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輸血製剤には放射線が照射されていますが放射線抵抗性の細菌もいます

[2024.12.15]

今年は急に寒くなりましたね。昨日も 80 名の患者さんを診察しましたが、そのうち 7 名の方を発熱外来として対応し、コロナ・インフルいずれも幾例かみられました。ここから 2 ヶ月くらいは発熱対応が多くなる季節ですので当院も院長以下スタッフ心して体調管理したいと思っております。

冬になると不足する医療資源として「輸血製剤」があります。これはいつも献血をしてくださる方がこの時期は寒さで外出を控えたり、体調を崩すこともあるからでしょう。院長も勤務医時代は大きな手術・化学療法(抗がん剤)を行うときはだいぶ輸血製剤のお世話になりましたので、この大事さが身にしみてわかります。献血をしてくださる方、是非よろしくお願いします。

さて、かつて輸血後に命に関わる反応として「移植片対宿主病(GVHD)」という合併症がありました。これは「輸血用血液製剤中のリンパ球が輸血を受けた方を非自己と認識し、患者の体内で増殖して患者内を攻撃すること」で、輸血製剤に中等量(15〜50 グレイ)の放射線照射を行うことで予防できます。血液製剤に対する照射については日本赤十字社の公式 YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=Rr_cCZDf1kE)で観ることができます。これによって GVHD はかなり高い確率で発症を抑制することができます。

ちなみに、この GVHD のハナシとは異なりますが、食品に放射線を照射して殺菌・殺虫を行う、ということも行われる場合があるようです。特に中国では比較的広く行われているのだそう。このことについてはあまり詳しくないので今度時間を取って勉強してみようと思います。このハナシを聞いたときに思い出したのが Deinococcus radiodurans という学名の細菌です。これは「放射線に耐える奇妙な球菌」という意味で、動物の糞や魚などのほか、温泉・地下水・高山土壌など広く検出されます。これは 60 キログレイ(上述の輸血製剤にあてる照射量の 1,000 倍)もの放射線でも完全には滅菌されない放射線抵抗性細菌です。

西暦 400 年頃から記録がある天然痘、平安時代の麻疹(はしか)、江戸時代末期のコレラ大正時代のスペインかぜ、さらには現在もわれわれの生活に影響を与える新型コロナウイルスなど、これまで人類は本当にさまざまな感染症に苦しめられてきました。今後も微生物はさまざまな疫病をもたらしていくと思いますが、当院のようなクリニックはそういった疾患に対する地域のゲートキーパーとして機能していければと思っています。

イラストはスペイン風邪流行時における日本のイメージ。

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