当院には不安を抱えて受診した患者さんを無駄に緊張させたり不必要にトガッた対応をしたりしてネガティブな気持ちにさせるようなスタッフはいませんので安心してください。
当院には日々夜間の頻尿や尿の勢いが弱くなるなど、いわゆる排尿障害を訴える患者さんが多数来院されます。こういった症状に対して、薬理作用を考えてただただ機械的に薬を出す医者が仮にいるとしましょう(患者さんは男性とします)。
患者:「先生、最近トイレが近くて夜も何度も起きてしまって、眠れないんです」
医師:「ああ、排尿障害ですね。年齢的によくあることです。薬を出しておきましょう」
患者:「夜中に 3 回も 4 回も起きると、翌日がつらくて…。何か原因があるんでしょうか?」
医師:「まあ統計データを踏まえてあなたの年齢を考えると加齢による前立腺肥大が多いですから、とりあえず薬で様子を見ましょう」
患者:「副作用とか心配なんですが…」
医師:「まあ、大きな問題はありません。みんな飲んでいる薬ですから安心してください。処方箋出しておきますね」
患者:「生活で気をつけることはありますか?」
医師:「特にありません。薬を飲んでいればよくなりますから」
患者:「……わかりました」
医師:「では次は 1 か月後に来てください。はい、お大事に」
・・・書いていてイヤになりました。ハナシを聞かない冷たい医者っていうのは最悪ですねぇ。30 年前ならともかく、今この調子で開業医やっていたらクリニックは潰れます。相当高い確率で。
こんなとき、当院ならこんな感じで対応しています。
患者:「先生、最近トイレが近くて夜も何度も起きてしまって、眠れないんです」
医師:「それはつらいですね。夜に何度も起きると深く眠れなくて次の日以降に影響出て大変ですよね」
患者:「はい、昼間ぼんやりしてしまって…。何か大きな病気ではないかと心配で」
医師:「心配される気持ちはよくわかります。頻度が多いのは前立腺肥大症、聞いたことありますか?男性が年齢を重ねると前立腺という、「膀胱の下にあってその中に尿の通り道がある臓器」が大きくなってその通り道が狭くなる、といういわば加齢現象による病気で、それによるものが多いのですが、調べてみると膀胱の働きが低下していたり、ときには糖尿病や肥満などの生活習慣が関係していることもあります。コワいことを言うと前立腺や膀胱のがん、なんてこともあります。これまで経験された症状を詳しく教えて下さい。それを聞きながら治療が必要か検討しながら同時にいろいろな検査も行っていきましょう」
患者:「検査も必要なんですね。」
医師:「はい。ただ、一度にすべてを網羅するわけではなく、最初は検尿や採血などの比較的負担が少ない検査から始めてその結果や処方した場合はその効果もみながらどんな検査が必要か説明して進めていきましょう。あとは、意外と "生活指導"、例えば水の飲む量や節酒、運動や減量など、すぐに始められるようなことが薬よりもよっぽど効果があることもあります。夕方以降の水分摂取を少し控えるだけでも楽になる患者さんもいますのでまずは排尿と飲水について日記をつけることもぜひお願いしたいです」
患者:「わかりました。それならすぐに試せそうなので記録してみたいと思います」
医師:「排尿障害にはいろいろな原因がありますので、それらを整理してあなたにとってよい選択肢、これは薬だけを指すわけではないのですが、を一緒に相談しながら決めていきたいと思っていますのでどうぞよろしく」
患者:「そう言われると安心します」
医師:「お困りのことは遠慮なく教えてください。排尿についてのストレスが軽減できるように、一緒に考えていきましょう」
まあ若干理想的に過ぎる会話例ではありますが、実際にこんな感じで当院初診の外来は進んでいきます。
こんな会話例を出したのは「病は気から」というのが実際にかなり "ホントのこと" だと感じることが臨床をやっているとしばしばあるからです。この「病は気から」今回の排尿障害に限れば「尿路の症状は精神神経系から」とも言えるのですが、こういった異なるシステムの相互作用が実際に体内で起こっている、ということが近年の研究では示されるようになってきました。明日はそのことについて紹介してみましょう。
当院スタッフは院長を含めて患者さんと話すのが好きなひとばかりです。どんなことでもどうか心配なことがありましたら教えて下さい。われわれのできる限りを提供することをお約束します。
