本日当院の公式 YouTube チャンネルを撮り溜めしました。少し前は TikTok や Instagram など新しいプラットフォームが成長してきているなか、「YouTube はオワコン化した」とか言うひともいましたが、長尺でいろいろと説明したり、自分が言いたいことをそのまま伝えられる場としてまだまだ YouTube は利用されていくと院長は思っております(院長の元気な母親もちょくちょく YouTube を観ているようです。今後年配の方がさらに観てくれるようになっていくでしょう)。ある程度ストックができたところでバン!とアップロードしますので、是非楽しみにしていてください。泌尿器科・総合診療をはじめ、医療全般に関することを(このブログもそうですが)皆様にわかりやすい言葉で易しく説明・解説してまいりたいと思います。
さて、院長は「毎日 8,000 歩・かつ毎月 100 km 以上のジョギング(25 分/5 km 以上の速さを保って)」を自分に課しております。花粉症の症状がそれなりに強いので、飛散量が減少する夜間にウォーキング・ジョギングすることが多いのですが、最近はだいぶ日が伸びてきて、外に出る頃はまだまだ明るい、という日が多くなってきました。すると、冬の間は暗くて見えなかった道の上にも目が行くようになります。近頃は歩いたり走ったりするときに足元がだいぶみえるようになり、マンホールもしっかりと視認できるようになりました。今回はそれにちなんで「日本のデザインマンホール」について、その歴史や芸術性、社会的な広がりを紹介してみます。
普段、われわれが何気なく歩いている足元に、実は世界に誇るべき芸術作品が眠っていることをご存知でしょうか。世界広しといえども、街中の何気ない道にキレイな芸術作品が描かれている国はなかなかありません。海外メディアからは「ありふれたものを非凡なものに変えた(turning the ordinary extraordinary)」と評され、今や「円形の芸術作品」として注目を集めているそうです。
このユニークな文化が本格的に始まったのは 1980 年代。当時、下水道事業は多額の費用がかかるため、納税者からの理解を得るのが難しいという課題がありました。そこで、ある官僚が「マンホールの蓋を魅力的なデザインにすれば、下水道事業への関心や支持が高まるのではないか」と考えたのがきっかけのようです。それ以前にも、1960 年代から下水道システムへの理解を深めるためのPR 手段として活用され始め、1977 年には沖縄県那覇市で最初の芸術的なデザインが登場。1980 年代以降、この取り組みは地方自治体へと広がり、今では日本全国 1,780 の自治体のうち 95% 以上が、独自のマンホールデザインを採用しています。その種類は現在なんと 12,000 (!) 種類以上にものぼるとのことです。
マンホールの蓋に描かれるデザインは、単に美しいだけではありません。そこには、その土地が誇る歴史、風土、祭り、そしてアイデンティティが凝縮されています。
・歴史とシンボル:大阪市では堂々とした「大阪城」と桜、神戸市では「王子動物園」、富士市ではもちろん「富士山」が描かれています。札幌市では 1878 年に建設された「時計台」が町のシンボルとして刻まれています。その場所に住んでいる方にとっては大変誇らしいものがふとしたときに目が入り、地元に対する愛着が湧くことうけあいです。
・伝統芸能と祭り:青森市では勇壮な「ねぶた祭り」が、鳥取市では色鮮やかな「しゃんしゃん祭りの傘」が、高松市では「屋島の戦い」に挑む侍の姿が、それぞれ躍動感たっぷりに表現されています。お祭りのような無形文化遺産は、まさにこういったまさに「街全体」で大切にすると郷土愛も育まれてよいですね。
・自然とキャラクター:名古屋市の「アメンボ」や、東京都多摩地域の「ハローキティ」など、親しみやすいモチーフも多く見られます。
これらの美しい蓋がどのように作られているのか、その裏側には日本の精緻な技術と情熱があります。最大手のメーカーである「日之出水道機器」や、全国の蓋を手掛ける「長嶋鋳物」などの工場では、過酷な環境下で職人たちが汗を流しているそうです。製造工程は、まず鉄くずを大きな炉で約 3,000 度という猛烈な熱で溶かすことから始まります。溶けた金属から不純物を取り除き、砂で作られた鋳型に注ぎ込まれます。冷えて固まった後、ショットブラスティングで表面を磨き、サイズを微調整して仕上げられます。特に驚くべきは、その「彩色」です。複雑なデザインの場合、どうしても手作業が必要になります。職人が一つひとつ丁寧に色を塗り分けていくため、一日に生産できる数は限られています。中には 50 キロもの重さがある蓋もあり、その頑丈さと芸術性の両立には、並々ならぬ努力が注がれています。
今や、マンホールは見るだけの対象ではありません。日本中には「マンホーラー」や「ドレインスポッター(排水口観察者)」と自称する熱狂的なファンが大勢いるようになりました。彼らは新しいデザインを求めて日本全国を旅し、写真を撮り、SNS で情報を共有します。このブームをさらに加速させているのが、以下の取り組みです。
・マンホールサミット:このイベントには、全国のみならず、海外からも多くのファンが集まるそう。会場には日本各地の実物の蓋が展示され、関連グッズ(キーホルダー、コースター、本など)が販売されるなど、驚くほどの盛り上がりを見せています。
・マンホールカード:2016 年から始まったこのトレーディングカードは、表面にデザインの場所、裏面にその由来や歴史が記されています。カードを手に入れるためには、その自治体へ実際に足を運ぶ必要があるため、地域活性化や「マンホール観光」の強力なツールとなっています(ちなみに現在は第 28 弾まであるそうです)。
日々何気なく通り過ぎているマンホールですが、いつのまにかいろいろとすごいことになっているのですね。
こうした日本のマンホールアートの地位を決定づけた出来事の一つが、世界最大級の博物館であるイギリスの「大英博物館」への収蔵です。2019 年、大英博物館は新潟県長岡市から寄贈されたマンホールの蓋を最新の収蔵品として迎え入れました。この蓋には、長岡市の誇りである「火焔型土器(縄文土器)」、「長岡花火」、「長岡城(郷土資料館)」、「ツツジ」が美しくまとめられています。キュレーターのニコール・ルマニエール氏は、「過去を理解することで現在を理解しようとする博物館の活動において、このマンホールはまさに歴史の足跡の一部である」と語っています。日本の古代文化のシンボルである 5,000 年前の土器のデザインが、現代の下水道の蓋に刻まれ、それがロンドンの博物館に展示される――素晴らしい文化の融合例ですね。
あまり気付かずに通り過ぎてしまいがちですが、是非キレイなマンホールをみたらその芸術性やキャラ性を楽しんでみてください。ただし、足元を熱心に見すぎて、スマートフォンを操作しながらの歩行(歩きスマホ)のようになってしまわないよう、安全には十分に注意しましょう。
写真は小田原漁港にあるシャア専用ズゴックマンホールとそれを紹介する師長です。