外国語、特にその格言やことわざを知ると表現や文化の多様性に触れることができます。
院長は剣道を子どもの頃からやっていました。たしか 5 歳になったときには竹刀を振っていた気がします。父親が警察官ということもありましたが、通っていた保育園で剣道が必修だったからです。そして先日その保育園(茅ヶ崎市の「ひまわり愛児園」)を検索してみたらウェブサイトのトップページに、子どもたちが剣道をやっている様子の動画出てきて「懐かしいのぉ・・・」とか思ってしまいました。
剣道ではよく言われることわざのような言葉がいくつもあり、チームの旗や手ぬぐい(面の下に巻くアレです)にそういった言葉が書いてあります。代表的なものは
・守破離:最初は師の教えを "守" り、成長するに従いその教えを "破" り、最終的に自分流のスタイルを確立することでその教えから "離" れるという修練の段階を示す
・一意専心: 他のことを考えず、その事だけに心を集中すること
・交剣知愛: 剣道を通じて相手とお互いに理解し合い、人間的な向上をめざすこと
などです。ちなみに大学時代のわれわれの部旗には「道」と書いてありました。警視庁剣道指導室から師範として指導に来てくださる 梯 正治 先生の筆による素晴らしい書でした。
一方、海外のことわざも面白いものがたくさんあり、好きです。有名なものは
・C'est la vie.(セ・ラ・ヴィ): フランス慣用句で直訳すると「これが人生だ」くらいの意味になりますが、「人生ってこんなものさ」といった “あきらめ” や "達観" のニュアンスを帯びていて、なんとなくフランスっぽくて好き
・Por la calle del ‘ya voy’ se va a la casa del ‘nunca.(ポル ラ カジェ デル ジャ ボイ セ バ ア ラ カサ デル ヌンカ): スペインのことわざ。ちょっとひねりがあり、直訳すると「“ああ、やるよ” の道を行くと、“決してやらない” の家にたどり着く」。要するに、「後でやるは、やらないと同義」とか、「そのうち=一生来ない」といったニュアンスになります。面白いのは、"ya voy(今行くよ)" が本来は前向きな言葉なのに、ここでは “先延ばしの言い訳” として使われている点です。人は悪意がなくても、先延ばしを重ねるだけで結果的に「やらない人」になってしまう。これは院長もそんな事例が少なからずあるので戒めになることわざです。
・Hindsight is 20/20. これは英語です。"Hindsight" とは「ある出来事の本質や実態をあとで理解すること」、"hind" は "behind" に通じる語ですね。直訳すると「後知恵は視力 20/20 だ」。これだけだとなんだかわかりませんが、20/20 は英米でいう「両眼とも視力 2.0」(完璧に見える状態)を指しています。これはすなわち「物事を判断するのに終わった後からだったらなんとでもいえる」ということ。大学時代に観た映画のこんなシーンで使われていたのを覚えています。
NASA のある事故調査委員会で、若手技術者が言いました。
「この部品の配置、今見ると明らかに危険ですよね。なぜ誰も止めなかったんでしょう?」
ベテランが即答します。
「“今見ると”だからだ。当時は、データは断片的で、予算と締切が背中に貼り付いていた。あの瞬間に見えていた世界は、いま君が見ている世界とは別物だ。」
会議室が少し静まり、誰かがぽつりと口にした。
“Hindsight is 20/20.”
戸田奈津子さんが「今となったらなんとでも言えるだろうさ」的な訳をつけていたと思います。どの作品かはもう忘れましたが・・・。
最近 Kazuma さんという多言語を独学で身につけ続け、世界各国のひとと相手の母国語で話す、という本当に面白い動画をアップしている日本人の YouTube をよく観ています(https://www.youtube.com/@KazuLanguages)。多様性が叫ばれていますが、その議論がたったひとつの言語、日本語のみで行われることが多い昨今。院長はヘタですが、英語ネイティブの患者さんが来たり、旅行者が道で困っていそうなときは、(多言語は難しいので)積極的に英語を使うようにしています。語学を勉強することは自分の文化をより深く知ることと通じます。そんなことを 48 年生きてみてやっと分かってきました。
もう人生折り返し地点は過ぎたので、今後は "Por la calle del ‘ya voy’ se va a la casa del ‘nunca" を肝に銘じ、あとになって “Hindsight is 20/20.” 的な意見を言って文句をいうようなひとにならないように残りの人生を駆け抜け、最期を迎えたら "C'est la vie." とか言って達観して穏やかでありあたいと思っています。
