もうすぐ大学入学共通テストに医師国家試験と受験シーズン突入ですね。
年末年始が明け、1 月の外来で患者さんから聞かれることとして、
「体重が少し増えました」
「飲酒量が少し増えました」
「正月くらいは、と思って好きなように食べてしまいました。そのせいで最近ちょっと塩分高かったかも・・・」
などの "テヘペロ" なコトバです。こうやって教えてくれるのは大変嬉しいです。生活習慣病の主役はあくまでも患者さんです。是非一緒にまた改善してまいりましょう!
・・・てなことを考えながら昨年の医師国家試験をパラパラしていたらこんな問題がありました。
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(医師国家試験 119E32)
49歳の男性。健康診断で初めて高血圧を指摘され来院した。普段から味の濃い食べ物を好み,塩分の摂りすぎを気にしている。減塩はしていない。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。身長172cm,体重72kg。体温36.4℃。脈拍68/分,整。血圧146/92mmHg。
この患者の行動変容のステージに基づく指導で適切なのはどれか。
a 減塩しなければ脳出血になりますよ
b 塩分の取りすぎが高血圧の原因です
c 味の濃い食物を摂るのを控えましょう
d どのようにしたら減塩できると思いますか?
e その気になるまで減塩する必要はありません
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「行動変容ステージモデル」という用語があります。。一般的にはあまり使われない用語ですが、患者さんに対してなにか説明する際にわれわれ医療者が意識するコトバです。これは "ヒトが生活習慣や行動を変えるときに、心の準備状態が段階的に移動していく" という考え方で、1980 年代前半に禁煙の研究から導かれたコンセプトです。その後、食事や運動をはじめとしていろいろな健康に関する行動について幅広く研究と実践が進められ、現在では原理原則ともいえるくらい基本的なモデルとなっています。
行動変容ステージモデルでは、人が行動(生活習慣)を変える場合、
「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」という 5 つの段階を経る、と考えます。すなわち、今回の問題でいえば、受診された患者さんが「現在どのステージにいるのかな?」と考えながらその段階に合致した指導をする、ということが行動変容につながる第一歩といえます。
ざっくりいうと
・無関心期: 6 ヶ月以内に行動を変えようとは思っていない
・関心期: 6 ヶ月以内に行動を変えようと思っている
・準備期: 1 ヶ月以内に行動を変えようと思っている
・実行期: 行動を変えて 6 ヶ月未満である
・維持期: 行動を変えて 6 ヶ月以上である
という時間による分類があり、院長は「習慣は 6 ヶ月以上続いたらそこで初めて "習慣づいた" と考える」ようにしています。これは患者さんのこともそうですし、自分の運動やエクササイズもそう考えています。
そうなると、上記の問題はどう考えればよいでしょうか。この方は「塩分の摂りすぎを気にしている」とあります。すなわちまさに「関心期」にあたるわけです。関心期の方にはどうアプローチするか。院長も産業医として参考にしている「さんぽ LAB」さんのウェブサイトによると、「関心期」の項目には下記のような記載があります。
「変化したいと思いながら変化しないことにも価値を持つ両価性を持っている段階です。行動変容についての関心がある時期のため、双方向コミュニケーションに,効果が期待できます。
支援ポイント:信頼関係を築けるように努めることが大切です。行動変容の具体的な方法や過程についても正しく理解してもらい、「それなら私にもできる」という自己効力感を高めてもらえるよう情報提供を行う必要があります。同時に、生活習慣に対する不安や抵抗の要因について気づいてもらうような情報提供を行うことが重要です。」
簡単に言えば「減塩に関心を持っているのだからこちらとしてはなるべく前向きになっていただくよう、いろいろとご自身でも考えてもらう」ということになるでしょうか。というわけで各選択肢は下記のような解説になります。
a 「減塩しなければ脳出血になります」⇒ ✗。関心を持っているのにわざわざ脅す必要はありません
b 「塩分の取りすぎが高血圧の原因です」⇒ ✗。塩分の摂りすぎが良くないことをすでに自覚しています。これは強いて言えば、無関心期の場合には有効かもしれません(院長はあまりこういう言い方はしませんが)。
c 「味の濃い食べ物を摂るのを控えましょう」⇒ ✗。どうすれば控えることができるかを知りたいと思っているわけで、これでは動機付けにはつながりません。
d 「どのようにしたら減塩できると思いますか」 ⇒ ◯。一緒にに考える中で、上述のような「あ、それなら自分でもできるかも」という気づきを得てもらえれば良好な結果に繋がっていくと予想されます。
e 「その気になるまで減塩する必要はありません」⇒ ✗。せっかく塩分を気にされているのですから、せっかく関心を否定するようなことは控えたほうがよいでしょう。
・・・と医師国家試験には一般の方でも十分答えられる問題がいくつもあります。また、最近の国試は 25 年前に院長が受けたときより随分と実践的になりました。今年は 2 月 7, 8 日に行われるそうです。昨年は 10,282 名が受験し、9,486 名が合格しました。合格率は 92.3% と高いですが、高いからこそプレッシャーもかかるもの。是非万全の体調で受験し、素晴らしい医療という道の一歩を踏み出していただきたいと思います!あ、あと医学部受験生もそろそろ大詰めですね。頑張って!
