オンライン診療についての実態について耳にする機会があり、残念な医師が(少なくない数で)いることを知りました・・・。
COVID-19 の患者さんが日々診断されています。夏休みに入ったというお子さんも多いと思いますが、COVID はやはり "ただの風邪" とはいえないイロイロなリスクをはらんでいます。是非栄養をしっかり摂って睡眠時間などの生活リズムを崩さないように長丁場の休みを過ごして下さい。1 日 1 日を是非大切にして遊びも勉強もスポーツもバランスよく!
そんな COVID がもたらした生活の変化は数多くありますが、われわれの業界で最も重要なもののひとつが「オンライン診療」。感染リスクを減らす手段として注目され、スマホ一つで診察・処方が完結する仕組みは、まさに “医療のDX 代表” とされる利便性と言ってよいでしょう。
しかし先日、その利便性を最大限利用して「ろくな診察や医学的な評価もせずただただ薬を処方するだけのオンライン診療専属」みたいな医師が少なからずいる、というハナシをある(オンライン診療を "真面目に" 積極的に行っている)ドクターから聞く機会がありました。彼らはどのような診療を行っているのでしょう。
たとえば男性型脱毛症と呼ばれる AGA。著名人を広告塔に採用した TV CM やネット広告(「お医者さんに相談しよう!」とか言うやつ)のおかげで AGA という用語はすっかり定着しました。これらに対して処方されるお薬はフィナステリドやデュタステリドという、5 α 還元酵素阻害薬と呼ばれる前立腺肥大症の治療(特にデュタステリド)に用いられる、「男性ホルモンの作用をおさえる」薬剤です。前立腺肥大症、すなわち泌尿器科医が主に処方する治療薬ですので院長は大変詳しいです。これらの薬は男性の悩みに対して一定の効果を示す反面、副作用は決して無視できません。ときに重症化するのが薬剤性の肝機能障害。勤務医時代に(よくお酒が好きなひとが健診で異常を指摘される)AST, ALT が 400-500 を超えて黄疸が出現してから受診に至ったケースを経験しました。ここまで悪くなって受診することはまれですが、その方はオンライン診療でほとんど問診もないまま大量の薬を 2 年以上にわたり漫然と処方されていました。
院長がそのドクターから聞いた限りでは、"オンライン診療" とは名ばかりでは、と思わず言いたくなるような診察風景がネットの片隅で日常的に行われているようです。たとえば「診察は 1 分弱」「問診は 10 項目くらいクリックすればおわり」「オンライン診療による(リアル診察よりも)安全性低下の可能性に対する同意書記入」など。そもそも院長が当院で同意書をとるような処置をする場合、どんなに短く言っても 10 分(たぶんもっとしている気がしますが)以上の説明は行います。1 分も満たない診察で自らの免責を図る目的か知りませんが同意書を取得して患者を健康リスクにさらしてもなんとも思わない医師がいるとすると本当に悲しくなります。
本来であれば、処方前にしっかり問診をし、必要に応じて採血などの検査を行い、ときには画像診断なども行ってさまざまな医学的な評価をする——これが “診療” としての当然のプロセスでしょう。しかし実際には、「薄毛に悩んでます」「じゃあこれとこれがあってそれぞれ 〇〇円と△△円ですが、どっちがいいですか「〇〇円のほうで」「じゃあ出しときますね」的な 3 分に満たない診療がオンラインで横行していると。そして中には、医師と顔すら合わせず、チャットボットで完結するサービスもあるらしく、薬は郵送で届き、決済はクレジットカード。こうなるともはや "診療じゃなくて通販では?" とツッコミたくなるような状態です。
医療はどうしてもテマヒマがかかるもの。患者さんが「お腹が痛い」と言って来られたときも、「いつから起こって」「どのような痛みで」「痛み以外にどんな症状があって」「和らぐ/悪化する 姿勢や行動があるか」「1 から 10 まででどのくらいの痛みか」「時間経過による痛みの変動はどうか」みたいなことを引き出しながら少しずつ診断に近づき、さらに検査で診断を絞り込んで初めてお薬などを検討する。こういったやりとりは、AI が発達したとしてもなかなかできるものではない気がします。もちろん特徴的な徴候があって一発診断できるようなケースは AI のほうが早いかもしれませんが。
コスパを重視した医師たちが、医師として絶対に必要な上のような診療技術・手順を経験することなく年だけ重ねてしまった場合、将来おそらく AI と比較して「淘汰されてしまう」医師になっていくでしょう。その頃、院長は 70 歳とかになっていて、現在より頻繁に医療のお世話になっているかもしれませんが、そういった医師に診てもらうのはちょっと・・・と思ってしまいます。「医師だから必ずこうしなさい」とも言えませんし、彼らから「なにをやっても自由でしょ」、と言われたら返す言葉もありません。ただ、せっかく医師になったのですからやはり医師の本分を一度立ち止まって考え直してみるのも重要なのではないかと、中年医師は思うワケですよ。
まあとりあえず明日は選挙に行きたいと思います。
