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自分に合う医者選びは "百聞(Google レビュー熟読)は一見(診察室に入る)に如かず"、だと思います。

[2026.01.19]

全く知己を得ているわけではないのですが、院長が勝手に尊敬している医師として、小児科開業医で作家の 松永正訓 先生(http://www.mtng-clinic.jp/)がいます。松永先生が書かれた著書『患者が知らない開業医の本音』の内容から、というプレジデント・オンラインのウェブ記事で

「グーグルのクチコミはまったくアテにならない..「いい医師」を簡単に見抜くための "とっておきの質問"」(https://president.jp/articles/-/65349?page=1)にヒットしました。え、そんなキラークエスチョンがあるの?ということで読んでみると・・・(以下抜粋です)

 

ぼくは、受診した子どもが人生で初めての風邪だった場合、「風邪とはなにか」「風邪薬の役割は何か」「自宅でできるケアは何か」「どういうものが再診した方がいい危険なサインか」をみっちり説明している。これはけっこう時間がかかるが、一般の人に対する教育という意味でも大事だと思っている。

だから、あなたがもし目の前の医師がどういう医療をする人なのか知りたければ、こう質問するといい。「風邪を早く治すためにはどうすればいいですか?」と。この質問に丁寧に答えてくれる医師は信頼できる医師だ。そういう質問がしにくかったら、そのこと自体がその医者がいいホームドクターではないことを示している。(引用終わり)

 

なるほど、と思わされる文章です。「いい医師を見抜くキラークエスチョンがある」という刺激的なタイトルですが、実際に書かれている内容は、派手な裏技ではなく、きわめて地味で、しかし本質的な話でした。ここで提示されている質問、「風邪を早く治すためにはどうすればいいですか?」これは一見、ありふれています。しかしながらこの質問、医師の “医療観” ならびに “患者との向き合い方” がかなり露骨に表れてしまう、なかなかに鋭い質問でもあります。説明してみましょう。

まず、風邪(感冒)そのものについて整理しましょう。多くの風邪はウイルス感染で、特効薬はありません。抗菌薬(いわゆる抗生物質)は効きませんし、「これを飲めば一晩で治る」という魔法の薬も存在しません。

つまり、「風邪を早く治す方法はありますか?」と聞かれたとき、医学的に誠実な答えは、

  • しっかり休む

  • 水分をとる

  • 熱や痛みがつらければ対症療法を行う

  • 自然に治るのを待つ

的な、どうしても "地味" な内容になります。この説明、正直にやると結構時間がかかります。しかも、患者さんによっては「それだけ?」と思われることもあるのです。曰く、「だから薬くださいよ」みたいな感じで。それでもなお、そこを端折らずに説明できるかどうか。ここに、その医師のスタンスがにじみ出ます。

リアルな診察室は大変忙しいもの。特に外来が混んでいればなおさら「詳しい説明」は削られがちになります。

  • (抗菌薬でなくても)それっぽい薬を出す

  • 難しい説明は省く

  • 「あとは様子を見ましょう」とか言う

こうした対応は、短期的にはトラブルが少なく、効率的に見えることもあります。患者さんも「何かしてもらった感」を得やすい。しかし、これは医療としてはかなり危うい側面を持っています。なぜなら、患者さんは「自らの体内でどういったことが起きているのか」、すなわち「病態」を理解しないまま帰ることになるからです。引用文にあるように、初めて風邪をひいた子どもに対して、

  • 風邪とは何か

  • 薬の役割は何か

  • 家庭でできるケア

  • 再診すべき危険なサイン

を丁寧に説明するとき、医師は正直、かなりエネルギーを費やしています。でもこれは「親切」だけでやっているわけではありません。この説明は、患者(あるいは家族)を“医療の受け手”から“理解者”に引き上げる行為。一度理解してもらえれば、次に同じ状況が起きたとき、不要な受診や過剰な不安が減ります。その結果、抗菌薬の濫用など、現在世界的に大きくなりつつある厄介な問題に対する解決の糸口になるかもしれません。

この短期的には手間。長期的には、医療全体の質を上げる行為。こういったことに価値を見いだせるかどうかが、臨床医としての姿勢を分けるような気がするのです。引用文で特に重要なのは、最後の一文です。

そういう質問がしにくかったら、そのこと自体がその医者がいいホームドクターではないことを示している。

これはすばらしい指摘で、医療の質は、検査機器や薬の種類だけで決まるものではなく、患者さんが医療者に「自由に質問できる空気」があるかどうかが、その決定の大きな要素となるはずです。

  • いかにも忙しそうで声をかけにくい

  • 聞くと嫌な顔をされそう

  • 「素人が余計なことを聞くな」という雰囲気を感じる

こんな空気では、患者さんは大事な症状を言い出せません。結果として、見逃しや誤解が生まれることになります。逆に、「こんなこと聞いていいのかな?」という質問を自然に投げられる診察室では、情報が集まり、判断の精度が上がります。これは医師側にとっても大きなメリットになります。

グーグルのクチコミが「当てにならない」と感じるのは、ある意味当然です。評価されているのは、待ち時間・受付の対応・設備の新しさ、といった医療の “外側” であることが多いからです。一方で、「この医師は、こちらの理解に合わせて説明してくれるか」
「わからないと言っても大丈夫な雰囲気か」「自分と医師のフィーリングが合うか」。こういうことは、実際に診察室に入ってみないとなかなかわかりません(しかも複数回診察受けないとなかなかわからないもの)。だからこそ、「風邪を早く治すにはどうすればいいですか?」という質問はキラークエスチョンです。この質問への答え方には、医師の誠実さ、忍耐力、そして患者観がそのまま表れるからです。

医療は、医師が一方的に正解を与える作業ではなく、患者さんの理解、納得、生活背景を踏まえて「一緒に考え、ともに答えを出す行為」です。その入口に立つための合言葉が、「これって、どういうことですか?」「早く治すには、どうしたらいいですか?」とか、患者さんの虚心坦懐な気持ちなのだと思います。逆に言えば、そういった気持で素直にどんなことでも医師に聞いて、ちゃんとした返答が得られれば、それがキラークエスチョンなのだと思うのです。

そんなことを意識しながらまた明日も患者さんと「一緒に考え、ともに答えを出せ」るような診療に努めたいと思います。

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