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ふるさと納税やクラウドファンディングでだいぶ "寄付" という行為が日々の生活に根付いてきたように思います。

[2026.10.01]

ホフディランという 2 人組音楽ユニットを知っているでしょうか。院長が大学時代の 1996 年にメジャーデビューし、『スマイル』『遠距離恋愛は続く』『恋はいつも幻のように』などの有名曲があり、特に『欲望』は 1998 年のフジロックフェスティバルで聴いて以来いまでも聴きたい名曲です。

そのホフディランのひとり、小宮山雄飛さん。東京都港区出身で渋谷区在住だったようですが、1999 年に渋谷公会堂で行われた彼らのライブに行ったときに「(自分が渋谷区在住なので)この会場のあの時計(小さなデジタル時計を指しながら)はボクの税金でついたんだ、きっと」と曲間の MC で言って、もうひとりのメンバー、ワタナベイビーさんに「全部じゃなくて一部ね!」とツッコまれていました。・・・今日はそんなハナシをしてみましょう。

秦野市民であれば、水無川沿いに「秦野市休日夜間診療所」があることはご存知の方も多いと思います。休日や夜間(23 時までですが)の内科系・外科系 双方の救急患者さんに対応しています。この診療所、医師会と同じ敷地内にあります。そのため院長が開業前に、大学の先輩であり、当時医師会長でおられた関野小児科内科クリニックの 関野 高弘 先生をはじめとした医師会幹部の先生方に挨拶にうかがった思い出の場所です。2023 年 1 月くらいでしたか。ちなみに昨日院長は、その休日夜間急患診療所で 23 時まで診療の当番でした。

当院のようなクリニックは施設に医師が数名またはひとりで診療しておりますので、診療を終えたあと、あるいは休日に突然熱が出た、腹痛が起きた、子どもの具合が悪くなった――そんなときに地域の医療を支えてくれているのが休日夜間急患診療所です。

普段そこで働いているときには診療に集中しているので、建物についてじっくり考えることはあまりありません。しかし改めて見ると、長年地域医療を支えてきた施設だけに、さすがに老朽化が目立つようになっています。秦野市でも現在、休日夜間急患診療所などの建替えが計画されています。現在の施設には老朽化だけでなく、新型コロナウイルス感染症流行時に明らかになった待合スペースや駐車場の不足、新興感染症への対応、さらに災害時の医療救護拠点としての機能など、さまざまな課題があります。市では医科・歯科の診療所や薬剤師会薬局などを含め、新しい体制の整備を進めています。そして、この建替えを支える方法の一つとして活用されているのが「企業版ふるさと納税」です。

よく、

「アメリカには寄付文化があるけれど、日本にはあまりない」

と言われます。確かに数字を見ると、その印象にはある程度の根拠があります。日本ファンドレイジング協会の「寄付白書 2025」によると、2024 年の日本の個人寄付総額は、ふるさと納税を含めて約 2 兆 261 億円でした。かなり大きな金額に見えますが、名目 GDP に対する割合では約 0.33%。同じ資料では米国が約 2.00%、英国が約 0.54%、韓国が約 0.50%となっています。特に米国との差はかなり大きいですね。大学や病院、美術館、研究機関などへの寄付が社会の中に自然に組み込まれている米国では、成功した企業経営者が巨額の財産を財団に拠出したり、大学の卒業生が母校へ継続的に寄付したりすることも珍しくありません。

一方、日本では「公共のものは税金で行政が整備するもの」という意識が比較的強いように思います。道路も学校も公園も病院も、「必要なら行政が予算をつければよい」と考える。

もちろん、それは間違いではありません。税金を集め、必要な公共サービスを提供することは行政の重要な仕事です。しかし、人口が減少し、高齢化が進み、社会保障費も増え、公共施設も一斉に老朽化していくこれからの日本では、「必要なものを全部税金だけで用意する」という仕組みには限界があります。そこで重要になってくるのが、「寄付」というお金の流れなのかもしれません。

もっとも、「日本には寄付文化がない」と言い切ってしまうのも正確ではありません。日本にも昔から「寄進」「奉加」と呼ばれる文化がありました。寺社の建築や修繕のために人々がお金や物を出し合ったり、江戸時代には地域の商人などがお金を出し合って橋を造ったり、教育や救済活動を支えたりすることがありました。つまり「地域に必要なものを、そこに暮らす人々が少しずつ支える」という発想そのものは、決して外国から突然輸入されたものではありません。

現代でも、災害が起きれば多くの人が義援金を送ります。神社やお寺への寄進、学校への寄付、赤い羽根共同募金、クラウドファンディングなどもあります。そう考えると、日本人に「人のためにお金を出す気持ち」がないわけではありません。

むしろ課題は、「自分のお金を社会のどこに託せば、どのような変化が生まれるのか」が見えにくかったことなのかもしれません。

実際、2024 年の日本では、ふるさと納税を除いても個人寄付は約 7533 億円に達し、寄付をした人の割合も 44.5% とされています。「寄付は未来の社会への投資だ」と考える人も約 6 割まで増えている一方、「寄付したお金がきちんと使われているか不安」と感じる人も 74.1%に達しています。

つまり、寄付する気持ちがないというより、「何に使われるのか分からない」ことが大きな壁なのでしょう。だからこそ、「この建物を建てる」「この医療を守る」「この子どもたちを支援する」と、使途が具体的に見えることが重要になります。

今回の休日夜間急患診療所の建替えは、まさに分かりやすい例だと思います。

夜中に子どもが高熱を出した。

休日に突然具合が悪くなった。

年末年始にかかりつけ医が休診している。

そんなとき、「ここに行けば診てもらえる」という場所があることは、普段健康な人にはなかなか実感しにくいものの、地域にとって非常に重要なインフラです。しかも医療施設は、単に診察室と待合室があればよいわけではありません。感染症患者を分離できる動線、十分な駐車場、バリアフリー、停電や災害への備え、医薬品の保管、医師・歯科医師・薬剤師などの連携――これからの施設には多くの機能が求められます。当然、それにはお金がかかります。

企業版ふるさと納税では、企業が自治体の地方創生事業に寄付すると、通常の損金算入と税額控除を合わせ、条件を満たせば寄付額の最大約 9 割に相当する税負担の軽減を受けられます。秦野市の場合、1 回 10 万円以上が対象で、市内に本社を置く企業は制度の対象外となっています。また、寄付の見返りとして自治体から経済的利益を受けることはできません。

実際に秦野市では、すでに複数の企業から休日夜間急患診療所等の整備に対して企業版ふるさと納税による寄付が行われています。2026 年 2 月には 300 万円を寄付した企業もあります。これは単なる「税金の節約」ではなく、「自分たちの会社として、どんな地域を応援したいのか」という企業の意思を社会に示す仕組みでもあります。

そう考えると寄付というものは、一種の「意思表示」といっていいかもしれません。もちろん行政の予算は、議会で議論され、公平性や優先順位を考えながら配分されます。一方、寄付にはもう少し個人的な意思が入ります。

「この病院を残してほしい」

「この研究を進めてほしい」

「この文化財を守ってほしい」

「この子どもたちを応援したい」

一人ひとり、あるいは一つひとつの企業が、自分のお金の一部を使って、

「私は、この活動が社会に残ってほしいと思っています」

と意思表示する。

そう考えると、寄付とは単なる「善意のお金」ではありません。

未来の社会に対する、小さな投資なのだと思います。

昨日 23 時まで休日夜間急患診療所で診療しながら、この施設も長い間、多くの医師、看護師、薬剤師、事務職員、行政職員、そして地域の方々によって守られてきたのだろうと思いました。

建物はいずれ古くなります。医療機器も壊れます。制度も時代に合わせて変えなければなりません。

しかし、「休日や夜間でも、困ったときに診てもらえる地域でありたい」という価値そのものは残していかなければなりません。そのためのお金をすべて行政任せにするのではなく、企業も、個人も、それぞれ可能な形で参加する。そんな社会になれば、「寄付」は特別に裕福な人だけが行う行為ではなくなります。

1000 円でも、1 万円でも、企業なら 10 万円でも 20 万円でもいい。大切なのは金額以上に、「自分たちが暮らす社会を、自分たちも少しだけ支えている」という感覚なのではないでしょうか。

「日本には寄付文化がない」と嘆くよりも、寄付したくなるような具体的なプロジェクトをつくり、その使途をきちんと公開し、その結果として何が変わったのかを伝える。寄付する側にも、寄付を集める側にも、その努力が必要なのだと思います。休日の昼間、あるいは夜中に突然体調を崩したとき。新しくなった休日夜間急患診療所の灯りを見て、「あの建物は、地域のみんなで少しずつつくったものなんだ」と思える日が来たら。それは建物が新しくなること以上に、地域にとって価値のあることなのかもしれません。

・・・とりあえずは秦野市休日夜間診療所へのご寄付、秦野が好きと思ってくださる企業は是非ご検討ください。ただし本社が市内にない企業しかできませんのでご注意を(https://zaigenkakuho.com/kigyou_furusato/municipality/9341/)。

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