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タコやイカは貝殻を捨てて今のカタチになったようですが、ドラッグで興奮したり、痛みを覚えていたり、恋をしたりとヒトと共通しているところもたくさんあって大変興味深い生態を持っていることを知りました。

[2026.02.20]

むか〜し TBS でやっていた番組で『クイズ 100 人に聞きました』というのがありました。1979 〜1992 年までの "ほぼ昭和" な時期の番組で、院長は小学生の頃よくみていましたが、結構人気があったと記憶しています。一般人 100 人に対してアンケートをとり、質問に対する答えの多い順に推測してクイズに答えるという独自形式のクイズ番組でした。司会が関口宏さんでしたね。そのなかで「宇宙人は何本足と思いますか?」という、いかにも昭和な問いに対して第一位は「8 本」でした。これはわれわれが "宇宙人" と言われるとなんとなくタコみたいな生物を想像するからです。むかしのギャグマンガでもよくそんな感じで描かれていましたし。

タコやイカ。かれらは海の中にいる異星人のような存在で、実際に世界のタコ・イカ研究をリードする組織がタコのゲノム(ある生物がもつすべての遺伝情報全体を示す用語)を解析したとき(2016 年)、そのプレスリリースは「エイリアンのゲノムを解読」というタイトルでした。そしてその論文を発表したのは OIST という組織で、日本語にすると "沖縄科学技術大学院大学" となります。そう。タコのゲノムを世界で初めて解析したのは日本の施設なのです。この組織は運営費を内閣府が負担するという、独特の機関で、 2005 年にノーベル生理学・医学賞受賞者のシドニー・ブレナー博士を理事長として設置された世界的な研究成果を多く出しています。ちなみに「タコゲノム解析論文」の著者らは、近縁の動物ながら地球上の他のすべての動物とは全く違って見える、という意味で「エイリアン」というコトバを使ったそうです。

たしかに骨がなく、色と形を自在に変え、吸盤だらけの腕で世界を触り、しかもかなり賢い。彼らを研究する生物学者たちは、もうずいぶん前から知っています。「彼らはただの軟体動物ではない」と。神経系は高度に発達し、問題解決能力があり、学習し、記憶し、状況に応じて戦略を変える。いわば “脳を持つ海の忍者みたいなヤツ”。この本はそのタコ・イカの生態から、われわれ人間が学べることを考えてみるのに格好の材料でした。

まずはタコ。彼らは瞬時に体色と皮膚の質感を変えます。色素胞という特殊な細胞を神経で直接コントロールし、岩や海藻に溶け込む。しかも、ただ “色を変える” だけではない。背景のパターンを解析し、質感まで再現する。これは単なる反射ではなく、視覚情報を処理した上での行動です。研究室では瓶のフタを開けたり、迷路を解いたりする姿が観察されています。環境に応じて行動を変え、失敗から学習する。つまり、タコは「試行錯誤」をするのです。ここから学べることは「環境は固定されていない。だからこそ、自分を柔軟に変えられる者が生き残る」。人間社会でも同じかもしれません。医療も経済もテクノロジーも、常に変化しています。環境に怒るより、環境に合わせて“色を変える”。ここで重要なのは、自分の芯を失わずにそれを行う、ということかもしれません。

一方、イカ。たとえばアオリイカ(Sepioteuthis lessoniana)は知性と美しさを兼ね備えた存在です。彼らも色を変えますが、タコと違い、群れを作ることが多い。状況に応じて協調し、ときに素早く散開する。そして特筆すべきは「ジェット推進」。水を一気に吐き出し、爆発的な加速を得る。普段は静かに漂い、危険が迫れば一瞬で移動する。これは何を意味するか。常に全力疾走する必要はない、ということかもしれません。エネルギーを温存し、必要なときだけ全開にする。これは医師の働き方にも通じます。持続可能性のない努力は、長期戦では消耗してしまいます。さらにイカは、体の大部分が “神経”。腕にも独立した神経回路があり、中央脳に依存しすぎない。これは分散型システムです。現代のインターネットや AI の設計思想にも似ています。中央集約だけでは脆弱で、局所局所の判断により全体の改善に寄与する。なんだか医療だけでなくビジネスにつながるようなハナシですね。

タコからは柔軟性を。イカからは瞬発力と協調を。両者からは、分散型の知性と環境適応の徹底を。そして何より、「環境に文句を言わず、環境を読み解く姿勢」を学ぶことができます。海の中で必要なのは、生き延びるための創意工夫だけ。そのために必要な知性とは、賢く見せることではなく、生き延びるために変わり続ける力を持ち、それを活用しながら生きていくこと。現代社会をサバイブするのにわれわれも見習うべき姿を学ぶことができました。

次に水族館でタコやイカを見るとき、ただの “かわった生き物” としてではなく、別の進化実験の成果として眺めてみると面白いですね。

ちなみに冒頭の「クイズ 100 人に聞きました」の元ネタは米国の "Family Feud" という番組で、こちらはなんとまだ続いています。なぜ院長がこの番組を知っているかというと、The Strokes という米国ロックバンドのシングル "Someday" の PV で出てくるからだったりします。軽妙でいい歌です。是非ご一聴を。

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