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"無料で書いて、無料で査読して、有料で読む"ー日本では "三方よし" が商いの望ましいカタチとされているので現在のピアレビューシステムにはやはり少し違和感があります。

[2026.04.20]

昨日またひとつの論文を査読して日曜日の午後が過ぎました。新しい論文を読者より早く読んでそれに対して評価を下せる、というのは大変ありがたいことですが、こういった「査読(レビュー)」という行為には対価が支払われることは全くなく、無償労働です。もちろんこれまで自分も論文を書いたときには必ず誰かにレビューされてきたわけですので研究者同士は "おたがいさま" でよいのです。ひとつ問題と感じるのは、これら医学を含む学術関連ジャーナルを運営している巨大な大手出版社の最近の態度です。名前を挙げるならば ElsevierSpringer NatureWiley といった、学術雑誌市場を寡占している出版社でしょうか。

最近の学術出版の特徴的な点は、

・研究者が論文を書く(無償)

・研究者が査読する(無償)

・大学や研究機関が購読料を支払う(高額)

という構造にあります。つまり、コンテンツの生産も品質管理も研究者が担っているにもかかわらず、最終的な収益は出版社に集中する仕組みです。

特に問題となっているのが購読料の高騰です。大学図書館は、複数の雑誌をまとめた「ビッグディール」と呼ばれる契約を結ばされることが多く、その費用は年々上昇しています。結果として、

・図書館予算の圧迫

・中小規模大学での購読中止

・研究者間の情報格差の拡大

といった問題が生じています。実際、欧州では大学コンソーシアムが Elsevier との契約を一時停止するなど、「購読料に見合わない」という強い反発も見られています。

こうした問題に対する一つの解決策として、「オープンアクセス(OA)」が広がっています。これは論文を無料で公開し、誰でもアクセス可能にする仕組みです。ただし、OAにも課題があります。多くの場合、著者側が掲載料を支払う必要があり、これが数十万円〜数百万円に及ぶこともあります。結果として、

・研究費の乏しい研究者が不利

・発展途上国の研究者の排除

・「おカネさえ払えば学術論文を上梓できること」による研究レベルの低下(採択基準がゆるくなりがち)

といった新たな問題が生じています。

もちろん上述した出版社が管理してくれているおかげで、査読システムや編集体制は整備され、研究の質を一定水準に保たれています。また国際的な流通網やブランド力によって、重要な研究成果が迅速かつ広範に共有される基盤を提供していることも事実です。近年は歴史や権威のあるジャーナルもオープンアクセス化を推進し、研究成果の可視性やアクセス性を高める取り組みも進みつつあります。

結局のところ、問題の核心は「学術知識の公共性」と「ビジネスとしての持続性」のバランスにあります。知識は本来、人類全体の共有財産であるべきです。しかし現実には、その流通が商業的利益に強く依存しています。この構造は、インターネット以前の時代には合理的だったかもしれませんが、デジタル化が進んだ現代においては再考を迫られているように感じます。

研究者同士が自らの研究をお互いに評価する「ピアレビューシステム」は、科学の信頼性を支える重要な仕組みである一方、現状は全く完全ではなく、またそれを取り巻く出版構造には大きな歪みがあるように感じます。特に購読料問題は、研究者だけでなく、最終的には医療や社会全体の知識アクセスに影響を及ぼしうる重要なテーマでしょう。

今後は、査読制度の透明化や効率化、そして持続可能なオープンアクセスモデルの構築など、多方面からの改革が求められていく・・・のではないかと院長は考えています。学術的な業績というものは本来、その発見者・報告者が一定の利益を得たあとは人類皆で共有する、というのが社会にとって好ましい発展につながるのではないかと思います。学術の発展と公平な知識共有を両立させるために、研究者・出版社・社会の三者がどのような新しいバランスを見出すかが問われています。

院長も査読ばかりするのではなく、自らも論文を書き、当事者としてこの問題に関わっていきたいです。

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