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泌尿器科クリニックに来られる小児の患者さんで頻度が多い、夜間の排尿に関する症状について。

[2026.05.03]
「ヒトの ◯% は水分でできている」。よく言われる医学に関連するクイズですが、◯ に入る数字は何でしょうか?これは、真面目に答えれば「年齢によって異なり、体重ベースで回答すると、平均的な成人男子・成人女子・新生児でそれぞれ 60%・55%・75% である」となります。どの年代においても、体重でみた場合、人体の半分以上は水分ということになります。
ヒトの体は、細胞内液や血液などの細胞外液といった “体液” が大切な役割を担っており、この環境を一定に保つこと(ホメオスタシス)は生命活動のために極めて重要です。このホメオスタシスのために中心的なはたらきをしている生理現象が「排尿」です(ほかに発汗とか排便などありますが、体液量の調節という観点からは圧倒的に尿の役割が大きい)。これはまさに院長の専門で、排尿は、「ヒトのからだを一定の状態に保つ大切な調整弁」といえます。この排尿がうまくいかないと、本当にさまざまな問題が出てきます。
 
この排尿に関して最も若年でみられ、頻度が多い症状のひとつが「夜尿症」。すなわち「おねしょ」です。夜尿症は患児とその保護者の方がいきなり大きな病院にいく、ということはまずありません。たいていご自宅そばの施設を受診されます。そんなわけで、当院では泌尿器科を主標榜診療科にしている施設として、日々多くのお子さんとそのご家族の、夜尿に関する悩みと向き合っております。
「小学生になってもおねしょが治らないのは、うちの子だけ?」
「育て方やしつけが悪いのではないか」
「忙しい朝にふとんが尿でビチョビチョ。もうなんとかしてほしい」
わが国は排泄に関連する諸事を「はばかり」と呼び、日常会話のなかからやや排除するような文化があるためか、夜尿症患児の保護者が相談できずに人知れず悩み、なかには自らを責めてしまう例が少なくありません。患児自身も、朝起きて濡れた布団を見て、言いようのない悲しさや申し訳なさを感じていることがよくあります。
 
まず最初にお伝えしたいのは、夜尿症は決して「しつけ」や「性格」の問題ではなく、体質や発達のバランスによる「病気」として適切に治療できるものであるということです。本日は、夜尿症の仕組みから治療、そしてご家庭で今日から取り組める対策まで、簡単に述べてみましょう。
 
1. 夜尿症(おねしょ)とは?
一般的に、寝ている間の尿漏れを「おねしょ」と呼びますが、医学的には「5 歳以降で、月に 1 回以上のおねしょが 3 か月以上続く場合」を「夜尿症」と診断します実は夜尿症で悩んでいる方というのは非常に多く、日本全体で約 80 万人いると推定されています。これはアレルギー疾患に次いで多い子どもの病気であり、小学校 1 年生のクラス(30〜35 人)で 4〜5 人程度は夜尿症がある計算で。決して珍しいというような数字ではありません。一般的には成長とともに自然に治ることも多いのですが、週に半分以上おねしょをする場合は治るまでに数年かかることもあり、成人になっても 1〜2%の方は続くことがある、という報告もあり、この点からも「しっかりと治療すべき病態」と言えることが出来ます
 
2. なぜおねしょが起こるのか?(メカニズムと原因)
おねしょの原因は、主に以下の 3 つのバランスがうまくとれていないことにあるとされています

・夜間の尿量が多い(夜間多尿): 通常、寝ている間は「抗利尿ホルモン」という尿を濃くして量を減らすホルモンが分泌されます。しかし、このホルモンの分泌が少なかったり、夕食後に水分を摂りすぎたりすると、夜中に作られる尿の量が多くなりすぎてしまいます

・膀胱の容量が小さい: 尿を溜める膀胱のサイズが小さかったり、夜間に膀胱が勝手に収縮してしまったりすることで、尿を十分に溜められない場合があります

・眠りが深く、尿意で起きられない: 尿が膀胱に溜まってあふれそうになっても、脳が尿意をキャッチして目を覚ますことができない(覚醒閾値が高い)のも大きな要因です

これらは身体発達のスピードなど、個人差によるものが多く、「愛情不足」や「本人のやる気」とは一切関係ありません。このことをおさえておくことは重要です。
 
3. なぜ治療が必要なのか:自尊心を守るために
夜尿症を放置してはいけない最大の理由は、患児の自尊心(自己肯定感)への影響です。 夜尿症による精神的重圧は、いじめによるストレスよりも高いと報告されており、夜尿症は長らく放置されてしまうと、症状そのものよりも、その後の精神発達や性格形成など、人生そのものに暗い影を落としてしまう可能性があります。お泊り行事に参加できない、兄弟がいる場合は彼らと比較され叱責されたり「"できない子" のレッテルを貼られる」といった経験は、子どもの自己肯定感を低下させ、学業成績や友人関係などに悪影響を及ぼすことがあります早めに医療機関に相談し、適切なアプローチを始めることで、自然に様子を見るよりも 2〜3 倍治癒率が高まることが知られていますので、是非受診を検討してみてください
 
では、医療機関を受診したとして、どのように治療を進めていくか。これについては明日のブログで紹介します。便秘は 7 日間出ていない、というひともいて、それで命に関わる、ということは必ずしもありません(もちろん便秘でないほうがよいのですが)が、排尿は 2-3 日しなければそれだけで腎不全となり致命的となりうる極めて大切な生理現象です。なんらかの症状を自覚したらどうか早めの受診をご検討ください。われわれ開業医は、まず最初に患者さんと接する立場の医師として、「年のせいでしょう」「放っとけば治りますよ」「そのくらいなら様子を見ましょう」などのコトバで対応することはほとんどなく、まずは自院でできることから始めていくよう準備しております。どうか恥ずかしがらずに相談してください。
 

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