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日本も "中流" が少なくなっていると聞きますが、米国のそれはなかなか厳しいようです。

[2026.01.05]

今回紹介するのは院長の知り合いのハナシです。米国と日本のミックスで国籍は米国。有名なリゾート地がある州で看護師をしている方から聞いたことです。職業は病院看護師でいくつかの資格を持っており、手術室専属として働いています。年収はおよそ 9 万ドル。現在の為替でいくと年収 1350 万円となります。日本ではこの年収があれば、贅沢をしなければ問題なく生活できると思いますが、米国はそうでもない、というのが実態みたいです。

まず、米国のリゾートに住む場合、この収入でも「中流層」で、中流層の方々は、住宅ローン・車・教育・医療保険などを信用と借金で支える綱渡りの生活をしているとのことです。ここに "想定外の思わぬ出費" という負荷がかかり借金をしてしまうと、その後の負債が雪だるま式に膨らみかねません。その "思わぬ出費" として最も多いのが、米国では「医療費」です。有名な話ですが、かの国の個人破産最大の原因が医療費。たとえば交通事故で骨折し、一度でも緊急手術を受けたら保険会社からこんな対応をされることがしばしばだそう。

「この手術は当社がカバーしている病院で行われていませんので全額自費です/(病院がカバーされていても)その外科医は当社がカバーしているよりも手術代が高い(すなわちウデがよいと言われる有名な)医師なので全額自費です」

「あなたは左手を骨折していますが右利きですよね?片手があれば通常の生活は可能でしょう。本当に今回の手術は緊急でやる必要があったのですか?」

「あなたは病院のベッドを(1 泊もしていなくても)6 時間使用しました。1 時間あたり 125 ドルなので、(手術費用とは別に)ベッド代は 750 ドル(12 万円くらい)です(日本なら 1 時間ではなく、1 日泊まって 125 ドル行かないくらいです)」

「骨折の手術に対する費用は 15,000 ドル(225 万円くらい)です。術中やや非典型的な損傷部位があったので手術器具オプションとして 5000 ドル追加となります」

・・・キツいですね。日本の医療現場でここまで「カネ、カネ」と言われることはあまりないと思います。とにかく病院から言われるのは病状や経過よりも「支払能力」「現在いくらもっているか」「どんな保険に入っているか」などなどおカネのことばかり。

さらに医療費について、病院は資金回収業者と提携しており、もし支払いが滞った場合、口座凍結・車差し押さえ・即時住居立ち退きなどの手続きが容赦なく進められます。破産後も信用履歴は長年回復しません。そうすると就職・住居・通信契約すべて拒まれ、もうそれまで送っていた "普通の生活" には届かなくなります。

かように社会保障インフラが脆弱で、家族や親しい友人でも同様の不安定な環境にいるため、頼れません。互助の精神・互助のための余裕がないのです。こうして「つい 1 年前まで家を持ち、クルマに乗り、文化的な生活を送っていたひとが突然ホームレスになる」という目を背きたくなるような現実が襲ってくるのです。

「日本は米国の 20 年後の姿」と言われることがあります。では日本が、少なくとも医療に関して同じ道を歩まないためにはでどうすればよいでしょうか。これは難しいです。国民性の違い、おカネに対する価値観の違い、弱者を支えようとする利他精神の持ちようなど、さまざまなことが二国間で異なりますので一概にはいえません。しかしながら、次の言葉が "正義" として社会的に広く浸透した場合、少し危険かもしれません。

「現在の境遇は自己責任だ」
「落ちた人間は努力が不足している」
「税金を払っていない人を助けるのはおかしい」

この言葉が制度に埋め込まれ始めた瞬間、日本は静かにアメリカ型に近づくような気がします。なぜなら、失敗者を罰する社会は、成功者も守らないからです。今日の勝者は、明日の患者・失業者・介護者になる。病気は突然やってきます。地震をはじめ大きな災害であっても 1 分前ですら正確に予想することは不可能です。医療者であれば、これは直感的にわかるはずです。

日本が医療という観点で守るべきなのは、米国追従にならないよう意識すること、そして効率第一ではなく、回復可能性(リカバラビリティ)を保持した政策ではないでしょうか。そんなことを考えながら本年も今日からまた日々の診療に邁進してまいります。

 

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