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ひとりの少年が抱いたささいな欲望がなんだかよくわからない事態を招いたエピソード・後編。

[2025.09.21]

・・・昨日の続きを。

オタフクソースをたっぷりかけて香ばしいニオイを撒き散らしながら引き出しに "甘閉め" でいれておいたタコ焼き。夕食後のデザートよろしく食べようと思って引き出しを開けてみると、いきなりそのタコ焼きから 5〜6 匹の "G" が一目散に逃げ出す、という光景を目の当たりにしました。ちなみに昨日書き忘れましたが、G に慣れていた自分もさすがにあのときは 50 cm くらい後方にうさぎ跳びしながら一瞬で飛び離れました。

さあ、どうする好信少年。10 歳の自分は悩みました。タコ焼きはまだ半分(5 個)残っています。しかもたくさんの G が群がったとはいえ所詮は昆虫。イヌやネコに食べられたわけではありませんので、見た目的には彼らに食べられたとわかるような痕跡は認められません。

10 歳の少ない脳ミソをフル回転させた結果・・・「やつらが "クチをつけた" のは所詮ソース。しかも外側。まあ本体は大丈夫だろう」という、何の医学的根拠もないただの食欲に操られた結論にいたり、ティッシュでソース部分をなるべく拭き取った上で、速攻で食べてしまいました。なんとなく早く食べないと、どんどん G の "エキス" みたいなものが浸食してくるような気がして。

院長はもともとお腹を下しやすい体質なのですが、まあ大丈夫でした。そしてこのことは誰にも言えないまま 12 年ほど経過しました。22 歳。医学生になり、かつて自分でもそんなことがあったとはすっかり忘れていた頃に受けた講義が「医動物学」。要するに寄生虫学です。

当時、母校の東京医科歯科大学には『笑うカイチュウ』という寄生虫学に魅せられた当時の第一人者、藤田紘一郎 先生が教授として教鞭を振るっておられました。本も面白かったですが、講義もものすごく軽妙で面白く、他のつまらない(失礼!)系統講義では寝ていても、藤田先生のハナシは聴いていたことを覚えております。

そんな折、講義のなかで藤田先生がこんなことを教えてくれました。

「ゴ◯ブリはキタナイ所が大好きなので全身に菌が付着してるんだよ」

「彼ら(← 代名詞をヒトっぽくする必要はないと思いましたが)は特に汚物とか、ヒトが嫌悪感を抱くようなイヤなものほど大好きです」

「ときどき彼らが重大な感染症を媒介することがあるので気をつけましょう」

「媒介するかもしれない病原菌はサルモネラ・赤痢・O-157(大腸菌の一種で食中毒の原因となり、小児や高齢者では死亡するほど重症化することもある)とか、結構ヒトにおなじみの菌も多くいますからゴキブリが触ったかも知れない生物は食べないほうがいいよ」

・・・・・・・・・・・え。12 年前の禍々しい記憶がよみがえりました。

「触ったかも知れない」どころじゃないよ、確実にあのときあいつらタコ焼きかソースかわからないけど「食べて」たよ。

皆が穏やかに聴講しているなか、ひとりなんとなくお腹が痛くなるような気持ちになり、全く料理ができないためカレーや焼きそばを毎日のように食べていた学生時代の院長は、その日は必要以上にカレーを煮込んだ覚えがあります。

改めて調べてみると、G の奴らは上に挙げたような細菌だけでなく、真菌(カビの一種)やロタなどのウイルスも媒介することが報告されていました。

・・・皆さん、食は生活の基本です。安全な食生活を心がけてください。また、食べ物は独り占めしようなどとは考えず、ちゃんと家族や兄弟でシェアして楽しい食卓にするようにしましょう。あまり説得力がないかもしれませんが。

 

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