伝えること、教えることは自分の大きな学びにつながります。
"人生 100 年" と言われてしばらく経ちますね。実際現在日本には 2025 年 9 月 1 日現在で 100 歳以上の方が 9 万 9763 名いらっしゃいます。すごい数。もしその言葉を額面通り受け取れば、院長は現在 48 歳ですから「人生道半ば」ということになります。喜んでいいのか悪いのか・・・。
医師に限らず、人生は死ぬまで勉強。これは尊敬する富佐子おばあちゃんがいつも自分に言ってくれた言葉です。これも幸いというかなんというか、医学・医療はひとひとりが一生学び続けてもわからないことだらけの分野です。毎日読んでも読んでも、いくらでも新書が出版されるように、この分野では学んでも学んでもいくらでも新しい知見が出てきます。しかも、医学は学問といっても精神医学や外科技術など、簡単に "白黒つけられない" アートな分野もあり、そのような「果てしないサイエンス・アート」の世界に飛び込むことに決めた 18 歳の自分と、その進路を決めてくれた『ブラック・ジャック』の生みの親である手塚治虫先生に(日々の診療で進歩を感じることができる幸福を享受できるという意味で)感謝したいです。
さて、学ぶことが多い医師。しかしながら開業医になると関わるドクターが勤務医時代に比べて極端に減ります。つい 3 年前までは、まず朝登院すると自分の部下としてついてくれる 2〜3 名のドクターと病棟回診、さらにはそのあと 3-4 名で手術、このとき麻酔科の先生や他の先生などと話しつつ手技を進め、終わったあとは画像診断や病理診断の先生とディスカッションして午後は他科の先生から患者さんの相談を受けたりお願いしたり。そして夕方は自分の上司である診療科の部長に 1 日の経過などを報告して医局の自分の席へ。隣りにいる呼吸器外科の先生方とスモールチャットをして 17:30 頃に部下の先生と夕方の回診して業務終了、ということで毎日かなり多くの先生方と仕事をしていました。これに対して開業医というと。基本的にひとり。尾崎放哉の俳句みたいに。
そんな孤独にずっと身を任せていると、ひとりよがりの医療になってしまったり、相談できないことで患者さんに誤った診療をしてしまうおそれがあります。そんなときにありがたいのがいろいろな分野の専門を有する先生方との絆。現在院長は同じ大学出身の腎臓内科の先生、同時期に がん研有明病院 でレジデントとして切磋琢磨した消化器内科の先生、近隣でたくさんの患者さんについて血糖コントロールや生活指導などをされている糖尿病内分泌代謝内科の先生など、なにか患者さんのことで迷うことがあると、すぐに相談させていただける心強いドクターがおり、日々助けていただいております(もちろん、自分も診療について聞かれて答えることもあるので持ちつ持たれつですよ)。こういった "輪" はありがたいですね。
そして千葉県で脳神経外科・漢方で開業されている先生が主宰する漢方と医療経営に関するグループにも参加させていただいており、日々こういった仲間の先生方のおかげでなんとか診療を続けております。とくにこのグループは経営や院長の姿勢・振る舞い方などについても相談できる雰囲気があります。開業医の孤独は、他の職種ではなかなか理解されにくいもの。スタッフには言いづらい悩み、患者さんにはもちろん話せない苦労や医療を枠をこえた心配事などもあります。そのグループでは、開業医という共通の立場の先生方が「うちも同じようなことがあったよ」と経験を共有してくれます。こうした小さな “あるある” の共有が、心の重荷を軽くしてくれます。
また、なにか聞かれたときは積極的にその質問に対応すると、「改めて自分の声で説明してみる」ことでいつも自分が行っているルーティンを見直すきっかけになったり、自分の言葉で自分のモチベアップにつながったりと、まさに「教えることは学ぶこと」的な成長があります。院長は昔、中学とか高校時代から「ひとに教える」ことが好きだった記憶がありますが、それは「教えれば教えるほど自分のためになる」ということをなんとなく知っていたからかもしれません。
そして、外来診療においても「患者さんに伝える」というのは学生時代からやっている「教える」ことと通じております。「患者さんに伝えるからには自分の知識を可能なかぎりアップデートしておかなければならない」「スタッフが見ている以上、きっちりと薬や検査についての知識はアウトプットできるようにしておかなければならない」という緊張感が、48 歳という、若いとは言えない年齢の脳をフル回転させるための大切な要素なのだと思います。
何歳まで元気に外来診療をできるかわかりませんが、外来に出る以上、常に勉強し続け、わからないことは見栄を張ることなく「わかりません」と伝え、その分足りない部分は可能な限り早く勉強したりエキスパートに聞いて補い、日々「あぁ、今日は ◯ と △ と ◇ と・・・っていう新しいことを(少なくとも日々 5 個以上)学んだなぁ」と確認しながら「残り半分(!)の人生」を駆けていきたいと思っております。
