、「自分のお母さん(明治生まれ)が東京でケイキさんが馬車に乗っているところをみたことがある、というハナシをわたしも聞いたことがある。いろいろと言われたひとだけどなんだか寂しそうだったらしい」、ということでした。

まだ小さい頃でしたから、「"下の名前" が自分と同じ読みの歴史上の人物がいる」、ということに興味をもち、そのあと随分徳川慶喜関連の本を読んでいくようになりました。これで歴史が好きになったのですが、本当に子どもにとって "興味をもつきっかけ" というのは他愛もないことからが多いですね。

しかし振り返ってみると、このような "些細なきっかけ" が、その後の人生に影響する、というのは珍しくありませんね。院長が医師を志したのは高校時代に隣の席にいた同級生女子に借りた『ブラック・ジャック』でしたし、泌尿器科を選んだのは 2 学年上の部活先輩が研修医生活を楽しそうに送っていたことがひとつのきっかけでした。こうなると、「人が何かに興味をもって、行動に影響させ、前進する理由」は理屈や正論ではないことが多いのかもしれません。

たとえば生活習慣病でも同様でしょう。医療者がいくら「このままだと将来、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなりますよ」とか力説しても、患者さんの生活はなかなか変わりません。これは患者さん側のせいばかりではなく、「ヒトは数字や確率よりも、もっと感情に近いところで動く生き物である」ことが関係しているように思います。

上記のようなことを医療者から言われても特に生活習慣を変えなかった患者さんが、
「まだ小学校前の孫と公園で走ってたら、息が切れて追いつけなかった。あれはショックでした」という一言で、禁煙を決意し、毎日少しずつ歩くようになったりすることはよくあります。医学的にみれば「禁煙すれば心血管リスクが ◯◯ だけ下がる」みたいな "数値" に置き換えられるハナシなのですが、「孫と一緒に走りたい」。患者さんを動かすのは、こういった "感情に関わること" であることが多いのではないでしょうか。

これは子どもの頃に院長が徳川慶喜について興味を持って調べたのと、似たような構造なのかもしれません。ちなみに徳川慶喜という人物は、評価が難しい存在。英傑だったとも、無責任な "御殿様" であったとも言われます。ただ、おばあちゃんの母親(ひいおばあちゃんですね)が話してくれたという「馬車に乗る、どこか寂しそうなケイキさん」という像は、教科書とはまったく違う、生身の人間としての姿で、なんとなく院長はそんな情景から考える人物評価も重要ではないかと思います。

医療においても、病名や検査値は教科書をみれば書いてありますが、その疾患を生きているのは、患者という "ひと" です。同じ高血圧といっても、患者さんによって年齢も背景も今後の人生における目標みたいなものも、守りたいものもすべて違います。ですので、当院では院長はじめ、スタッフが患者さんのハナシを(時間の制限はあるのですが)相当傾聴する方だと自負しています。症状だけでなく、その人がどんな人生を歩いてきたのか、今どんな生活をしているのか。それは遠回りに見えて、実は治療への一番の近道であることが少なくありません。

ですから当院の診察時にいわゆる「雑談」で何分も話をした患者さんは少なくないと思います。院長がが歴史を好きになるきっかけが、たまたま自分と同じ名前の読みだったように、患者さんが治療に前向きになるきっかけも、ほんの些細な話の中にあるかもしれない。その「きっかけ」に診察中の会話で出会うことができればこんなに嬉しいことはありません。

高市総理ではありませんが、明日からも話して話して話して話して話して参りたいと思います。

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