臨床医の仕事を突き詰めて単純化すれば、結局「診断」と「治療」ということになると思うのです。
本日も多くの患者さんに来院してくださりありがとうございました。午前午後ともに(今年は 11 月初旬というのに発熱患者さんが多くおられる影響もあり)患者さんの待ち時間が多くなってしまいました。申し訳ありません。駐車場のスペースと、「働き方改革」のために直ちに医師増員、というわけにもいかず、お待たせしてしまった患者さんには心より申し訳ありません、と思っております。来年には建築費の高騰で厳しい世の中ですが、駐車場台数増を含めたクリニックの外構整備と医師数増を目指して現在いろいろと動いておりますので引き続き当院をよろしくお願いいたします。院長のキャパシティ(診るのが遅い・・・)的になかなかこれ以上患者さんを増やせないので・・・。
さて、ブログについては昨日の続きです。
コピペすると『「おなかが痛くて戻してしまう」と言って来られた特に持病や大きな病気・手術をしたことのない 20 代の女性。同じ様なことが 3 ヶ月くらい前から週 2 回くらいあったのが、ここ 2-3 週は 1 日おきくらいにある。痛みは 4-5 時間で消失して、痛くないときは全くなんともない」と言って来られた患者さん』(★)です。この方をどのように診断していくか、という内容で、昨日は「自分のことを "メタ認知" 的に俯瞰する」ということを紹介しました。
それでもなかなか確定診断に至るほどの手応えが得られない場合(実はこういったことのほうがすぐに診断がつく場合より圧倒的に多いのが新患外来です)、大切なのが「問診から得た情報を整理して "鑑別診断リストをつくる" こと」。これは見逃しや思い込みを防止するうえで有効な手段です。
たとえば「腰痛」と一口に言っても、腰痛症の筋痛や帯状疱疹、大動脈解離に がん の骨転移、さらには尿路結石に軟部組織感染症と、相当多くの “ありうる疾患たち” が存在します。ただ、ここで「しびれを伴う」「間欠的(一定の時間をおいて物事が起こったりおさまったりする様子)に痛い」、「数年前からじわじわ」など、患者さんが教えてくれる様々な要素が加わると、だんだんと目指す診断が薄〜くもやがかかっていながらも見えてくる感じがします。その際にアタマの中で、「整形外科系かな?それなら椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折とかをまず考えてさらに問診は検査をすすめて・・・」みたいな流れに進むことになります。こういったリストが "鑑別診断リスト" で、さらに問診で確率の高そうな疾患・低そうな疾患に分けて、前者の選択肢を深堀りする、整形外科疾患なら「専門医ではない自分ができることはどこか」を考えることになります。
ところで、院長が長らく勤務していた専門病院や大学病院などの "大きな医療機関" では、そもそも初診で来られる患者さんはほぼいません。少なくともひとり以上の医師がその患者さんを診察し、いろいろと問診を行い、さらにはいくつか検査を行ったうえで紹介される患者さんが来院されます。たいてい血液データや画像所見をもって。一方で、当院のようなクリニックに来られる患者さんは「ちょっと様子を見てほしい」「病院に行くほどでも…」という方が多い。
だからこそ、問診と身体診察がすべてのスタート地点になります。CT も MRI も使わず、限られた情報から患者さんが困っている病態の輪郭を描くような感じ。そこに開業医としての “面白さ” があります。まあ、大変なことのほうが多いと思うこともしばしばですが。実際、「風邪かと思って来院したけど、菊池病という疾患だった」「鼻風邪のあと咳が止まらなくて咳喘息かと思ったけど上気道咳嗽症候群という病態だった」など。いずれも院長がこれまでの医師人生で診断にやや時間がかかってしまったケースです。もちろんこういった病名にピタリと当てはまる診断ができることばかりではありません。むしろ診断が確定できずに高次医療機関にお願いする、なんてことはしょっちゅうあります。その原因として当院の力不足もあれば、臨床経過が成熟していない(時間の経過をみないと診断できない疾患というのは数多くあります)ことなど、様々な状況があるわけですが。しかし、「患者さんの初診をひきうけ、詳細な問診をすることで一緒に診断・治療を考えていく」というのは開業医の醍醐味です。
診断というのは、単なる病名当てゲームではありません。患者さんが語る “体験” を、医学の言葉で再構成し、そこに最も適したストーリー(疾患像)を当てはめていく作業です。そして医師自身も、常に自分を客観視しながら、「この物語の語り手として、自分はどの立場にいるのか?」を意識している。それがまさに“メタ認知的診療”です。問診で聞く一言一言が、伏線のように後から効いてくる。その伏線を丁寧に拾い上げ、病態というストーリーの全体像を描き直す――。うまくいくことばかりではないのが人体の奥深さでありますが、患者さんとともに確定診断にいたり、治療により症状が改善されたその瞬間は、「医者になって良かったなぁ」と、水野晴郎がテレビで放映された映画が終わった後のような笑顔になるのです。たとえで年齢がバレますが。
病院で患者さんの治療を手術という手段で完結させること。診察室で患者さんの診断を問診を中心とした臨床推論で確定させること。幸いなことに院長は現在前者を東海大学で、後者を秦野北クリニックで行うことができています。現状に感謝しつつ、また日々診療に心血を注いでまいりますのでよろしくお願いします。
・・・ちなみに上記(★)の患者さんは「腹部片頭痛」という、「頭痛なのに腹痛?」と言われそうな疾患でした。いつか機会があればこういったそれぞれの疾患について述べてみたいと思います。
