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次に行われる選挙のテーマとして考えたほうがよいと院長が考える医療制度に関するイシュー。

[2025.09.08]

医療業界における経済状況が厳しい、ということが最近多く言われるようになっています。個人的には "日本人ファースト" などの外国人に関するイシューも大切だとは思いますが、国家の幸福度と医療体制というのはかなり密接に関わる、というデータが多数あることを踏まえると、"日本の医療制度を今後どのようにしていくか" について議論するほうが重要度が高いのではないかと愚考しています。最近国立大学の赤字が、もうのっぴきならないところまで来ている、という動画を 2 本視聴しました(

大学病院は普通の病院とは違います。

  • 高度な医療(重症・希少疾患、救命救急、先端治療)

  • 医学生や研修医の教育

  • 医学研究と新しい治療法の開発

これらを同時に担っているのが大学病院です。しかし、この「教育」と「研究」にかかるコストは病院収入、いわゆる「診療報酬」ではカバーできません。さらに高度医療の現場では「採算度外視」が常態化しており、患者さんのために頑張れば頑張るほど赤字が増えていくのが現状なのです。

大学病院というのは、当院にとっての東海大学がそうであるように、「地域医療における最後の砦」です。そういった有名かつ専門的な施設で真っ当な医療を懸命に行っている医師や看護師など医療従事者がそれなりの経済的な恩恵を受けられない、というのはどう考えてもおかしい。大学病院赤字の原因は「経営努力が足りないから」ではありません。むしろ現場の医師や看護師は必死に働き、救急医療・がん治療・移植・集中治療といった「社会に欠かせない最前線の医療」を支え続けているのです。それなのに結果は逆。となると、これはどう考えても構造的な問題です。

これまでに言われている大学病院復活のためにどんな “処方箋” があり得るでしょうか。ちょっと掘り下げてみましょう。

  1. 診療報酬の適正化
     特に救急やがん、移植といった領域の点数を現実的な水準に引き上げる必要があります。現状では「コスト割れ医療」が多すぎる。

  2. タスクシフトの推進
     医師が本来の診療に集中できるように、事務作業はクラーク、機器管理は臨床工学技士へ。医療職全体の分業が不可欠です。

  3. 教育・研究費の独立財源化
     診療収入に依存せず、国が「未来への投資」として別枠で支援する仕組みを作れないもんでしょうか。

  4. 経営の透明化と効率化
     診療科ごとに収支を公開し、経営努力が報われる体制を作る。無駄をなくし、持続可能性を高める・・・とよく書いてあるのですが、院長はこれはちょっと無理ゲーかと思っています。先程書いたように大学病院は涙ぐましい経営努力をすでにし尽くしているところが多いように感じます。

  5. 地域医療との連携
     軽症患者はクリニックへ紹介し、大学病院は重症・専門医療に集中する。病診連携が進めば、大学病院は本来の使命を果たしやすくなります・・・とこれもよく書いてありますね。まあそんな単純には行かないのが医療現場の難しいところです。

  6. ICT・AIの活用
     外来トリアージ、画像診断の補助、カルテ要約などにAIを導入すれば、医師の労働時間を確実に削減できます・・・まあ、そんなことができるくらい優秀な AI ツールができれば。

ちょっと冷めた意見を書いてしまいました。これらはどれも大切ですし、現場の負担軽減や経営改善に一定の効果はあるでしょう。しかしこれらは言ってしまえば「小手先の改善策」です。根本的な問題は―― "日本の医療制度そのものが、大学病院を赤字に追い込む構造になっている" という点にあるように感じます。

どんなに高額な先端医療を行っても、診療報酬は全国一律。しかも日本の医療費総額は財政的に抑え込まれているため、大学病院が担う「高コスト医療」はすべて赤字で回さざるを得ないのです。これでは病院の努力で解決できる範囲を超えています。加えて救急における診療費踏み倒しや、懸命に行った医療行為に対する保険請求しても回収されない(いわゆる「レセプトで切られる」状態)など、本当に現在の病院経営は一般的な保険診療に則っているかぎり、相当な無理ゲーになってしまうのです。

となると、今後起こりうることとして最も簡単な方法が "国民皆保険を終わらせ、混合診療を全面的に解禁すること" でしょうか。患者さんが望む場合、自由診療と保険診療を柔軟に組み合わせられるようにする。そうなると最先端医療や高額な治療に適切な価格がつき、病院は赤字を恐れずに研究や新しい治療に取り組める・・・と言うと聞こえはよいですが、結果として、「命の値段付け」が同時に始まる、という問題も発生します。日本人は 60 年以上にわたり、「安価で比較的平均的な標準治療を全国どこでも受けられる状態」に慣れすぎてしまいました。個人的には上記のような "混合診療解禁" を政策として掲げて選挙した場合、その政党が勝つのはかなり難しいように思います。「命だけは平等だ」とか言って。

この問題は一地方開業医が提示できる政策の範囲を大きく超えているので、現時点では「今後、大きな社会的議論が必要」と述べるにとどめますが、その議論開始までの残された時間はあまりないと思ったほうがよいでしょう。米国式で医療費ある程度自由化させて手術費用や薬剤費が高騰してもある程度目をつぶるのか、英国のように「国が認める診療内容」を厳密に設定し、その範囲内で医療を行う(この場合、現在のようにどの医療機関にかかることができる「フリーアクセス」は失われ、すべての日本国民が「かかりつけ医」を登録し、そこから専門医につなぐ、というかたちになります)のか。現時点でどちらの方向に行くかはわかりませんが、すくなくとも「現状の皆保険維持」は思考停止であり、現状ではすくなくとも大学病院をはじめとする地域の基幹病院の未来は守れないのではないでしょうか。

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