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オンライン診療で受け取るクスリにもリスクがあるので処方を受けるときは患者さんもしっかりクスリのネガティブな面も知るようにしましょう(もちろん処方する医師が説明しないといけないのですが自衛として・・・)。

[2025.07.20]

昨日はオンライン診療、特に AGA 治療の「治療より通販、とカテゴライズしたほうがよいような手軽さ」について述べました。どんなクスリも必ずリスクを含みますので処方する医師は、すくなくとも標準的な医学的評価(たとえばデュタステリドなら院長ならどんな患者さんでも、開始したあとは 1 ヶ月以内に治療効果についての問診、2-3 ヶ月以内とその後 1 年以内の採血チェック、他にもいくつか検査を)をするべきでしょう。できなければ処方するのは控えるべきだと思います。

この流れでいうと、現在最も問題になっているのが 2 型糖尿病の治療薬として、治療対象であれば保険で投与できる "GLP-1 受容体阻害薬" と呼ばれる注射(内服もありますが、食前に内服しなければならずをいわゆる "痩せ薬" として使用するケースです。もともとこの薬は肥満傾向のある患者さんが対象の糖尿病治療薬としていわゆる満腹中枢に働きかけ、食事の摂取量を減らして血糖値低下とともに体重減少効果を期待するクスリです。しかし、「糖尿病の診断を受けていない、そもそも医学的に肥満傾向が全くみられないのに "痩せ目的" だったりクスリによる "食欲低下" 目的に、美容医療を行っているクリニックなどで自費診療として受け取っている女性(男性は圧倒的に少ない)がここ数年で急増しました。

この GLP-1 薬、前回の AGA 治療薬よりも副作用でコワいものがあり、悪心・嘔吐・低血糖に加えて、まれではありますが膵炎や胆嚢炎など、致死的な合併症も報告されています。実際、日本でもオンライン診療でこの注射製剤を(採血などのフォローをせずに漫然と)使用しつづけて有害事象グレード 5(副作用で亡くなってしまうこと)となり、訴訟に発展したケースもあるそうです。

こういった実態にもかかわらず、「体重 ◯ kg減りました!」「楽して痩せる!」という広告が SNS を中心に氾濫し、医師は患者の希望を「はいはい」と受け入れて、薬を出すだけ。この行為が「医療」として成り立っているとしたら背筋が寒くなります。

もちろん、オンライン診療そのものを否定するわけではありません。高血圧や高脂血症といった慢性疾患の再診や、交通アクセスの悪い地域に住む方にとって、非常に有用なツールです。しかしいま問題になっているは、医師が “患者さんの診療"  よりも “医療をかたったビジネス” を優先する構造が制度の隙間から生まれてしまっていること。オンライン診療を提供する一部のクリニックが、患者の健康よりも売上を追い、「売れる薬」「流行りの薬」を中心に日本で医師(歯科医師含む)だけが認められていない「処方権(処方箋を発行する権利)」を濫用しているような状況がよろしくないといえましょう。

「希望されれば出しますよ」
「副作用があっても自己責任で。夜中に胆嚢炎発症したらウチのクリニックは夜やっていないので近所の救急病院行ってください」
「検査とかその結果の解釈など面倒なことは、まあ必要になったらやりましょうか」

そんな言葉の裏には、「薬を売れば手間なく儲かる」「ダイエットするひとはいくらでもいるので広告を打てばヒトが集まる」というような思惑がありそうです。患者が望むから、医師は出す。医師が出すから、患者は安心して飲む。でも、そこにあるのは “納得できる診療” "説明と同意" ではなく、ビジネスというにはあまりにも短絡的な処方権の濫用です。

医療を wikipedia で調べると "人間の健康維持や回復・増進を目的とした諸活動と健康を守る営み" だそうです。美容であっても医療を名乗るなら適切なクスリを適切な患者さんに投与する、というのが「プロとしての医師の矜持」ではないかと思います。また今後、こういった例が増えて患者さんの健康被害が増えないためにも患者さんのほうも「適切な医療」を知る努力は少しだけ必要な気がします。そういったことを考えるのに本日(参議委員選挙投開票日)は良いきっかけになるかもしれませんね。

いろいろ書きましたがオンライン診療自体が悪いものでありません、念の為。当院でもやろうと思えばできるのですが、現時点ではなかなかそのための時間がとれないので本格的に導入するのはもう少しだけ先になると思います。

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