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親になってすべてのひとが読むべき漢詩ー『燕詩』

[2024.04.08]

先日おばあちゃんの話をしました。自分を育ててくれた、胆力のある大正生まれの素晴らしい女性でした。

残念ながら亡くなって 10 年以上たちます。

おばあちゃんは古文や漢文が大好きで、たくさんの話を聞かせてくれました。その中で、教育論みたいな話題になったときにいつも諳(そら)んじていた漢詩が白楽天(白居易)の『燕詩(つばめのうた)』です。その内容を意訳して紹介しますね。

梁の上に二羽の燕(つがい)がいます。力を合わせて巣を作り、雌の燕が四つ子を産みました。
ヒナは食欲旺盛、毎日毎日食べていないときがないくらい小さな声で鳴いてエサをせがみます。
燕の両親は何度も何度も巣に寄って捕まえたエサ(青虫など)をヒナに食べさせますが、食料が十分か常に心配します。
両親の披露はピークとなりますが、気力を振り絞って日々エサを与え続けます。
そんな生活が 1 ヶ月続き、母燕がやせ衰えた頃にようやくヒナたちは立派に成長しました。
両親は言葉(鳥語でしょう)を教え、羽根をキレイにしてやり、いよいよ 4 羽は成鳥となりました。
そんなある朝、両親は 4 羽の子供燕たちを樹の枝に導き、飛ぶことを教えました。
すると 4 羽は両親に整えられた立派な羽根を大きく広げて四方に飛び散っていきました。
親燕は空に向かって泣きながら声を張り上げ子供燕を呼びますが帰ってきません。
2 羽の親燕は空っぽになった巣に戻り、悲しみに暮れて夜通し嘆きました。
ここで作者の白楽天が親燕たちに優しく語りかけます。
「燕よ燕、悲しむことなんてないじゃないか。
自分がヒナから成鳥になったときのことを思い出してごらん。
懸命に育ててくれた親から巣立ったあの日のことを。
あの時に自分の親が抱いた気持ちを、今ようやく君たちは思い知ったんだ・・・」
 
いかがでしたでしょうか。白楽天は優しい調子でありつつも、「悲しいのはよくわかる。・・・でもお前たちもそうやって親から巣立っていったんだろう?」と、ある意味残酷に「すべての親が味わう、子育てが終わるという寂しさ」について語りかけます。
 
院長の子供はふたり。19 歳と 17 歳。もうすぐいわゆる「子育て」は終わってしまいます。彼らが巣立っていく時はこの漢詩を思い出して、無理矢理にでも笑顔で門出を祝ってあげたい。そんな気持ちにさせる名作です。
 
・・・院長が大学の卒業式の翌日、実家で正座して、育ててくれたことに対して感謝の言葉を伝えたときに見た、おばあちゃんの泣いているようで笑っているような顔が今でも思い出されます。
 
ちなみに写真はすぐれた経営者であり、書家でもあったおばあちゃんのお兄様による世界で唯一の作品です。本当にいい詩ですね。
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