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やはり気になる『陽だまりの樹』における漢方医の描かれ方

[2024.08.13]

先日のブログでも紹介しましたが、『陽だまりの樹』を読み返し、つい先日読了しました。

江戸末期から明治維新を経て時代がダイナミックに変革する様子が活写されている名作です。特に手塚治虫先生の曽祖父(ひいおじいさん)である手塚良仙が時代とどう向き合い、乗り越えていくか。もうひとりの主人公である不器用な武士、伊武谷万二郎とのコントラストで読み応えはもう折り紙付きです。

そんな名作ですが、(これも先日のブログで言ったのですが)漢方を勉強している者としてはやはり漢方医が頑迷固陋で他の意見を全く聞き入れないようなキャラで描かれているのがどうしてもひっかかりました。

特に多紀元堅先生という、考証学派と呼ばれる江戸時代における医科の名門に生まれ、その血筋に甘えることなく医学・儒学を修めた天才の描かれ方。この先生は 15 歳という若さで朝鮮半島で散逸された文献を少しずつ拾い出して貴重な医学古典文献の復元作業を行うという地道な作業をしてくれています。こういった文献作業のほかに医学館(江戸時代後期に設立された幕府の医師養成・研究機関)で後進の教育も情熱的に行った業績もあります。これらを踏まえ壮年期からは多数の書籍を著し、われわれのような現在漢方を学ぶ者にとって非常に大切な知恵を繋いでくれています。下図は多紀元堅先生の図です。

左が Wikipedia から。いい医者っぽい。いっぽう右が『陽だまりの樹』から。だいぶ悪者顔で描かれていますね。『陽だまりの樹』を読んだ方が元堅先生のことをヤブ医者呼ばわりしないように願っております。

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