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ネガティブスタディの重要性

[2024.05.10]

医療業界の用語で「週末効果」というものがあります。これは「曜日が診療の質に影響する」、というもので、例えば週末(金曜日)手術を受けると合併症などが多くなる、という報告がこれまでに多数あります。

最近も広島大学消化器・移植外科の今岡 洸輝先生が「StageI~III 大腸がんの待機的手術を対象とした多施設共同後ろ向き解析を行った結果、手術を金曜日に受けた患者は金曜日以外に受けた患者より術後合併症の発生率が高く、術後入院期間も長い」という内容の論文を Journal of Surgical Research 誌(https://www.journalofsurgicalresearch.com/article/S0022-4804(24)00022-2/abstract)に発表されています。

こういうのを読むと今手術を控えているひとが「わたしの手術金曜日だ! 変更してもらいたい!」と思ってしまうかもしれませんが、一方で「曜日による影響はみられない」という論文もたくさんあります。

中国の Wang 先生らのグループは昨年の PLOS ONE という比較的有名なジャーナルで「腎移植において、合併症や治療成績について曜日の影響は特にみられない」という解析結果を出しています(https://journals.plos.org/plosone/article/authors?id=10.1371/journal.pone.0287447)。

医学に限らず、科学論文では「こんな新しい病気が発見されました!」とか「この疾患に新しい薬として◯◯が有効です!」という「新規性」「優越性」など、「受けやすい要素」がある論文が注目される傾向にあります。治療に関する研究であれば、別の治療法に比べて優れている、という結果を示したのがポジティブスタディ(positive sutdy)、差がないことを示したのが ネガティブスタディ(negative study)と呼ばれますが、注目されやすいのはポジティブスタディです。しかしながら、ネガティブスタディは新規性がないためにそもそも論文に載らない、ということがしばしばあります。すなわち論文を鵜呑みにするとポジティブスタディ寄りの考えに偏ってしまうわけですね。実際は数多くのネガティブスタディが日の目を見ずに葬られているわけですが。

以上から、少ない論文から結論を導くのは危険で、研究についてはなるべく多くの文献を集めて十分に吟味することが求められます。

皆さんも「◯◯博士が推奨!」とか「学会で注目!」とかいう宣伝には注意するようにしてください。

写真は本文と関係ありませんが、当院の庭で元気に泳いでいるメダカたちです。春になってだいぶ数が増えました。

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