専門医・認定医・指導医・施設基準医などいろいろな資格を持っているわけですが、今後は少しずつ集約してまいります。
医師になってから、数多くの学会に入ってきました。泌尿器科学会をメインとして泌尿器内視鏡・ロボティクス学会、癌治療学会、欧州泌尿器科学会、東洋医学会、排尿機能学会、内視鏡外科学会、超音波医学会など。それぞれ役割があるのですが、毎年の年会費がこれだけ入っているとバカになりません(特に円安の影響で欧州泌尿器科学会の会費はなかなかに高額です)。そんなわけで開業して 3 年経過したのを機に、いくつかの学会は退会させてもらいました。
さて、この「学会をやめる」となると、おそらく最も悩むのがその学会の「専門医」や「認定医」を取得している場合です。現在
泌尿器科学会・・・専門医、指導医
泌尿器内視鏡・ロボティクス学会・・・技術認定医
内視鏡外科学会・・・技術認定医
ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会・・・施設基準医
を取得しており、さらに今年
プライマリ・ケア連合学会・・・認定医
東洋医学会・・・専門医 の試験を受けることになっています。ただ、最近の若手医師はメインの専門医以外あまり取得に熱心でないようで・・・。
答えはシンプルで、「こういった資格によるメリットが感じづらい」ためだと思います。専門医、認定医、指導医、日本医師会のかかりつけ医機能に関する研修制度など、医師の世界にはさまざまな資格・認定制度があり、その目的の多くは
「一定水準以上の知識や経験を持っていることを示す」
「継続的に勉強していることを担保する」
「医療の質を維持する」
というところにあります。
ただ問題は、"資格を取得し、それを維持する医師側にも、それなりのコストがかかるわりにはメリットが少ない" こと。ここでいうコストはお金だけではありません。
講習会参加。学会出席。E-learning 受講。症例のまとめ。必要書類の用意。更新単位管理。申請料や更新料、学会費の支払い。勤務医であれば休日を使うこともありますし、開業医なら講習会に参加している時間は、そのまま診療できない時間になります。つまり資格取得には明確な「機会費用」がかかってしまいます。当然ながら。
そうなると若い先生ほど、合理的にこう考える傾向があるようです。
「で、この資格を取ると何が変わるんですか?」
これは決して志が低い質問ではなく、この多忙な世の中で自分のやりたいことにフォーカスするには至極当然の問いかもしれません。
たとえば、
「この専門医資格を持っていれば診療報酬上の評価があります」
「患者さんが医療機関を検索するときに資格が表示されます」
「病院内でこういうポジションに応募できます」
など、資格取得によるメリットが明確なら話はわかりやすいのですが、医療の資格では、
「取得することには意義があります。自己研鑽になります。患者さんのためになります(ただし結果として、というくらいの感じで)」といった類のものが多く、なかなか若手医師のキモチにリーチしづらいのも理解できます。
彼らに
「医者なんだから勉強するのは当たり前だ」
「患者さんのためなのだから休日くらい使いなさい」
「昔の医者はもっと勉強していた」
と言っても、おそらく響きません。医師の働き方改革が進み、仕事と生活のバランスを考えることが当たり前になった時代です。限られた時間のなかで、「何を学ぶか」「どの資格を取るか」「何に時間を投入するか」を考えるのは極めて合理的な行動です。
だから制度を作る側も、
「良い制度を作れば、意識の高い医師が自主的に参加してくれるだろう」という発想だけでは、そろそろ難しいのではないかと思います。
実際には少しずつ変化もあります。
地域包括診療加算・地域包括診療料については、慢性疾患の指導などに関する一定の研修歴が施設基準として求められています。日本医師会の説明では、高血圧、糖尿病、脂質異常症、認知症などを含む研修を継続して 2 年間で 20 時間以上受講することなどが要件とされています。
さらに 2025 年 4 月から始まった「かかりつけ医機能報告制度」では、「かかりつけ医機能に関する研修の修了者がいるかどうか」も報告事項の一つになりました。地域でどの医療機関がどのような機能を持っているのかを可視化し、患者さんの医療機関選択にも役立てようという流れです。
これは基本的にはよい流れかと思います。
ただし、「研修を受けることが要件になる」ことと、「認定医という資格そのものが直接評価される」ことは少し違います。
ここは今後、もっと整理されてもよいのかもしれません。開業医でも継続的な学習を行っている医師には健診、予防接種、在宅医療、地域包括ケアなどにおいて一定の評価をする、というようなインセンティブをつけるのは悪いことではないと思うのです。
もちろん、「資格を持っている医師=良い医師」と単純に言えるものではありませんが、休日や診療後の時間を使い、講習を受け、学び続け、数年ごとに更新手続きをしている医師がいるのであれば、その努力を社会として少しくらい評価してもよいのではないかと思います。努力して取得し、努力して維持している資格なら、その努力が患者さんにも医療制度にも医師本人にも還元される仕組みにする。
そうなれば、「せっかくだから取っておこうかな」ではなく、「良い医療を続けるために、この資格を取りたい」と思う若い医師も増えるのではないでしょうか。そんなことを考えながら、東洋医学会専門医の申請書類を準備しております。
ただ、この書類をチェックしてくださる漢方専門医で当院木曜日担当の 野上 達也 先生にはさらなるインセンティブをつけてあげてほしい、と心から思う夏の日曜日でした。
