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貯金はできないのに借金はかさんでいく、というヒト三大欲求のうちのひとつに関わる生命活動とは。

[2025.12.07]

引き続き睡眠のハナシを。

本日は日曜日ですが皆様、"寝だめ" していませんか?開業して院長が心がけていることは「起床時刻を可能な限り一定にすること」で、これは結構厳しく守るようにしています。さらに言うと、「起きて、トイレ行って、筋トレして、ストレッチして、ちょっと運動して、朝しかできないことをする」(★)までを起床後 90 分のルーティンとし、(★)を "ひとかたまり" として(出張とかで外で泊まっても)守るようにしています。同じことを愚直にやり続けることで筋トレなどのパフォーマンスが悪いときに「今日はカラダのここが少し痛いからちょっとほぐすような動きを入れよう」とか「次に運動するときにはこの部分に負担がかからないように気をつけよう」など、セルフケアができるようになりますので。

話が少しそれましたが、"寝だめ"。これは睡眠科学的には「できない」ことになっています。週末にたくさん寝ても平日の体調や認知能力が向上しないのです。それなのに「いつも 7 時間寝ているひとが 5 時間しか寝ないと翌日以降 3-4 日くらいはパフォーマンスが低下してしまいます。「いくらおカネを払ってもただ吸い取られるだけ。でも少しでも借金したらその取り立ては厳しい」。こんな金融機関があったらイヤですが、“貯金できないのに負債はしっかり残る” という意味で、睡眠はまさにそのような非情な金融システムにといえます。

忙しい現代人はいつも "睡眠帳簿" が赤字になりがちで、週末にまとめて眠ったところで黒字に戻るわけでもありません。まるで返済計画の立たない住宅ローンみたいに、睡眠負債はこつこつと積み上がり、気づけば人間のパフォーマンスをじわじわと蝕(むしば)むような感じです。

ただし、いわゆる睡眠のように "本能的・根源的" な生命活動はみんな同様ともいえます。たとえば、

・食事: 1 週間のうち「前半 4 日間をくらいドカ食いして後半 3 日間は全く何も食べない」スタイル ⇒  健康を維持しづらい

・排泄: 1 日で午前中だけトイレに行って多めに排泄するけど午後は全く行かない ⇒ こんなことできない

・呼吸や循環: 24 時間 365 日、常に一定に保たれる必要がある ⇒ これがないと通常の生命活動もできない

すなわち、ヒトが恒常性を保つためには「毎日きちんと規則的に」というスタイルが必須である生命活動がいくつもあるわけで、睡眠はそのなかに含まれるわけです。

では、"睡眠負債が残る”とはどういう状態でしょうか。ごく簡単に言えば、心身が "未処理タスク" として抱え込む "業務" が増加し、心理的負担・身体的疲労が積み上がっていく、という感じです。脳は日中に得た情報や経験を睡眠中に整理し、記憶すべきものは長期保存し、不要なものは処分していますが、この睡眠中に行われる作業の時間が短縮されてしまうとうまく整理ができず、もの忘れが増えたり、決断力が鈍ったり、情緒不安定になったりします。

さらに睡眠負債により免疫状態は低下し、代謝の乱れや血圧などの循環動態不安定化・ホルモンバランス均衡の破綻などが生じることが分かっています。1 日や 2 日の寝不足では劇的な症状は出ないものの、「睡眠が毎日 1 時間ずつ足りない生活」を 1〜2 カ月以上続けると、うつ・頭痛・摂食障害(過食や拒食)などの疾患発生率が上昇することが示されています。

これら睡眠負債による影響で難しいのは、疾患発症にいたるまでの期間に個人差があることです。寝不足 2 ヶ月目でその傾向があらわれるヒトもいれば、10 年後に「仕事中突然倒れてしまう」というカタチで現れるヒトもいます。いずれにしても一度積み上がった負債は、あとで長時間寝たところでチャラにならない、というところがポイントで、必要なのは “規則的な睡眠” の積み重ねです。われわれ医療職にはなかなか難しいことなのですが(つい先日も朝 6:00 に電話をうけて老人ホームに患者さんを診にいく、ということがあったりするので)。

さらに睡眠負債についてはその "鈍感性" も重要です。いつも 7 時間の睡眠を確保している被検者を集めて、睡眠時間を 1 時間だけ減らして「毎日 6 時間の睡眠を 2 週間続けさせる」だけで、簡単な計算や、比較的シンプルなクイズをたくさん解いたときの正解率は、「前日 3 時間くらいしか寝ていないときと同じくらい低下する」、という実験があります。これは自覚症状の乏しい高血圧のようなもので、上の数値が 180 を超えても本人は平然と生活し、急性心不全と呼ばれる状態になって初めてその重要性に気づく、なんていう「生活習慣病あるある」と共通しているように思います。睡眠負債も高血圧同様 "症状が出ないうちに対応する" ことが大切、といえますね。

なんだか説教臭くなってきましたのでここで "なるべく睡眠負債をためない方法” について述べておきましょう。

まず大事なのは「リズム」。毎日同じタイミングに寝て起きましょう。どちらかなら「起きる時間を揃える」ほうが重要です。体内時計は安定し、睡眠の質は勝手に上がります。

次に、「寝る前の脳の静けさ」。部屋は暗めに、遅い時間はデカフェ(カフェイン回避)、アルコールは(寝付きは良くなるものの)睡眠の質を下げるので可能なら禁酒、無理なら摂取。寝る前に軽くストレッチをしたり、寝室を「寝ること以外に使わないようにする」だけで脳は「そろそろ夜のモードに移行だな」と身構えてくれます。

そして何より、「睡眠を後回しにしない」という姿勢。院長にとって診療・クリニック経営・このブログとかの書き仕事・読書・運動などどれも大切ですが、すべては睡眠の上に乗っかっています。土台である睡眠がぐらつかないよう、パフォーマンスの “投資” となる睡眠の時間を惜しまないように(可能な限り)しています。

さあ、今晩も早く寝て月曜日からの 1 週間を活発に過ごしましょう!

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