外来の診療最後に患者さんから言われたら心からうれしいと感じるコトバ。
本屋に行くと本当にたくさんのビジネス本がありますね。
ちょっとみるとおカネ関連なら『金持ち父さん貧乏父さん』『お金は寝かせて増やしなさい』『株の超入門書』とか。
自己啓発系なら『嫌われる勇気』『人を動かす』『道をひらく』とかでしょうか。
本はたいていなんでも好きですが、こういった本に手を出すと際限がなくなるような気がしますので、あまり読んでいません。ただ、ついつい Amazon で『わが投資術』をポチッとしてしまいました。最近手元の本をおおかた読んでしまったことが原因かもしれません。書評の点数が高く、いろいろな方が絶賛されている本なので次の 3 連休に是非読んでみようと思います。
さて、今回はおカネとかビジネスとか爆速で ◯◯ 億円!とか、そういったキナ臭いハナシではなく、最近あらためて思ったことをひとつ。
昨今、情報を発信することに世の中のひとの意識が向きすぎているよに感じます。「SNS で誰でも発信できる!」「TikTok や Instagram でそこのアナタもすぐアイドルに!」「note などのプラットフォームにあなたの小説や漫画をアップロードして作品を発表してみませんか!」みたいなお誘いというか、背中を押してくる広告は少なくありません。われわれ開業医もしょっちゅう「本を出してみませんか?(え?執筆依頼?とか一瞬思いますが、さにあらず。相手から「200 万円くらいかかりますけど。利益出ることなんてアナタのような名も無い医者にはムリ。でも本として残るでしょう。カネ出すのはアナタですよ」的な感じです)」みたいな営業メール・電話が来て、「・・・なんか自分もやらないといけないのかな」と焦らされる昨今の風潮があります。
しかしわれわれ医療者にとって大事なのは、「発信すること」よりも「耳を傾けること」であるはず。「耳を傾ける」。よく使われる言葉ですね。子どもがいるひとなら「子どもの言うことに・・・」となりますし、逆に高齢の方なら違う意味で「(もう若くないので壮年期のような判断力はないのだから)子どもの言うことに・・・」という意味で言われることもあるでしょう。さらにビジネスマンなら「お客様の言うことに・・・」とか農業や林業など、自然のなかで仕事をしている方なら「植物が発しているメッセージに・・・」などの目的語がつくかもしれません。
この「耳を傾ける」。これは簡単なようでなかなか難しい。院長には 20 歳前後の 2 人の子どもがいますが、彼らの言うことにちゃんと耳を傾けられているでしょうか。実際に多くの家庭では、子どもがなにか親に伝えようとしても、肝心の親が家事をしながら、とかスマホをみながら、とかになっていることが少なくないと思います(ウチもそうです・・・)。会話、特に複雑な感情や込み入ったハナシをする場合は、しっかりとお互い目を見て、「耳を傾ける」姿勢が重要だと思います。
昨今、冒頭に挙げたビジネス書のなかでも(たとえば有名な『7 つの習慣』とか)、情報を発信するよりも受信、すなわち「話すことより聴くことのほうが大事」とする内容が多く語られるようになっています。「上手な相づち」「聴くためのスキル」「聴くときの表情のつくりかた」など、さまざまな "傾聴のテクニック" が紹介されるようになりました。こういったことは大切なことで、習得すれば特にビジネスの上ではきっと役に立つはずです。
しかしながら、その前に「聴く」ということがそもそもどういうことなのか、を踏まえておく必要があるはずです。たとえば院長が、子どもたちからある疾患、たとえばインフルエンザなどについての質問を受けたとしましょう。このとき、食事中など、普通に時間の余裕があるときだったら院長はきっと「インフルエンザってこんな症状が出て、学校保健安全法っていう法律で「発症後 5 日かつ解熱後 2 日」みたいな復帰についてのルールがあって、重症化率は若いひとだ ◯% くらいで・・・」みたいな感じで一生懸命説明するでしょう。このときに子どもたちが真剣に話を聴いてくれて、追って質問とかしてくれたらきっとさらにわかりやすくするために情報を上乗せして説明します。そしてこの "聴いてくれるひとに、鼓舞され励まされて一生懸命伝えようとする説明" によってさらに自分のアタマのなかが整理されていきます。このとき、子どもたちが食事中であっても箸を止め、目を見て聴いてくれていたら本当にありがたいですよね。すなわち、「聴く」というのは「聴き手が話し手を助け、励ます」という意味がその行為のなかに含まれています。
院長は診察の最後、ときどきですが患者さんに「話をいろいろ聴いてもらって助かりました」とありがたい言葉をかけてもらうことがあります。これは本当に嬉しいですね。「聴くことで患者さんの気持ちを少しであっても上向きにできた」ということですので。「耳を傾ける」というのは相手を「受け入れて寄り添う」こと。今年もできるだけ多くの患者さんと話す、すなわち「耳を傾ける」ことで、お薬や処置だけでは和らげることが難しい、"気持ちのささくれ" みたいなものが少しでも楽にできればと思っています。
・・・同じことを家庭(特に夫婦間)でできるか、と言われるとなかなか時間に余裕がないときは難しいのですが、家庭でもその姿勢に努めたいです。
