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名作古典の冒頭文に出てくる神様をクリニックすぐそばの何気ない細道で見つけて歴史を感じる。

[2026.01.20]

月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人なり・・・

有名な『おくのほそ道』冒頭です。『源氏物語』、『徒然草』、『平家物語』など、名作古典の冒頭は読むだけで日本人誰しもが有する心の琴線に触れられるような、素晴らしい調子の名文がならびますね。院長は『方丈記』のそれが一番好きですが。

一方、俳句として「一番好き」なのが、小学生時代に松尾芭蕉の伝記漫画を読んだときに出てきた

 旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る(たびにやんで ゆめはかれのを かけめぐる)

です。この俳句、有名ですね。芭蕉の辞世の句とされているものです。一説には「辞世句」ではなく病床にいるときに(まだまだ長生きするつもりで)詠んだとも言われますが、いずれにしても「芭蕉さんらしい俳句」と、素人ながらに思います。俳句という世界一短い詩、を作り出した日本の先人たちにあらためて敬意を表したい。皆さん、センス抜群ですねと。

ところで『おくのほそ道』は冒頭からこんなふうに続きます。

舟の上に生涯をうかべ馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして 、旅を栖とす。古人も多く旅に死せるあり。予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊の 思ひやまず、海浜にさすらへ、去年の秋江上の破屋に蜘の古巣をはらひて、や ゝ年も暮、春立る霞の空に、白川の関こえんと、そヾろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神のまねきにあひて取もの手につかず・・・

子供の頃、この「道祖神」がわかりませんでした。当時はインターネットがなく、現在のようにちょっと検索すれば名作古典の全文が読み下し文と現代語訳と対比させながら読める、なんていう便利な時代ではなかったので。その道祖神。なんと当院から歩いて 2 分のところにあることを(先日ふと散歩しているときに)知りました(下写真)。

「戸川原の双体道祖神」です。横に立っている説明文には「平成二十四年一月二十日指定」とあります。今から 14 年前ですね。こう書かれていました。

「この道祖神石塔は、舟形に象った石に僧形の双体像が浮き彫りにされ、正面には「寛文九年八月廿六日」の銘が刻まれている。僧形の像容は寛文期の道祖神の典型を示すもので、寛文九年銘は市内はもとより県下でも判読できるものでは最も古く、秦野市の初期道祖神石塔と認めることができる貴重な資料である。

 この道祖神は市域の他の道祖神と同じく「セエノカミ(サイノカミ)」と呼ばれ、『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』など平安時代の文献にも見える古称を伝えており、紀年銘やその像容からも我が国の民間信仰史を明らかにする上でも資料的な価値が高い。

 道祖神石塔の祭場には五輪塔の破片や石臼などが納められ、毎年小正月には正月のお飾りを燃やして団子を焼いて食べるセエトバライが行われている。道祖神の祭場に五輪塔の破片や石臼などを納めることと、セエトバライは秦野市周辺の道祖神祭祀の特徴でもある。」(原文ママ)

そういえば、小学生の頃、通っていた剣道の道場では必ず成人式の日(当時は 1 月 15 日と決まっていましたね)に鏡餅を砕き、(正月からお供えしていた餅を食べるとお腹をこわすので別の餅を用意して)お汁粉つくって食べていました。そのときに大人のだれかが「セイトバライ」とか言っていた記憶があります。これは「道祖神に集められた門松、正月のお飾り、書き初め作品、旧年のダルマなど縁起物を焚き、その火でどんど焼きをする」行事だったことを思い出します。

道祖神は、日本のあちこちでひっそりと、しかし確実に人びとの暮らしを見守ってきた民間信仰の対象です。歴史の教科書ではあまり大きく扱われませんが、むかしの日本人の生活感覚が詰まった存在ともいえます。秦野にもいくつかの道祖神が人知れずひっそりと道端に立ち、現代を生きるわれわれを見守ってくれています。忙しい毎日ですが、今後散歩するときはそういった小さな歴史にも気を配れるよう、余裕を持ってのんびり歩く時間も確保したいと思っております。

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