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診療科標榜についてつれづれに書いていたら自然と師長のハナシに繋がりました。

[2025.09.24]

医療機関には必ず「標榜診療科」というものがあります。たとえばクリニックに行くと看板や受付などに「内科」「皮膚科」「産婦人科」「小児科」「外科」などの記載がありますね。あれです。その医療機関がどういった症状や疾患を専門的に診ているか、について患者さんにわかりやすくするために定められています。これは厚生労働省の医療広告ガイドラインで標榜可能な診療科名と不可の診療科名が定められております。たとえば以下のような決まりがあります。

  1. 2008 年 4 月 1 日の見直しで単独の診療科として標榜できなくなった診療科名
    1. 皮膚泌尿器科(歴史的には泌尿器科はこの診療科で始まったのですが、実際に皮膚科と泌尿器科双方をあわせて診療する医師がすくなくなってきたからだそう)
    2. 循環器科(内科(循環器内科)と外科(心臓血管外科)
    3. こう門科(理由は知りませんが、ちょっと患者さんが入りづらいから?)
  2. 法令に根拠がないため標榜できない
    1. 女性科
    2. 老年科
    3. 化学療法科
    4. 糖尿病科
    5. 性感染症科
  3. 不合理な組み合わせ
    1. 心療外科
    2. 整形内科
    3. 呼吸器皮膚科
  4. なぜか不明
    1. 総合診療科

1. と 3. はまあわかる、2. はまあそういうふうに決まってるならしゃーない、でいいのですが、4. は不思議です。つい先日『19 番目のカルテ』として総合診療医の活躍がドラマ化されているというのに。ちなみに当院の標榜診療科は「泌尿器科」・「内科」・「漢方内科」です。泌尿器科は最も専門の領域。「内科」としたのは実は不本意で、現在院長の業務はかなり「総合診療医」的なのですが、標榜できないので「内科」としています。そして「漢方内科」ですが、これも本当には「漢方科」または「東洋医学科」としたいのですが、これもルールで認められません。難しいですね。

そんなわけで 3 つの診療科を標榜していますが、原則として院長ひとりで診療しています。そのため開業医として日々を送っていると、どうしても「孤独」と向き合う時間が増えます。患者さんの診療はもちろん、経営・人事・医療機器の整備・地域との連携、そして医学の最新知識のキャッチアップ——。勤務医時代はチームで分担していたこれらの業務を、開業医になると通常はひとりで背負わねばなりません。診療が終わった夜に一人でカルテを振り返りながら「これでよかったのか」と悩む経験をする開業医は多いはず。

しかし当院は院長の妻が看護師として勤務しており、かなりの業務を担ってくれています。本当に感謝です。特に人事や勤怠管理をはじめとする「縁の下の目立たない仕事」をすべてきちんとこなしてくれています。素晴らしい。そんなわけで当院のスタイルは夫婦二人三脚。これでなんとか日々クリニックを切り盛りしています。この協調関係こそが、日々の診療を支える当院の最大の強みでしょう。

夫婦で医療経営するメリットのひとつは、診療の現場における視点の相互補完です。院長としての私は診断や治療方針を中心に考えますが、看護師長である妻は患者さんの生活背景や細やかなケアの視点から意見をくれます。たとえば治療方針を決める際にも、「この薬は効果的だけど、高齢の患者さんが飲み忘れやすいのでは?」といった具体的なアドバイスが飛んできます。お互いの意見を交わすことで、より現実的な医療を提供できます。また院長は診療に注力しているのでなかなか他のスタッフにまで目が届かないことがあります。そんななかで師長が少し冷静な目で院内全体を見渡してくれることで "ワンチーム" になることができていると感じています。

また、クリニック経営には、経済的な判断やスタッフマネジメントなど、診療以外の決断も山ほどあります。通常なら会議を重ねたり、調整に時間がかかることも、夫婦であれば日常会話の中で自然に議論できます。「この医療機器を導入するべきか」「次の人材採用はどうするか」などをその日のうちに話し合い、すぐに動けるスピード感は大きな武器です。お互いを最もよく理解しているからこそ、信頼感をベースにした決断ができるのだと思います。

もうひとつ大切なのは、患者さんが感じる安心感です。院長と看護師長が夫婦で協力し合っている姿は、自然とクリニック全体の雰囲気に反映されます。当院は名札を左胸につけていますので、われわれふたりの名字が同じことに気づいた患者さんから「先生と奥様が一緒にやっていて心強いですね」と声をかけられることもしばしば。家族経営ならではの温かみが、来院される方々に安心を与えているのであればありがたいことです。

もちろん、常に順風満帆というわけではありません。意見が食い違い、診療後に熱い議論を交わすこともあります。しかし、それは患者さんやクリニックを良くしたいという共通の思いがあるからこそ。互いの違いをぶつけ合った先に、新しい解決策やよりよい方向性が見つかることも多いのです。まあ、ケンカをしない夫婦はまずいないと思いますので、決定的な侮辱の言葉などを言わない、とか相手に意見するときは「〇〇 はよかったけど △△ はちょっと修正しない?」みたいに、「全否定はせずパーツに対して意見する」というのをお互い気をつけています。

夫婦で協調しながらクリニックを運営することは、単なる「分業」ではなく「相乗効果」を生み出す営みだと感じています。医師としての専門性と、看護師としての生活に寄り添う力。そして何より、家族として築いてきた信頼関係。この三つが融合して患者さんやスタッフに信頼されやすいクリニックが形づくられていくことを信じて。

師長、そんなわけで明日からもどうかよろしくお願いします。

写真は朝散歩の際に見えたキレイなウロコ雲と、それを撮影する師長です。

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