ヒトも動物ですから直感は大事ですが、臨床推論を行うときは「直感を意識的に分析する」という、絶妙なバランスが求められます。
よくヒトはイヌ派・ネコ派に分けられる、といいますが院長は圧倒的にイヌ派です。あの「ご主人を誰よりも好き♡」な表情がたまりません(ネコを飼ったことがないので実際のところはわかりませんが、帰宅して玄関開けたときに「おかえり〜♪」みたいな感じで駆け寄ってくることはあまりないと聞いています。ただ、いつかネコも是非飼ってみたいですが)。現在実家におりますが、ウチのわんこ柴犬のマル。もう 14 歳になりますので「駆け寄ってくる」と言っても 4-5 年前に比べてそのスピードはだいぶ落ちました。長生きしてほしい。ちなみに犬種にもよりますが、人間の年齢に換算すると柴犬のような小・中型犬は生後 2 年で 24 歳相当になり、その後 1 年で 4 歳ずつ年をとるといわれています。となるとマルはヒト換算で 72 歳。円熟。そりゃあ全力で駆け寄ってこないわけです。目もやや白内障気味ですし。一方、秦野を散歩していると多い気がする大型犬は生後 1 年で 12 歳、その後 1 年に 7 歳ずつ年をとるといわれています。大きなわんこが赤ちゃんとじゃれている動画などを観ると癒やされますね。
獣医学の研究によると、イヌでもネコでも、チンパンジーのようなサルでも、「賢い」と言われる種ですが、多くの部分は "直感" で判断しているそうです。たしかにマルがウチの娘と会うときに見せるようなあの「尻尾フリフリ」は考えて行っているとはとても考えづらい。直感で「あ!大好きな ◯◯ ちゃん来た!」みたいになっているのがよくわかります。
この "直感"。昨今「エビデンスに基づく医療」が叫ばれ、様々な知見やデータに裏付けされた診療がよい、とされる風潮がありますが、来院された患者さんの症状からわれわれ医師が診断を考えるとき、この直感を相当使っている、と言われています。院長が尊敬する獨協医科大学総合診療科の 志水太郎 先生ほか による『医学界新聞』2012 年 2 月 13 日の記事によると、医師が "診断" を行うプロセスは「直感的思考(=System 1)」と「分析的思考(=System 2)」2 つの要素から成り、われわれはこの 2 つを無意識のうちに使い分けているそうです(下図)。
ただ、診断技術を向上させるには、これらを「無意識」に振り回すのではなく、「意識的に使い分ける」ことが大切のようです。特に症状や検査所見から「これは ◯◯ の疾患で間違いないだろう」と思われるようなときほど、こういったことを意識することが求められます。たとえば「50 歳男性、長距離ドライバーをしており急にトイレに行けないことが多いため水分を日中は 500 cc 程度に制限しており、仕事が終わって毎晩帰宅後にビールを 1 リットル以上飲む生活を 5 年以上続けている。3 時間前から急に発症した左腰背部痛と血尿を訴えて来院した」という患者さんがいたとしましょう。おそらく医療者でなくても「尿管結石・・・かな?」と直感的思考(System 1)ができるケースかと思います。ただし、このときに System 2 を念頭におき、「左腰痛と血尿、という症状を大酒家の中年男性が訴えている。高血圧とか糖尿病とか生活習慣病を併存していたら、もしかしたら超緊急の大動脈解離もあるかも・・・」と、症状などから分析するのが分析的思考(System 2)です。
こういったことを考える「臨床推論」について、本日「総合医育成プログラム」のワークショップで勉強する機会を得ました。特に上記のような「症状などにより、はじめから疾患をある程度絞れるケース」ではなく「そもそも鑑別に挙げるような診断名が思い浮かびづらいケース」の患者さんが来院された場合は、下記のように考えるのがよさそう、と分かったのが大きな収穫でした。
◯ Mnemonics(覚えやすい語呂合わせなどで問診や検査を進める。医療業界はこういう語呂合わせがかなりたくさんあります。興味がある方は「問診における OPQRST」などを検索してみてください)
◯ 診断シェーマ(痛みなら部位で分けて、さらにその部位それぞれの疾患でわけて・・・のように段階的に診断を詰めていくやり方例えば https://clinicalproblemsolving.com/ など)
◯ 診断支援システム(主に米国で使われている様々な診断ツール、https://www.isabelhealthcare.com/ など)
◯ 医療系の AI ツール(https://www.openevidence.com/ など。結構優秀)
後半の支援システムや AI は、まだまだ発展途上ですが、今後はリアルなドクターであるわれわれが、いかにこういったツールを上手く使いこなせるかが、患者さんに負担が少なく、コストも大きくなく、さらに医療資源も過剰に使いすぎないような診断までの道筋を照らすためのカギと思います。
日々進歩する世の中。医療もその例外ではもちろんありません。何歳になってもなるべくこういった新しいものを柔軟に取り入れられるやわらかいアタマでいたい院長でした。
