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ミッドライフ・クライシスでも LOH 症候群でもまよったら "メンズヘルス科"、すなわち泌尿器科にいらしてください。

[2025.07.29]

昨日紹介した LOH 症候群。世間的には「男性更年期障害」とよばれる様々な症状で特徴づけられる病態です。そして LOH 症候群と関連の深い "中年の危機"。これは "おばさんになった魔女の宅急便(中年のキキ)"・・・ではなく、男女ともに 40〜50 代で訪れることが多い、「人生の折り返し地点を意識し、自身の生き方や価値観を見つめ直すことで、不安や焦燥感を抱く心理状態」、いわゆる "ミッドライフ・クライシス" です。

ミッドライフ・クライシスをおさらいしておきましょう。これは 1960 年代に精神医学者のあいだで提唱されはじめ、かつては一部の特権階級に見られる特殊な現象と思われていましたが、現代ではむしろ “誰にでも起こりうる病態” と考えられています。

ミッドライフ・クライシスの典型的な症状としては:

  • これまでのキャリアに対する後悔や今後の地位に対する諦念

  • 結婚生活への疑問や倦怠感

  • 子どもの独立や親の介護といった家族の変化へのストレス

  • 老化に対する恐れ

  • 突然の趣味や浪費への傾倒(例:高級車購入、急な転職、浮気など)

一見すると「ただのわがまま」「中年の迷走」とも取られがちですが、本人にとっては極めて深刻な内面の危機です。

 

一方で、最近泌尿器科やメンズヘルス医学的に注目されているのが "LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism)"、いわゆる “男性更年期障害” 。女性の更年期障害はよく知られていますが、実は男性にも更年期があります。その主な原因は、男性ホルモン「テストステロン」の分泌が加齢とともに減少すること。

テストステロンが低下すると、次のような症状が出現します。

  • 意欲・集中力の低下

  • 抑うつ傾向

  • 性欲の減退

  • 勃起力の低下

  • 筋力低下、疲労感

  • 睡眠障害

  • 骨密度の低下

これらは一見すると「ただの老化現象」に見えるかもしれませんが、性ホルモンのバランス不均衡によって引き起こされている症状であれば、医学的に治療可能なケースが少なからずあります。

では、ミッドライフ・クライシスとLOH症候群は別々のものなのでしょうか?実は、この二つには共通する症状が多く、互いに影響しあっていると考えられます。

症状・傾向 ミッドライフ・クライシス LOH症候群
意欲の低下
抑うつ気分
性欲・性機能の衰え △(副次的に生じることも)
生活に対する虚無感・焦燥感 △(結果として出現)
身体の不調(疲労感、筋力低下など) △(ストレス性)

つまり、「人生の意味や今後の方向性に悩むミッドライフ・クライシス」の背景に、実は「テストステロンの低下=LOH症候群」が潜んでいることがあります。特に男性にとってテストステロンは、ただの性ホルモンではなく、「闘争心」「達成欲」「リーダーシップ」といった “自分らしく生きるための推進力” に深く関わるホルモンです。これが減ることで、心のエネルギーそのものが枯渇していくような感覚になるわけです。

LOH 症候群に対しては、血中の遊離テストステロン値を測定し、必要に応じて「男性ホルモン補充療法(TRT)」を行います。うまくマネジメントすれば、意欲や性機能の改善、筋力の回復など、明らかな効果が期待できます。

一方、ミッドライフ・クライシスに対しては、心理カウンセリングやライフコーチングなど、精神面のサポートが効果的です。認知行動療法や内省を通じて「人生後半の目的」や「自分自身との付き合い方」を再構築するプロセスが求められます。

重要なのは、どちらも “恥ずかしいことではない” という認識。日本ではまだ、「更年期=女性のもの」「心の問題=甘え」といった偏見が根強くありますが、海外、特に欧米では男性のミッドライフ・ケアやホルモン治療はもっと一般的です。

ミッドライフ・クライシスや LOH 症候群は、たしかに「危機」かもしれません。しかし、それは同時に「人生を再構築するチャンス」でもあります。これまで社会的責任や家庭の役割に追われてきた自分から、“本当の自分”へと立ち返る機会。「何を手に入れるか」から「何を大切にしたいか」へと、価値観の転換を図る時期です。テストステロンの低下は、ある意味で「闘うだけの人生」に終わりを告げるサインかもしれません。しかしそれは、「味わう人生」「与える人生」、すなわち「新しい自分に出会う人生」の始まりいえるのかもしれません。

中年男性にとって、ミッドライフ・クライシスや LOH 症候群は決して特殊な状態ではありません。体と心の両面からアプローチし、必要なら医療やカウンセリングの助けを借りること。それは「弱さ」ではなく、「新しい自分への第一歩」です。

もしあなたや大切な人が、「最近なんだか元気が出ない」と感じているなら、ぜひ一度、当院をはじめ、泌尿器科やメンズヘルスに詳しい心療内科などを受診してみてください。人生の後半戦は、まだまだ長い。そして、それは自分らしく生きるための “最も自由なステージ” になるかもしれません。われわれはそのステージに上がるためのサポートは惜しみません。

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