山本五十六が "やってみせ、言って聞かせて、させてみせ・・・" と言いましたが、医学教育には特に "させてみせ" が大切と思います。
専門医制度について昨日から述べています。昨日は院長が所属している日本泌尿器科学会ならびに(所属というか、この団体の指示に従わざるを得ない)日本専門医機構が提供している現在の日本の泌尿器科専門医について紹介してみました。本日は米国・欧州の専門医についてそれぞれの専門医を取得している院長の友人から教えてもらったことを踏まえてみてみます。米国は州、または施設によって、欧州は国によって本当に大きく異なりますので参考程度とかんがえてくださると幸いです。
米国の場合。
まず、米国には The Accreditation Council for Graduate Medical Education (ACGME) という NPO があります。このウェブサイトには "ACGME(直訳すれば「米国卒後医学教育認定評議会」)は、米国の医師が安全で質の高い医療を提供できるよう、卒後医学教育に必要な教育基準を定め、その水準を評価・監督している独立した非営利組織である。卒後医学教育(GME:Graduate Medical Education)は、医学部卒業後に行われる専門領域の研修(レジデンシーとフェローシップ)を指します。ACGMEは、米国内のこれら研修のプログラムについて、その認証と品質の管理を行っています" とあります。
泌尿器科医になるにはまずこの ACGME に認定されているプログラムで 60 ヶ月のレジデンシー・フェローシップの卒後教育(研修)を受けます。米国がわかりやすいのは "Uro-1" から "Uro-5" まで段階的に求められる知識や責任が増えていき、最後の 24 か月のうち少なくとも 12 か月は "チーフレジデント" として勤務することが求められるパターンが多いこと。"チーフレジデント" は院長が学生時代にビデオで観まくった NHK 総合で土曜日の夜に放送していた『ER-緊急救命室』で「レジデントとして赴任した先生がまずは目指す役割」でしたね。
まあここまでは日本の「研修+症例経験」と比較的似ています。ところが、その後がだいぶ異なるようです。
米国の泌尿器科専門医を統括する組織、American Board of Urology(ABU)の認定は二段階となっています。
まず、 Qualifying Examination:Part 1 と呼ばれる 300 問からなる筆記試験を受けます。CBT(Computer-based testing; PC の画面を観ながら回答する方式)で、合格率は 90% 程度と高いですが、これは "criterion-referenced approach" という、「毎年の試験の難易度に応じて合格ラインが調整されるシステム」を利用した試験なので、そもそもこの試験を受けられるまでの研修内容はだいぶ厳しく設定されています。
そしてこれらに合格しても、まだ ABU が認めた泌尿器科専門医ではありません。その後、実際に泌尿器科医として勤務することでさらに評価をくだされます。原則として 16 ヶ月以上、1 つの施設で実際の臨床業務に従事することが必要となり、その間の
◯ 実際の診療内容
◯ 経験した症例リスト
◯ 経験した治療合併症
◯ 上司からの評価
などが審査されます。
そのうえで、Qualifying examination Part 2 という口頭試験を受けます。これに合格して初めて、
"Diplomate of the American Board of Urology" となることができます(diplomate は「資格保持者」の意味)。
米国と日本の大きな違いは「実際に一人で診療させてから判定する」ということで、これは今後日本における専門医システム構築にも適用可能なアイディアでしょう。
ただ、米国は「診療に集中する医師」と「若手を教育する医師」がある程度分かれており、特に「教育担当」となっている医師の臨床業務 duty はかなり軽減され、卒後教育に集中できるようなシステムが取られているそうです。そしてこの「教育担当」も教育を受ける側の若手医師から評価され、その給与などが変動するようになっているため、「効率よく教える具体的なスキル」を持っている医師がほとんどということです。日本の大学教官は「教育」「臨床」「研究」の 3 つをこなさないといけないのでものすごく忙しい、ということがよく言われますが、やはりこれら 3 つについては一部のスーパーマンを除いて分業制にしてもよいのではないかと思います。というか、少なくとも教育担当者を用意しないと教わるほうが可哀想な気がします。日本でそのような体制をつくっている教室がどの程度あるかわかりませんが・・・。
単純化すると日本は、
4 年間研修
↓
必要症例経験
↓
試験合格
↓
専門医
で、これに対して米国は、
Residencyを修了した
↓
筆記試験に合格した
↓
実際に独立して泌尿器科診療をする
↓
「この人は実際にどんな診療をしているのか」を評価する
↓
口頭試験
↓
専門医
となっています。
この「知っているか」だけでなく「実際にどう診療しているか」を見る、という発想が面白いですね。
明日は欧州、特にオーストラリア・ニュージーランドなども似たようなシステムになっている英国の制度について紹介し、そのうえで各国における「専門医を取得することのメリット」などについても考えてみたいと思います。
医学教育は面白いですが、それを担う医師が日本ではあまり大学や病院で評価されていないような気がするので、その点は変わってほしいと思う今日この頃です。
