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医師歴 25 年目になってもいまだに日々勉強しないとついていけないくらい広く深い学問に "なりわい" として関われることに感謝して本日も楽しく動画教材を繰り返し視聴しています。

[2026.02.07]

本日、雪の中診療に来て下った患者さん、ありがとうございました。先ほど雪の中を散歩してきましたが、幸い積もるほどではなく "みぞれ" 状態でしたが、足元が悪く寒いなかの来院は大変だったと思います。しかも今週は 2 月 1 日が院長の誕生日であることを覚えていてくれた数人の患者さんからさまざまな贈り物をいただきました。こちらについても本当にありがとうございました。ありがたく頂戴いたします。特に秦野ならではの穫れたての野菜、や手作りスイーツなど、手間がかかるものを贈って下さった皆様、改めてお礼を申し上げます。

さて、外来診療をしていると、患者さんから「先生はどうしてそんなにいろいろ知っているんですか?」と聞かれることがあります。ソクラテスではないが、院長は「自分はまだまだ全然知らない」と本気で思っているので、こういうことを言われると少し照れながらこんなふうに答えています。「実は、そんなに “たくさん” 知っているわけではないんです。ただ、開業医になって勤務医時代よりもひとうのことを少し深く考えるクセがついたようで、そのおかげかもしれません」。

われわれは、学校教育の影響もあってか、
「知識はたくさん覚えるもの」
「広く浅くいろいろなことを知っているのがスゴい」
と思いがちです。一時期流行っていた(まだあるのか?)クイズ番組『東大王』とかはひとつの問題に対して「いかに自分の "知識のひきだし" を短時間で探索し、適切な答えを引っ張り出してくるか」を競いあっていましたが、そういった "ファスト教養" みたいなものが "優秀" "頭いい" と言われるような風潮です(このあたりの心理については是非『君のクイズ』(小川哲さんの小説)を読んでみて下さい。読むヒトを少し選ぶ作品のように感じますが、少なくともある程度受験勉強などの一発試験を経験したひとなら登場するクイズプレーヤーの気持ちがわかるハズ)。でも、実際の医療現場では、少し違います。

たとえば「高血圧」という病気。高血圧は一応臨床医学の「循環器科学」分野に含まれる一疾患群です。しかしながら高血圧を理解しようとすると、自然と

・血管の構造(組織学)
・心臓の働き(解剖学・生理学)
・腎臓の役割(生理学・体液制御学)
・ホルモン(内分泌代謝学)
・生活習慣(公衆衛生学・心理学・精神医学・社会心理学)

といった、関連するさまざまな分野 に触れざるを得なくなります。ひとつを掘り下げると、周囲の知識が「にじむように」ついてくる。知識は点ではなく、小さな円 として広がっていくのです。

ここで大切なのは、「全部を完璧に理解しようとしない」ということかもしれません。医学の世界は、とても広く、そして日々更新されています。最初から完璧を目指すと、ほぼ確実に挫折します。

でも、

「なぜこの薬はこの時間に飲むんだろう?」
「どうしてこの症状は朝に強いんだろう?」

こうした 素朴な疑問 を一つずつ大切にすると、不思議なことが起こります。

そして、机上や動画教材などで知り得た内容、内科の先生方と話した内容の中に、「そういえば、あの患者さんも似た症状だったな」・「これは別の病気にも関係していそうだな」という “現場で得られた経験” が加わると、高血圧という疾患の "輪郭" が見えてくるような気がします。

医学部受験や国家試験のイメージから、「医学=暗記」と思われがちですが、実臨床はだいぶ異なります。もちろん、最低限の知識は必要ですが、それ以上に大切なのは

・なぜそうなるのか
・どこまで分かっていて、どこから分かっていないのか
・例外はどんなときか

を考える姿勢、さらには「自分が診ている患者さんは診療のときだけ。その時間が 1 ヶ月に 5 分としたら、残り(1 ヶ月は  43200  分なので)43195 分は自分には知り得ない患者さんの生活があり、問診で疾患に関連することをいかに効率よく(そして患者さんに不快な思いをさせることなく)引き出せるか。この姿勢が、ひとつのことを掘り下げる過程で、特に開業医になって生活に身近な疾患を数多く診るようになってから、ありがたいことに少しずつ身についている実感を得ています。

われわれ医師が臨床講義で必ず習う内科学・診断学の権威・19-20 世紀に活躍したカナダ人医師、ウィリアム・オスラー先生の名言に

"Listen to your patient, he is telling you the diagnosis."(患者の言葉に耳を傾けよ。そうすればおのずと診断はみえてくる)

があります。

オスラー先生がいうように、診断に至るまで時間がかかるときほど、"その最初の訴え" に立ち返ってあとで振り返ると「あぁ、最初からあの患者さんはこの診断に至るヒントをなげかけてくれていたんだ・・・」と気づくことが本当によくあります。医学教育では、「これが何の役に立つのか?」といった類の議論は存在せず、原則として人体と疾患に関するあらゆる事項について学びます。しかしながら実際に経験する疾患はその中のごく一部。医師としてのキャリアを重ねるにつれ、学んできた多くの中で実際に経験した疾患がいかに少なく、錆びついた知識がいかに多いことか、愕然とすることがあります(院長はがんの専門医ですが、疾患としては有名な "おへそ" への転移である「シスターメアリージョセフ結節」を 24 年の臨床でまだ診たことがなかったりしますが、そういったことは山程ある)。にもかかわらず、医師は専門職として、キャリアの続く限り知識のアップデートが必要で、日の目をみるかわからない医学知識を増やす努力が(たいていの医師は死ぬまで)続きます。

こういった努力を "楽しく" 続けていくためには、知識を無理に積み上げる、というスタイルではダメで、日常の疑問や経験の中で、少しずつ染み込ませていくしかありません。もう院長も 49 歳ですから「気合で暗記だー!!」は通じないのです。

ひとつのことを、ほんの少しだけ深く考える。すると、その周りにある世界が、静かに広がっていく。医学に限らずおそらくすべての科学はそうやって理解していくものだと最近しみじみ思うのです。

これからも忙しいながらも外来で「なぜだろう?」という疑問を大切にし、ときに仲間に尋ね、ときに患者さんとも一緒に考えていけるような臨床医でいられればと愚考しております。

(本日秦野の北地区は結構雪が振りました。夕食を久しぶりにお会いする先生と横浜で、と予定していたのですが、当院周囲の状況から断腸の思いで延期しました。スタッドレスタイヤ買っておかないとダメですね)

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