ハロルド作石先生と音楽についてお話できたらきっと楽しいだろうな、と BECK を読んでいるといつも思います。
最近おそろしい YouTube チャンネルを見つけてしまいました。「フル☆アニメ TV」。なんとアニメ全話(『宇宙兄弟』とか!)がすべて無料で観られるのです。ぼーっと観たら一気に休日が終わってしまうおそれがあります。気をつけないと。『進撃の巨人』の素晴らしさを娘息子から教えられ、学会出席のため札幌に行ったにも関わらず、夫婦で移動中景色も観ずに一緒に観続け、サシャがガビに打たれて亡くなってしまうところで不覚にも涙するほど感動した昨年の 6 月と同じ様な「名作アニメ病」にかかってしまわないか心配です。
なぜならその「フル☆アニメ TV」。院長が大好きなロックバンドストーリー、ハロルド作石先生の『BECK』がアップされているからです。平凡な高校生、コユキが音楽と出会って本当にいろいろな経験を積んでいきつつもその誠実さや真面目さは失わず成長していく・・・。ハロルド作石先生の作品『ゴリラーマン』『ストッパー毒島』『7 人のシェイクスピア』など、どれも傑作ですが、とくにこの『BECK』は音楽が紙面から聴こえてくるようで、音楽好きにはたまらない漫画です。日本人バンドがワールドワイドで注目され、音楽シーンでサバイブしていく。これまで BABYMETAL や、古いところだと少年ナイフなど、世界で人気を博したグループはいくつもありますが、『BECK』の BECK (MCS) のように本当の意味で「音楽シーンのまん真ん中」に立った、という日本人バンドを院長は残念ながら知りません(アジカンなんか、プロモートの仕方によっては十分そうなりうるひとたちなのかなぁ、と思うのですが)。
そんななか、昨年日本人ロックデュオ、SAHAJi を知りました。初期のオアシスを彷彿とさせる、というかサウンドはまんまノエル + リアム(メンバーふたりは兄弟)、という感じですが、どことなく新しい雰囲気もあり、日本から遠く離れたロックの本場ともいえる英国で、彼らは日々その存在感を高めています。今回は、そんな SAHAJi にエールを送りつつ、「なぜそれがすごいことなのか」という点も含めて、簡単に述べてまいります。昨日に引き続き院長の個人的な趣味ですみません。
まず前提として、ロックという音楽ジャンルは、その歴史も文化もまさに「英語圏中心」。まあメジャーなのは英国と米国。特にイギリスは、The Beatles や The Rolling Stones に The WHO にはじまり Led Zeppelin から Queen や Pink Floyd、さらには昨年来日した oasis、blur、院長イチオシ The Stone Roses や Coldplay, Radiohead, The Libertines, Franz Ferdinand など数多くの伝説的バンドを生み出した国であり、音楽そのものだけでなく「ロックの価値観」や「かっこよさの基準」そのものを世界に発信してきました。言ってみれば、ロックにおける “本場中の本場” です。
そんな土地で、日本人がロックバンドとして活動し、しかも支持を得るというのは、簡単なことではありません。言語の壁はもちろんありますし、文化的な違いもあります。ロックは単なる音楽ではなく、背景にある歴史や社会、さらには反骨精神やアイデンティティといったものが色濃く反映されるジャンルです。その文脈を理解し、しかも「よそ者」として受け入れてもらうには、相当な覚悟と実力と運が必要になります。
ここで少し想像してみてください。例えば日本で、海外のミュージシャンが演歌で成功する、という状況を。発音や言葉のニュアンスだけでなく、日本人特有の情緒や間の取り方、文化的な背景まで理解しなければならない。その難しさは想像に難くありません。ロックにおける日本人の挑戦も、これに近いものがあります。
それでも SAHAJi は、英国で活動を続け、ライブを重ね、少しずつファンを増やしています。これは単なる「海外で頑張っている日本人」という話にとどまりません。むしろ、「音楽は国境を越える」という言葉を、地に足のついた形で証明している存在だと思います。彼らの音楽は上に少し述べましたが、クラシックなロックのエッセンスをしっかりと踏まえながらも、どこか現代的で、そして日本人らしい繊細さも感じさせます。この「両方を持っている」という点が重要なのかもしれません。完全に欧米の真似をしても評価されにくい一方で、日本的すぎても現地のリスナーには伝わりにくい。その絶妙なバランスの中で、自分たちの音を確立していく。これは大したものだと思います。
また、ロックのシーンでは「ライブ」が非常に重要です。音源だけでなく、ステージ上でどれだけ観客を引き込めるか、どれだけその場の空気を支配できるかが問われます。特に英国の観客は、非常にシビアと聞いております。気に入らなければ反応は薄く、良ければ一気に盛り上がる。そのなかで評価を得ているという事実は、彼らが確かな実力を持っている証拠と言えるでしょう。
彼らの存在が示しているのは、「ひとつの時代の変化」です。かつては、日本人が海外で音楽活動をするというのは、物理的にも心理的にも非常にハードルが高いものでした。しかし現在は、インターネットや SNS の普及により、音楽はよりダイレクトに世界へと届くようになっています。日本で良質な楽曲を作り続けている女性バンド、ハク。も YouTube などのチカラにより多くの海外ファンを獲得しています(コメント欄をみるとよ〜くわかります)。そうした時代の流れの中で、現在の若いミュージシャンが出てきて頑張っていることは、とても象徴的です(もちろん環境が整ったからといって、誰でも成功できるわけではなく、むしろ情報があふれる今だからこそ、「本物」が求められる時代。その中で彼らが注目されているということは、やはり音楽そのものの力、そして継続して活動してきた積み重ねがあってこそです)。
個人的には、こうした挑戦をしている日本人を見ると、自然と応援したくなります。それは単に「同じ日本人だから」という理由だけではなく、「難しい環境に身を置いてでも、自分の信じるものを貫こうとしている姿」に共感するからです。これは分野を問わず、多くの人にとって励みになるものではないでしょうか。ロックの世界で成功するというのは、決して派手な夢物語ではなく、地道な努力の積み重ねです。小さなライブハウスでの演奏、観客が数人しかいない日、思うようにいかない出来事。それらをひとつひとつ乗り越えながら、少しずつ前に進んでいく。その過程こそが、彼らの音楽に深みを与えているのだと思います。
医学の世界は音楽と異なり、「人気・運・実力」よりも「科学的、特に統計学的にこれまでの考え方・診断法・治療選択肢よりも優れているか、もしくは同等の効果を安全・安価で提供できるか」あたりが新しい診療方針についての評価軸になります。院長は国粋主義者ではありませんが、やはり自分でシンパシーを感じられる最も最大の範囲は「国」という気がします(「アジア」だと広すぎ、「神奈川県」だと狭すぎる)。音楽でも医療でも、日本人がその良さを失うことなく世界に伍していけるように願っています(医療については自分も微力ながらできることをやっていきたいと、小さなクリニックで働く身ですが、思い続けております)。
