脈の異常を感じたら必ず教えて下さい
外来で血圧や血糖の管理をしていると「脈の異常」を認めることがあります。患者さんご自身が症状を訴えることもあれば、健診の心電図で偶然発見されることもあります。いわゆる "不整脈" ですね。
不整脈の歴史は非常に古く、紀元前 15 世紀ごろの古代エジプトにも記述があります。すごいですね。3,500 年ほど前から!すでにその頃にはヒトの心拍・脈拍を観察してその不調から治療につなげるような記述がみられます。当時のパピルスには「心臓は手足の中心にあって四肢に血管を送っている」と記載されており、古代エジプト文明の医学に関する知識に驚くばかりです。
さて、不整脈といってもすべてが治療の対象になるわけではなく、当院の健診でもよくみられる 「上室性期外収縮」などは健常な人においても観察できます。この波形は加齢と共に増加し、ストレスがかかっていると出やすいと言われており、院長も少し疲れているときに心電図をとるとみられることがあります。
しかしながら 1 日にこの波形が 100 拍以上をこえて出現している場合は、治療すべき疾患の発症の前触れかもしれません。その治療すべき疾患とは「心房細動」で、この不整脈は放置されてしまうと脳梗塞のリスクが通常の 5 倍以上になると言われております。また、心房細動が原因で心不全となり、入院加療が必要になった場合、その後の 5 年生存率が 50% を大きく下回る、という報告もあり、上室性期外収縮も油断せずにしっかりと拾い上げる必要があります。
ただし、1 回で 10 秒ほどしか波形をチェックしない通常の心電図ではこういった拾い上げは困難であり、24 時間装着するホルター心電図など、もう一歩踏み込んだ検査が必要になります。院長は循環器専門ではないのでホルター心電図まではオーダーしますがその後の診療は近隣の循環器内科専門の先生に依頼しています。
ただ、すべての異常を過不足なく見つけるのはかなり難しいです。健診を受けてくださった患者さん、もしなにか症状がありましたら些細なことでもお伝え下さい。診察の結果「様子を見ましょう」となることもありますが、カルテにはその旨記載しますのでその後「様子をみていく途中」で何らかの疾患が発見される場合、少なくとも「このときから徴候があった」ということはわかりますのでその後治療の助けになります。
開業医として患者さんをなるべく広く診ている院長からのお願いでした。
ホルター心電図の結果。24 時間継続してモニターしますので 1 回分の結果が冊子のように・・・。