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院長がはじめて英語で臨床の原著論文(臨床データからひとつの知見についてまとめたもの)を先輩に指導されて書いたのが炎症マーカーに関するものでした。

[2025.07.06]

先日ノドを痛めてから少し咳が長引いています。これは風邪を含めた上気道炎における特徴で、たとえば風邪なら(1)咽頭痛・倦怠感・微熱は初期に出現して次に(2)鼻づまり・鼻水が出て最後に(3)咳・痰が出現します。そのなかで(1)と(2)は最初に改善するのですが(3)が長引くことが多いです(25% のケースで 2 週間続くとされています)。院長がノド痛を感じてから 10 日くらい経過するのでおそらくあと 4-5 日で軽快していくだろうと予測しています。

このように風邪をひいたとき、ノドが赤く腫れたり、転んで膝をすりむいたときにじんじん痛んだり、虫に刺されて腫れたりした経験は誰にでもあると思います。実はこれらすべてに共通しているのが「炎症」という反応です。「炎症」と聞くと、「悪いもの」「病気のサイン」と思ってしまうかもしれませんが、実は私たちの身体が自分を守るために起こしている立派な防御反応です。今回はこの「炎症」について述べてみましょう。

炎症とは、「身体が何らかの傷害を受けたときに、それに対抗しようとして起こす生体の防御反応」のこと。外から侵入してきた細菌やウイルスだけでなく、打撲ややけど、化学薬品など、物理的・化学的な刺激でも引き起こされます。炎症が起こると、免疫細胞と呼ばれるいくつもの種類の細胞たちが現場(=患部)に集まり、攻撃を排除したり、壊れた組織を修復したりする活動を始めます。まるで消防隊が火災現場に駆けつけるかのように、身体中が「非常事態モード」になるのです。

Wikipedia によると、炎症に関する記述は紀元前 3000 年頃に古代エジプト人によってかかれたパピルスに既にみられるそうです。むかしのひとはすごいですね。さらにケルスス(ちょうど紀元前〜紀元頃に活躍した学者)やガレノス(紀元 200 年くらいに活躍した医師)は、炎症による徴候の詳細を以下にまとめ、5 つの特徴的な病態(発赤・熱感・腫脹・疼痛・機能障害)がみられることをまとめていました。これらは 「炎症の五徴候(ごちょうこう)」 と呼ばれます。本当にむかしのひとはすごいですね。たとえば、足をすりむいたとき、傷のまわりが赤くなり、少し熱をもち、腫れていて、触ると痛くて、歩きづらいながらも無理やり歩くと違和感がある――まさにこの 5 つが揃っているのがわかると思います。これは身体が「異常事態だ!」と察知し、免疫細胞を患部に集めている証拠です。

炎症は「急性炎症(きゅうせいえんしょう)」と「慢性炎症(まんせいえんしょう)」の 2 種類に分かれます。

急性炎症はすばやく起こって比較的早く治るもの。転んでできたすり傷、虫刺され、風邪でのどが腫れたときなどが「急性炎症」の例です。異物や傷害に対して、数日から数週間以内に免疫が働いて、症状が治まり、修復されます。このときの主役は「好中球(こうちゅうきゅう)」という免疫細胞。いわば “突撃隊” のような存在で、素早く敵(細菌など)を攻撃してくれます。

一方で慢性炎症はジワジワ長くびく、くすぶった火種のような状で、数週間以上ずっと続いてしまいます。

たとえば花粉症などによるアレルギー性鼻炎、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、動脈硬化、糖尿病や肥満などの生活習慣に関連する疾患など。これらにはすべて「慢性炎症」が関わっているとされています。慢性炎症の怖いところは、われわれ自身の体内にある免疫細胞が「異物がある!」と勘違いして、ずっと攻撃を(ただし激しくなく、ダラダラと)続けてしまうこと。本来は必要のないはずの免疫反応が長引くことで、自分の細胞や臓器まで傷つけてしまうのです。最近では、こういった「慢性的な生活習慣の乱れ」 も、体内に小さな炎症を起こし続ける原因となり、「サイレントな炎症(自覚症状がない炎症)」として注目されています。これはメタボや心筋梗塞、がんのリスクを高めるとも言われています。

ここまで読むと「炎症=悪いもの」と思ってしまいそうですが、実は 炎症はもともと悪い反応では “ありません” 。炎症がなければ、人体は感染症と戦うことも、ケガを治すこともできません。炎症反応が作動しなければ、免疫が発動せず、われわれはちょっとした風邪で命を落としてしまう可能性もあります。ただし「一時的な炎症」であれば問題ありませんが、問題は「長期間続く炎症」です。つまり、炎症はあくまで一時的な “修復工事” であり、終わったら速やかに工事を終えてほしいのです。ところが現代に生きるわれわれは、暴飲暴食、ストレス、睡眠不足などで常に “小さな火の手” が上がったような状態。これが心疾患や脳血管疾患、はたまた悪性腫瘍(がん)につながっていきます。

では、どうすれば炎症を悪化させず、身体を守ることができるのでしょうか。まずは体内に "小さなくすぶり" を起こさないような、野菜や魚を多めとしたバランスの良い食事、適度な運動(ウォーキングで OK)、良質で適度な長さの睡眠、ストレスをためすぎないこと、禁煙・節酒(最近は節酒よりも禁酒のほうが認知症のリスクなどの面で薦められるという研究結果が多いです)。これらはすべて、炎症を抑える生活習慣です。

炎症は、身体が「なんとかしなきゃ!」と一生懸命に戦っている証拠。ただ、その反応が長引くと、自分自身を攻撃してしまい「思わぬ逆効果」をもたらすことも。疲労・倦怠感・肩こり・腰痛など、慢性的な症状を抱えている方はそれらをただの「症状」とはとらえず、「体内の小さな火事」ととらえてそういった症状を少しでも改善するように運動など、できることを少しずつ始めてみて下さい。院長も腰痛持ちなので 1 時間以上は座位でいることがないよう心がけます。そのため診療中に突然院長が立ち上がっても気にしないで下さい。

・・・気にするか。突然目の前で医者がなんの脈絡もなく立ち上がったら。患者さんが途切れたところで立つようにします。

 

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