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2007 年に文科省が出した指針を本日初めて知り、いちど中学校くらいの英数国理社教科書をさらっとひととおり読み返したくなりました。

[2025.06.11]

最近よくラジオを聴いています。映像のある YouTube 動画やテレビと異なり、的確に表現するアナウンサーの凄さがわかりやすく、「簡潔に伝える」ことが仕事のひとつであるわれわれ医師にとってもその語り口や表現方法は大変勉強になります。意外といろいろなニュースを扱ってくれますし。

そんななかでひとつ違和感があるラジオニュースがありました。

6 月 9 日(月)に聴いた NHK ラジオ第一のニュースです。中身は "想像するにおぞましい" 内容ですが、全文を引用します。

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家出した女子中学生を誘って自宅アパートに住まわせた上、出会い系サイトで募った相手に売春をさせたとして、埼玉県の 32 歳の無職の容疑者ら 2 人が警視庁に逮捕されました。

逮捕されたのは・・・容疑者と、伏見容疑者の友人で埼玉県草加市の自称・山口組系の暴力団員、・・・容疑者です。

警視庁によりますと去年 12 月、家出をしていた関東地方の当時 14 歳の中学 3 年の女子生徒に対し、「うちに来る?」などと誘って伏見容疑者の自宅アパートに 6 日間住まわせた上、出会い系サイトで見つけた男性 2 人を相手にホテルで売春させたとして、児童福祉法違反や売春防止法違反の疑いがもたれています。

2 人は出会い系サイトに女子中学生になりすましてプロフィールを書き込んで売春相手を募り、相手の男性 2 人が支払った現金 12 万円は女子中学生には渡さずまるごと自分たちの稼ぎにしていたということです。

調べに対し、「お金を稼ぎたかった」などと容疑を認めているということです。

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・・・本当にイヤなニュースを紹介して申し訳ありません。ただ、院長が感じた違和感はこんなどうしようもないことをした容疑者が「"お" 金」といわゆる「美化語」を使っていることです。

院長を含めた中年より上の年代では知らないヒトも多いと思いますが、現在敬語というのは 5 つに分類されます(文化庁による)。

  • 尊敬語:
    相手や第三者の行為・状態などを立てて表現する。例:「いらっしゃる」「おっしゃる」
  • 謙譲語 Ⅰ:
    自分から相手や第三者に向かう行為・状態などを低めて表現する。例:「伺う」「申し上げる」
  • 謙譲語 Ⅱ(丁重語):
    自分を低めて、相手や第三者に対して敬意を表す。例:「参る」「申す」
  • 丁寧語:
    文全体を丁寧にする。例:「です」「ます」
  • 美化語:
    相手や第三者を美しく表現する。例:「お酒」「お料理」

院長が中高生の頃は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の 3 分類だったのですが、「いつの間に 5 種類に!?」と思ったら、2007 年の文部科学省・文化審議会が「敬語の指針」という文書で示したのがはじまりだそうです。

この指針のなかで「敬語は自分との関係を表現するものであり、コミュニケーションを円滑にし、人間関係を築くときに用い、また気持ちの表現手段であり、敬い、改まった気持ちを表現するもの」とあります。しかしながら、翻って上記の容疑者に戻りますが、彼らにこういった「敬い、改まった気持ち」など微塵もないようにみえます。にもかかわらず「お金」と美化語を用いていることに大変な違和感を覚えました。

ただ、ラジオのニュースで「容疑者は『JC をオレ達の操り人形に堕としてラクしてカネ儲けしたかったんだヨ悪いかコノヤロー』と容疑を認めているということです」・・・とは言えないだろうので、NHK のほうで勝手に修正しているのかも知れません。

なぜこんなことを熱く語っているのかと言うと、院長は美化語を聞くと「大好きだったおばあちゃん」を思い出すことがあるからです。おばあちゃんは大正 5 年生まれで大変聡明なひとでした。そして言葉が丁寧でした。

「信ちゃん(院長のことです)、お元気?」

「お砂糖とお皿を取ってくれる?」

「信ちゃん、お電話よー(スマホがアタリマエの現代ではあり得ない呼びかけですが)」

「信ちゃん、そんなカッコウはお下品だからやめなさい」

「夕食のおかずにはおじゃが(ジャガイモのこと)をたくさん入れましたよ」・・・

院長の中では「美化語 = 優しくて頭が良かったおばあちゃんの象徴」だったので、今回の容疑者達みたいなひとが使っていると思うだけでものすごい違和感なのです。

診察の現場でも美化語はしょっちゅう使われます。

「お待たせしました」

「お変わりないですか」

「お天気悪いですね」

「お休みしたほうがよいですよ」

・・・などなど。

美化語にかかわらず敬語は日本語を洗練された言語にし、表現にさまざまな彩りを与えてくれる大切な文化です。できることなら常に敬語で表現されるような行為であふれた社会になってもらいたいと愚考する院長でした。

それではまた明日のブログで。

お大事に。

 

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