論文は医師の自己研鑽ではなく業務でしょう!
われわれ医師にとって論文投稿は重要です。
新たな知見・新規性のある術式・珍しい合併症など、日々の臨床に役立ちそうな知識があったらすぐに論文として報告したくなるのは臨床医の性(さが)です。開業した現在でも「これは論文にできるな」と思うアイディアがいくつもあります(実際にデータを取ったり倫理審査を通すのが少し大変なのですが)。
基本的に医師は誰しもが「論文はなるべく "良い雑誌" に掲載させたい」と思っています。この医学雑誌の良し悪しをある程度推し量ることができるのが "インパクト・ファクター" と呼ばれる指標で、これは Wikipedia によると(院長が少し改変)
「自然科学の学術雑誌が各分野内で持つ影響力の大きさを測る指標の一つ。一般にインパクトファクター値が高い雑誌は、低いジャーナルよりも重要であり、それぞれの分野でより本質的な名声を持っていると見なされる。ひいては、大学教員や研究者の人事評価においても利用されることも多い」
とあるように、ものすご〜く平たく言うと、医学雑誌の「偏差値」のようなものです。院長がこれまで論文を掲載できた雑誌のインパクト・ファクターを高い順に並べると
Clinical Cancer Research 10.4 点
The Journal of Urology 7.45 点
BJU International 5.97 点
Journal of Endourology 2.9 点
International Journal of Urology 2.6 点
Urology 2.023 点
となっております。有名な New England Journal of Medicine は 96 点と、院長が書いた最高の論文 10 本分もの高い点数となっており、そこで掲載されることの難しさが想像できます。一般の方には『Nature 』や『Science』のほうが有名かもしれませんがこれらは基礎医学系の内容で、インパクト・ファクターはそれぞれ 50.5 点、47.3 点と、臨床系の論文より低くなっております。これは新型コロナウイルス感染症など、臨床系のほうが発表後数年で社会にあたえる影響がより大きいためと考えられます。
論文を書くのは本当に大変です。今年 4 月から始まった働き方改革で論文執筆が「医師の自己研鑽」とされることがあると聞きました。とんでもないことです。こんな状況だからこそ「日本から報告される論文数が最近少なくなっている」などと言われるのです。医師の仕事に論文執筆は絶対に含めるべきです。ひとつの論文が与える影響は決して小さくなく、その知見で助けになる患者さんや臨床医が少なからずいるのですから、患者さんの診療が終わったあとに医局の机で一生懸命論文を書く医師に、その業務に応じた残業代は絶対に認めてほしいと思っている院長でした。
院長思い入れのある、Journal of Endourology 誌に掲載された新しい膀胱癌内視鏡手術の可能性を開拓する論文です(2022 年)。 論文の写真に院長の姿を写り込ませたりしていますが、こういった「お遊び」も雑誌として印刷されたものを眺めると感慨深いものです。これからも可能なかぎり 1 年に 1 本は論文を書きたいと思っています(現在漢方に関するものを 2 つ同時進行で執筆中です。掲載されたらまたブログで紹介しますね)。