健診結果の結果をみたときに「飲み会の場などでよく話題に出てくるあの臓器」についての異常値を指摘されたら是非一度医療機関を受診してください。
当院には健康診断で異常を指摘されて来院される患者さんが多くいらっしゃいます。院長の専門性から尿検査の異常や高血圧、前立腺がん腫瘍マーカー(PSA)上昇などが多いのですが、最近は血糖値上昇や高尿酸血症、高コレステロール血症などいろいろな方が来院してくださいます。
そのなかで
医師:「○○ さん、健康診断の結果が届きました。血液検査や腹部エコーの所見を拝見しましたが、いくつか気になる点がありました。」
患者:「えっ、気になる点ですか?どんなことですか?」
医師:「はい。エコー検査で肝臓に脂肪が沈着している可能性が指摘されています。“脂肪肝” という言葉を聞いたことがあるでしょうか。その脂肪肝を疑う所見です。」
患者:「脂肪肝って、聞いたことありますけど… 最近太っちゃったからなぁ。なんかコワいことが起こるような状態なんでしょうか?」
医師:「多くの場合、症状は出ませんが、放置すると肝炎や線維化、さらには肝硬変につながることがあります。また、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病とも深い関係があります。」
患者:「そうなんですね…。原因はやっぱりお酒ですか?」
医師:「お酒が原因の場合もありますが、○○さんの場合は血液検査で中性脂肪や肝機能の数値が少し高めで、体重も増えてきているようなので、“非アルコール性脂肪性肝疾患” という病態の可能性も十分あると考えています。」
患者:「なるほど…。治療って必要なんですか?」
医師:「まずは健康診断の項目にはない少し細かい検査も一度はしておいたほうがよいでしょう。そのほうがわれわれももう少ししっかりとした診断名を伝えられて安心ですし。現時点ではいきなり薬ではなく、まず生活習慣の改善、となると思います。いわゆる "よくある脂肪肝" であれば食事の見直しや運動で体重を減らすと、脂肪肝はかなり改善していきますので。」
患者:「どのくらい体重を落とせばいいんでしょうか?」
医師:「今の体重の 5〜10% を目安に半年から 1 年かけて減らすのが無理がなくていいんじゃないでしょうか。無理のないペースで取り組んでいきましょう。」
患者:「わかりました…。お酒はどうしたら?」
医師:「一般的には飲酒量が多いと脂肪肝が悪化しますので、無理のない範囲で減らすか、休肝日を週 2-3 日作ってみてはいかがでしょう。」
患者:「はい、気をつけます。まずは一度しっかり検査してください。」
医師:「そうですね。次回の検診で改善しているか確認していきましょう。生活習慣で改善しましょう、となった場合はそれほど頻繁な外来受診は不要ですが、今後自分との付き合いは長くなるので今後いろいろとハナシを聞かせてください。」
こういった会話はしばしば診察室でなされる流れかと思います。
こういった肝機能が低下した方が来院した場合、病態学的にいえば "慢性肝障害" ですが、頻度が多いものを順に、10 万人あたりの数で挙げていくと
- 脂肪肝 30000 人(成人の 20% 以上、という報告もあるくらいありふれた病態)
- アルコール性肝障害 2000 人
- C 型肝炎 300 人
- B 型肝炎(肝炎ウイルスは全体としては少しずつ減少傾向となっています)60 人
- 原発性胆汁性胆管炎(難病指定)34 人
のようになっており、ほとんどの方が脂肪肝とアルコール性ですので上記会話のような流れ(体重管理とアルコール)になるわけです。
では実際にどのように肝機能に関する検査を進めていくのでしょうか。どんな疾患もそうですが、最初から侵襲的(体に負担がかかるタイプ)な検査は必要ではなく、まずは採血とエコーです。そこで検査が陽性(異常あり)である場合は肝臓専門医への紹介となります。
明日は少し各論について簡単に述べてみたいと思います。
余談ですが、勤務医をしているときは腎がんや後腹膜腫瘍手術症例などで肝臓を合併切除する際、術後肝臓組織が(トカゲのシッポのように)どんどん再生することに生命の神秘を感じましたね〜(*^_^*)
