お笑いコンビ、パンクブーブーさんの漫才が好きです。日本語の特徴を十二分に活かしているところとかいいですね。
ーーーーーコント「万引き」よりーーーーーーー
・ボケのひと「パッて見たら、若い兄ちゃんが万引きしてたんだよ」
・ツッコミのひと「うわ!それはよくない!」
・ボケのひと「よくないでしょ?ひどいでしょ?だから俺は、「おい!なにやってんだ!!」・・・・って思ったんだよ」
・ツッコミのひと「あ、言ってないんだ!」
・ボケのひと「言ってない言ってない!」
・ツッコミのひと「思ったんだ、なにやってんだ!って」
・ボケのひと「そそ。そしたらそれに気づいた兄ちゃんがよ、「テメーさっきから何ジロジロ見てんだよ!」・・・っていう表情を浮か べてきたのね?」
・ツッコミのひと「言ってないの?」
・ボケのひと「言ってないよ?もちろん」
・ツッコミのひと「表情を浮かべてきたんだ!」
・ボケのひと「浮かべてきた!だから俺もそれで完全にブッチーンって言ったんだよ」
・ツッコミのひと「あ、言ったんだそれは!?」
・ボケのひと「うん言ったんだよ?これは。」
・ツッコミのひと「完全にブッチーンって?」
・ボケのひと「そう完全にブッチーン!って言ったんだよ。そしたらその兄ちゃんがよ?いきなり振り返って、俺の顔面をボッコーン!って殴ってくる可能性もあるじゃない?」
・ツッコミのひと「あ……ま、まぁあるね!うん!」
・ボケのひと「だから俺もどうしようかなーと思ったんだけど」
・ツッコミのひと「ちょっと悩むところだね」
・ボケのひと「ここで俺がやらなきゃ誰がやるんだ。っていう本を棚に戻して」
・ツッコミのひと「あ、本のタイトルか!お前が立ち読みしてたやつ!?」
・ボケのひと「読んでたやつ、うん!そしてその兄ちゃんを睨みながら、ゆっっくりとその本屋を出て兄ちゃんのいるコンビニへと入って行ったわけよ」
・ツッコミのひと「別々の店なの!?」
・ボケのひと「あ、俺がいたのは別の店だよ?」
(以下略)
(ちなみにボケのひとが 佐藤哲夫さん、ツッコミのひとが黒瀬純さんです。「ボケ」「ツッコミ」と呼び捨てだと失礼なので「のひと」とつけてみました)
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・・・という感じで散々「◯◯◯◯◯・・・じゃない」「△△△△△・・・と言いつつも」とか、最後の助詞で逆転できる面白さが日本語にはあり、それを上手く漫才に取り入れているのが好きです。
最近読んだ出色のミステリ、夕木春央さん『方舟』は、まさにそんな「最後の最後にこれまで抱いていた感覚がひっくり返る」ような一冊でした。舞台設定が巧み、登場人物それぞれが印象に残るほどキャラ立ちしている、推理の筋道が明快で読みやすい、なども素晴らしいのですが、とにかく最後に、"ここまで積み上げてきた物語の見え方を一変させる仕掛けが待っている" ことが快感でした。
しかし、その魅力を詳しく語ろうとすると、どうしても作品の核心に近づいてしまいますのであまり深くは触れませんが、スマホが当たり前の現代においては設定自体が難しくなった「クローズドサークル」でのハナシです。クローズドサークルの現代ミステリではしばしば登場人物を孤立させるために、全員のスマートフォンを都合よく圏外にし、道路を寸断し、救助も来られない状況をつくったりします。これはやり方を間違えると、読者は「そんな都合よく "不都合なことばかり" 起こらないだろ」とツッコミを入れられてしまい、読者は肝心のストーリーよりも "作者の都合による不都合" ばかりが目につくようになってしまいます。『方舟』は、この難題に正面から答えているところがまず上手い。
そして終盤、名探偵役により論理は積み上げられ、真相へ迫っていき、一見解決したかのように見えるのですが、そこからがこの作品の真骨頂。・・・これ以上は未読のひとに申し訳ないので話せません。
シャーロック・ホームズでも名探偵コナンでも古畑任三郎でも、数あるエピソードのなかでひとつくらいは「いやいや、これはさすがに主人公に都合よく進みすぎでしょ!っていうかこいつらなんでこんなにいつも犯人指摘するときイキっているの?たまには恥かけよ」とか悪態づいてしまうことはミステリ好きならあるはず。そんな「名探偵に対する "異議申し立て" したくなる気分」を本作では見事に代弁してくれています。
久しぶりに「読み終えた瞬間、それまでの場面を最初から点検し直したくなる」作品でした。『イニシエーション・ラブ』以来でしょうか。これ以上詳しいことは言えませんが、是非読んでみてください。こんな気持ちいい体験を ¥1,600 でできるなんてなんて、作者とこの本に関わってひとたちに感謝です。