プロ野球は交流戦真っ只中ですね。院長が応援している阪神は毎年この交流戦で停滞するイメージがあります。そもそも 2005 年(岡田阪神が優勝した年ですね)に交流戦が始まって以来、昨年までの通算でパ・リーグの 1369 勝 1217 敗 78 分けの 5 割 3 分。18 試合なので、セ・リーグ球団である阪神の勝率 .470 で単純計算すると、まあ 8 勝 10 敗くらいになるわけです。昨年が 8 勝 10 敗、一昨年が 7 勝 11 敗、2 年前が 7 勝 10 敗 1 分、そして今年がこれまで 4 勝 6 敗と。かなりキレイに「予測値」と同じ "借金 2" のペースで戦っているので先週も西武ライオンズに連敗しましたが、あまり気にしないでいいように思います。
来年からセ・リーグも DH 制になる、ということでセ・パの実力差がなくなって拮抗していくといいですね。もっといいのは阪神だけ勝ち抜けていくことですが来年 佐藤輝明 選手や 才木浩人 投手は NPB にいてくれるのか・・・。
そもそもこの交流戦、"普段は相まみえることのないライバルたちがリーグの威信をかけて激突する" ということで 20 年前に始まった頃には「夢の対決」といわれていました。しかし近年はそういう雰囲気ではなくなり、「イベントとして行われるものの、結局リーグ開始時と終了時でセ・リーグは状況があまり変わらない」みたいな感じになってしまうこともあるようになってきました。象徴的だったのが 2025 年。最終順位の 1 位から 6 位までをパ・リーグ 6 球団が独占、セ・リーグ勢は揃って 7 位以下に沈むという結果でした。リーグ首位を走っていたわれらが阪神も 8 勝 10 敗の 8 位。セ・リーグ最上位の広島が 7 位(でやっと勝率 5 割)という惨状。
院長が子どもの頃は「人気のセ、実力のパ」と言われていましたが、これはあくまでキャッチコピーみたいなもので、実際は実力が拮抗していることが前提でした。そんなコトバが今や「全くそのとおり!」な現状が明らかになりつつあり、両リーグの間には残酷なまでの実力差が横たわっているようにもみえます。なぜこうなったのでしょうか。そこには、「セ・リーグの構造的な欠陥」があるようにみえます。
2025 年の交流戦は、もはや「実力伯仲」という言葉が虚しく響くほどに、両リーグの埋めがたい溝が浮き彫りになりました。パ・リーグ 63 勝に対してセ・リーグ 43 勝。この勝ち星の差は、一時的な不調では説明がつかない圧倒的な戦力差の現れといってよいように思います。その好例が 2025 年 6 月 15 日。パ・リーグ 6 球団が全勝を飾り、同 17 日にはビジターであったパ・リーグ 5 球団が敵地で勝利を収めました。さらに日本ハムが広島を相手に最大 7 点差をひっくり返した大逆転劇は、パ・リーグ打線の破壊力がセ・リーグの投手陣を圧倒していることの象徴のようにもみえました。この格差は交流戦に限った話ではなく、過去 10 年のオープン戦や日本シリーズにおいても、パ・リーグは 6 割近い勝率を誇っています。つまり、看板を背負って戦うあらゆる局面で、セ・リーグは構造的な「弱者」に成り下がっている・・・厳しい言い方をすればそんな状況になっています。
院長が感じるのは特に「投手力の差」です。2025 年の交流戦防御率ランキングを見ると、1 位のソフトバンク・大関、同じく 0.78 という驚異的な数字を残したソフトバンク・モイネロ、さらに有原、西武の渡辺と、上位 5 人中 4 人をパ・リーグ勢が独占していました。セ・リーグで唯一トップ 5 に食い込んだのは、中日の松葉のみでした。
この差を生んでいる原因としてよく言われるのが "DH(指名打者)制の有無による投球への特化環境" です。パ・リーグの投手は、専門外である打撃練習やバント練習に時間を割く必要がなく、そのすべてのリソースを、150 km/hを超える剛速球と切れ味鋭い変化球の磨き上げに投入できます。一方でセ・リーグの投手は、打席に立つことで肉体的な疲労を蓄積し、死球や走塁による負傷リスク、さらには相手投手との駆け引きという精神的コストまで負わないといけません。この「身体的負担の非対称性」が長年積み重なった結果、パ・リーグには圧倒的な厚みを誇るエース量産体制が構築され、セ・リーグはその進化のスピードに置き去りにされている、というのが院長が知るかぎり、有識者の考察として最も理解しやすいものです。
この DH 制については、チーム編成の思想そのものにも、決定的な「質の差異」を生みます。パ・リーグのチームは「9 人の野手+1 人の投手」ではなく、最初から「10 人のスペシャリスト」を揃えて戦うという思想で組織しようとします。守備に課題があっても打撃に特出した才能を持つ若手をDH で育成し、ベテランには守備の負担を減らして打撃に専念させる。この柔軟な枠が、リーグ全体の選手層を劇的に厚くします。西武の仁志敏久コーチ(現役時代は阪神が何度も打たれたので院長のなかでは苦い思い出がたくさんある名選手)が「DH のために常に選手を用意しているパに対し、セは 1 枚駒が不足している側面がある」と指摘するように、セ・リーグは交流戦のパ・リーグ主催試合において、代打の切り札や控え選手を「急造のDH」として起用せざるを得ません。かつてヤクルトの真中元監督が、守備の不得意な選手を消去法で DH に回していたと明かしたように、DH を「打線を最大化する戦略的ピース」として使いこなすパ・リーグとの間には、戦術的なリテラシーの差が厳然として存在します。昨年セ・リーグ覇者・阪神の藤川監督も、交流戦後にパ・リーグの若手層の厚さを前に「現状は力負け」と認めていましたが、このコトバが現実でしょう。
セ・リーグには来年から DH 制が導入されます。この導入に反対する方がときどき言うのが「投手が打つ意外性のドラマ」です。かつてジャイアンツのエース菅野智之が放った本塁打やだいぶ昔ですが 2003 年阪神のローテーション一角を担って打ちまくったトレイ・ムーア(NPB 105 打数で 31 安打 11 打点、打率 .295 と野手で雇いたいくらいの成績)のような選手は確かに面白くて魅力的です。しかしながら冷静に考えてみればそれは統計的な「例外」に過ぎません。データによれば、30 年前には .150 程度あったセ・リーグ投手の打率は、現在 .100 まで低下しています。投手のなかですら「先発」「中継ぎ」「セットアッパー」「抑え」と分業化が進んでいる現代野球において、練習時間を削られた投手にとって打席はもはや「無気力に三振を献上するだけの場」と化してしまっているようにファンの目には感じる選手も目につきます(誰とは言いませんが・・・)。この状況下において、パ・リーグの球団が揃えた 10 人のスペシャリスト軍団と対等に渡り合おうとすること自体、戦略的合理性が欠けている、といってよいように思います。
世界に目を向ければ、野球のスタンダードは完全に DH 制へとシフトしています。MLB では、最後まで抵抗を続けていたナショナル・リーグが 2022 年に DH 制を導入。かつてのインターリーグでも、DH 制のあるア・リーグがナ・リーグを 14 年連続で圧倒していた歴史があるが、これは現在の日本プロ野球の状況と似ていますね。韓国、台湾のプロ野球はもちろん、日本の大学野球界も 2026 年からの導入を決め、高校野球ですら導入の議論が活発化しています。セ・リーグだけが「伝統」や「采配の妙」といった曖昧な価値観に固執し、世界標準から乖離していく現状は、まさに「野球界のガラパゴス化」とも言われていました。来年から DH 制がセ・リーグに導入されますが、このことは好意的に受け入れられるべき改革ではないでしょうか。
・・・しかしこう考えると改めて大谷翔平さんの怪物っぷりがわかりますね。2026 年 6 月 6 日時点で 10 試合登板して 6 勝、防御率 0.74(!)、打っては打率 .296、ホームラン 10 本、打点 33、OPS .925(.900 以上でチームのクリーンナップを任せられるレベルと言われます)。とにかく大谷選手には長く現役を送ってほしいと心から祈っているイチ阪神ファンでした。
(医療と全く関係ないハナシですみません)