最近読んでいるマンガから "覚悟" について思いを馳せてみる。
最近、なんとか時間を見つけて本を読んでいます。歯磨きの数分やトイレ中(失礼)などに。しかしそうないう読み方ですと、なかなか細かい字面を追ったり、一気に読んだほうが理解しやすい本には向いておらず、持ち運びに便利な iPad で漫画、というスタイルになります。院長が好きなジャンルは歴史・ミステリ・医療、ときどき哲学とか統計学。特に歴史でもミステリでも「カオスな雰囲気」のものが好きです。例えば歴史なら中世、ミステリならクローズド・サークルでバトル・ロワイアルのように登場人物がやられていく、みたいな(医療でカオス、というのはありませんが、なんとなく最後にオチがついてキレイに伏線を回収するようストーリーになっているのが好き)。
そんな院長がここ数日で読んでいるのが、 たかぎ七彦 『アンゴルモア 元寇合戦記』、中世、元寇のハナシです。めまぐるしく国境線が変化する大陸とは異なり、他国から本土の侵略を受ける、という機会が(海という自然の防壁のおかげで)皆無であった日本国が初めて経験する防衛戦。その様子が大変わかりやすく描かれています。ぜひご一読を。
13 世紀のモンゴル軍は、圧倒的な機動力と組織力をもってアジアからヨーロッパを席巻しました。彼らは戦略・通信・補給・情報網が日本の武士と比べて極めて洗練されており、個人の武勇よりも組織的連携と効率が重んじられていました。モンゴルの強さは 合理性と科学性に支えられた「システムのチカラ」であったと言ってもよいと思います。
一方、元寇で彼らと対峙した日本の武士たちは、モンゴルの合理的集団戦に対して、個々の戦士が命を賭して一騎討ちに挑むという「個の力の極致」でした。当時「やあやあ我こそは・・・」と名乗りを上げた武士がその口上が終わるまでの間に相手から矢を射掛けられた、という記録が残っているように、彼らは集団ではなく「個」で手柄を立て、認められることを誇りとして戦っていました。日本の武士は戦術的には非合理だったかもしれません。ただ、一人ひとりの「死を恐れぬ覚悟」や、「名誉」「義」のために戦う精神的強度が異様なまでに高かった。超グッドタイミングに起こった神風や、モンゴル人お家芸の「爆速の機動力に裏付けられた騎馬隊による攻撃が封印されていること」などの幸運ももちろんあったと思います。しかし、大和武士のもつ “個の強さ” こそが、モンゴルが日本を制しきれなかった大きな要因だという歴史家もいます。自分もそういった点はあると思っています。「個のチカラはときに集団の統制されたシステムを超える」ということは、経験されることだと思うので。
13 世紀、世界最強といわれたモンゴル帝国。彼らが日本の地で遭遇したのは、勝利のためなら手段を選ばない「武士」という名の、恐るべき戦闘性でした。モンゴル人(実際は大多数が朝鮮人であったという記録もありますが、主な部隊長はモンゴル人だった)からみて、日本の武士は彼らがこれまで征服してきた、どの民族とも違う。もしかすると日本の武士こそ悪魔、と呼ぶのが当時、最もふさわしい呼称だったのかもしれません。たとえばモンゴル軍は、捕らえた日本人を「肉の盾」として最前線に立たせたと言われています。しかし、鎌倉武士たちは何食わぬ顔で、その盾ごと矢を射る、刀で斬りつける。人質を取られる恐怖を知るがゆえに、武士たちもまた、捕らえたモンゴル人を人質に取り、報復したようです。鎌倉武士たちは、モンゴル軍に対し、船の中に牛の死体を投げ込むという奇策も用いました。季節は夏です。腐敗した牛の死体によって船内の衛生状態は悪化し、疫病が蔓延したことは想像に難くありません。これは、世界史における初の "生物兵器" とも言えるかもしれません。モンゴル人が鎌倉武士団の長にあたる人物を打ち取り、その首を掲げると、武士たちは士気が下がるどころか、むしろ怒り狂って攻撃してくる。博多の街を、モンゴル人にどうせ占領されるのだからと、元寇の前に自らの手で略奪し尽くす。モンゴル軍からみて、鎌倉武士は、情け容赦もない、まさに悪魔のような戦闘民族にみえたことでしょう。元寇とは、国を守るため、常識や倫理をかなぐり捨てた日本の武士たちの、圧倒的な狂気と愛国心に支えられた誇りの物語であることを、久しぶりに元寇に関連する物語を読んで思い出すことができました。
むかし、うちのおばあちゃんがそういう会社に頼んで家系図を作ってもらったことがありました。すると院長のだいぶ前のご先祖様に "源義経" の名が。院長は上の記述に匹敵するほどの激しい好戦性はないと思いますが、大切なひと、大切な組織、大切な地域、大切な国を守るためにはすべてをなげうつ覚悟を持っておく、ということは決して悪いことではないと思うのです。
でも、忙しくても平和な毎日が続くのが一番です。本日も穏やかな心で診療をさせてもらったことに患者さんやスタッフ、そして支えてくれるさまざまな方に感謝を捧げます。
・・・なんとなく寂しいラストになってしまいましたが別に引退を決めたわけではありませんよ。念のため。
