院長が子どもの頃はギャグマンガが隆盛で剣道をテーマにした真面目な『六三四の剣』は異彩を放っていましたが、その作者の有名作品を紹介します。
昨日に引き続きマンガの話題、ただし医療関連のものを。漫画界の重鎮、村上もとか氏の作品、『JIN-仁-』です。作者は『六三四の剣』を描いたことでも知られ、幼少期から剣道をやっていた院長にとっては本当に長いこと作品に触れている漫画家さんです。『JIN』については大沢たかおさんが主人公でドラマ化もしたのでご存知の方も多いと思います。幕末にタイムスリップした医師が様々な経験か人間の尊厳や医師としての本分など、医療人として大切なものにあらためて気づくという(と、一言でいうにはかなり壮大な)ストーリーです。特に主人公が最初に勤務している病院は明らかに東京・御茶ノ水の大学病院(ただし院長の出身校のお隣、順天堂と思われる漫画描写ですが)で、なんとなくシンパシーを感じてしまう作品です。
この作品のなかで、主人公である医師・南方仁(みなかた じん)は、かつて吉原のナンバーワン遊女(花魁・おいらん)の座を競った 24 歳の進行梅毒患者と出会います。梅毒の治療は昔も今もペニシリン。梅毒(トレポネーマ・パリダムという細菌が原因)は日本ではじめて記録されてからすでに 500 年以上を経過し、ペニシリンを使用するようになってからすでに 80 年以上を経ていますが、現在になってもいまだ耐性菌が報告されたことがない珍しい病原体です。そんな梅毒に対して、南方医師は "とんでもないこと" をやってのけます。
それはペニシリンを発見したフレミング博士の事績を追うようにして "青カビから天然ペニシリンを生成すること" でした。彼は家屋のなかから青カビを見つけてその生成を目指します。このとき彼はかつての異学生時代に天然ペニシリンの生成について語り合った学友のコトバを思い出し、どうにかこうにか完成にこぎつけるのです。そして梅毒の治療はもちろん、その後の手術における感染予防薬としても利用し、江戸時代における日本の医療に(150 年未来の知識は技術を用いて)画期的な進歩をもたらしていきます。
・・・なんて荒唐無稽な。と、ペニシリンを生成しようとしたこともない不勉強な院長は思ったのですが、なんとこの『JIN』に影響を受けて実際に天然ペニシリンを漫画で紹介された方法を用いて生成したという女子高生がいることを最近知りました。北陸高校という福井県の学校で、そのホームページに内容が紹介されています(https://www.hokuriku.ed.jp/diary/today/entry-3978.html)。すごいですね〜。
むかし『空想科学読本』という、「ドラえもんのタケコプターやキャプテン翼のゴールネットを破るシュートを実現しようとすると大変なことになる」という本を読みました。この本から若い頃の院長は「マンガ=荒唐無稽なところもあるよね」みたいやや後ろ向きな感想を抱くのみでしたが、彼女は「マンガに書いてあることであっても、もしかしたら実際にできるのではないか」と前向きに考えたところが本当にすごい。現在大学生でしょうか。ぜひともサイエンスの分野で世界に出るような仕事を成し遂げてほしい、と応援したくなるような気持ちになりました。
この『JIN』に出てくる "天然ペニシリンの生成"、院長が最近読み返しても結構リアルに描かれています。その内容とフレミング博士の業績について、明日また述べたいと思います。抗菌薬は人類が発見した画期的な武器であることが伝われば幸いです。
