緊急性がある疾患を示唆する "パワーワード"、これをたくさん知っておくことで専門医の先生に適切につなぎやすくなります。
昨日東京は御茶ノ水、順天堂医員で開催された「T & A マイナーエマージェンシー(外科系救急初期診療コース)」に参加してきました。これはユニークなワークショップで、「一般社団法人 プライマリケア外科診療研究会」が開催している、「主に(一次)救急外来で出会う外科系救急疾患を、それらを専門としない医師でも適切に緊急度を判断し、対応できるということを目標」としています。
そのなかで、しばしば出てくる言葉がパワーワード。これは「そのコトバを聞いたらすぐに外科系の医師が動きたくなるような症状や病態を表すもの」で、たとえば
「道路工事中、メガネなどで保護されていない裸眼の左眼にセメントが入ったようで "アルカリ眼症" が疑われます」(アルカリ性の高い物質が眼に入り、科学的な損傷を引き起こす外傷。適切に対応しないと失明のリスクが高い)
「料理中、鍋の中で突然爆発がおこり、"顔面から頸部に至る広い範囲に熱傷" が起こっています」(熱傷は重症度により皮膚科専門医でも治療できることがありますが、顔面や手指のそれが起こった場合は美容的・機能的な観点から直ちに熱傷診療に精通している皮膚科専門医につなぐべき病態です)
「ご自宅で高齢の方が階段を転げ落ち、"骨盤骨折" が起こっている可能性があります」(骨盤骨折は大量出血をともなうことがあり、早く整形外科専門医に診てもらうべき外傷)
などなど。これら「アルカリ眼症」「顔面熱傷」「骨盤骨折」がパワーワード。この言葉を聞けば眼科医・皮膚科医・整形外科医は「すぐに対応しなければ」となり、「すぐにうちの病院に送って下さい。対応します」となることがほとんどです。
外科系ではこういった「パワーワード」が多くあります。これは院長の専門である泌尿器科もそうで、
「小児が左の "タマ" を痛がってうずくまっています」⇒ 左精索捻転、というタマ(=精巣)に血流を送っている精索がねじれる病態を疑います。「振り子時計」の振り子が精巣、それをつなげているヒモ部分が精索ととらえたときにヒモ部分が「雑巾を絞るようにねじれることで精巣に行く血流がなくなってしまう」ことで生じます。6〜8 時間以内に手術しないと精巣が壊死を来し、その時間を超えてしまうとやむなく摘出に至ることがあります。
「高齢男性が下腹部のやわらかい腫瘤と少量ですが比較的頻回の尿漏れを訴えています」 ⇒ かつて「溢流性尿失禁」と呼ばれていた病態を疑います。前立腺肥大症や神経障害による膀胱機能低下により、膀胱内にパンパンに貯まった尿がいよいよ膀胱内で維持できなくなって溢れ出ているのではないかと考え、ただちに尿のドレナージ(外に排出する)を考えます。
こういったパワーワードをいくつも知っておくことで、院長がときどき当番医をしている「秦野休日夜間急患診療所」での初期対応や、適切な専門医への繋ぎなど、非常に役立ちます。特に息切れなどの呼吸器症状・動悸などの循環器症状は「メジャー」と言われ、対応についても多くの医師が知っていますが、眼科・皮膚科・耳鼻咽喉科・整形外科・泌尿器科などはいわゆる「マイナー診療科」と言われますので系統的に学ぶ機会があまり多くありません。
今後もこういったワークショップに参加し、知識をブラッシュアップしていきたいと思っております。次のワークショップでは院長も登壇し、「泌尿器科のマイナーエマージェンシー」について講演することになっています。終了しましたらまた報告いたしますね。
